代理店戦略(郵政が局運営をセコムに委託)


日経新聞の平成20年6月12日付け記事です。日本郵政は過疎地郵便局の運営を企業に委託するそうです。ユニバーサル・サービスによる採算悪化を食い止めるために代理店戦略を展開するのでしょう。その試み第一弾として三、四ヶ所でセコムへ委託するということです。郵便局会社は郵便事業、銀行事業、保険事業の代理業務を行っており、セコムは郵政グループ事業を受託するために、今月26日の株主総会で事業範囲変更のため定款を改訂し、金融庁に銀行代理業申請を行う予定だそうです。この記事を見た時に、「ウン、正解!」と思うと同時に、「アレッ、保険業務の復代理は認められていないのに。」と思いました。しかし、落ち着いて考えれば、局会社の代理店ではなく、局会社と同等に三事業会社から受託するのであれば問題ありません。警備会社として業務認可を受けている事業会社ですから、銀行代理業認可は取りやすいし、既にグループで信託銀行も保険販売も行っています。

全国一律同レベルのサービス提供を義務付けるユニバーサル・サービスは、民営郵政にとってクビキです。要求する方は気楽に、システムに不具合があるとか、地域でサービス差があると騒げば良いだけです。しかし、独立採算を要求される事業会社からすれば、市場原理とかけ離れた重荷を背負わされたままで、民営化・株式公開しろと言われている状況です。全てのセグメントに対して良い顔をしなくてはならないのが国の事業です。そこから脱却しようとする郵政民営化で、一部地域や政治家の要求を、救済策もなしに押し付けられているのがユニバーサル・サービスです。郵政民営化賛成派と反対派の妥協の産物ですが、郵政グループ職員にとっては、なんとも酷い話です。そこに民間金融機関が自分の既得権を守ろうとして、郵貯関連新規事業には何でも反対と言います。誰のためを考えているのかと疑問に思わざるをえません。地域金融機関ならば「では、私どもが地域のために郵政事業の代理を行いましょう。」くらい言えば良いと思うのですが。

ユニバーサル・サービスは過疎地域対策と同義になっています。過疎地の定義はわからないのですし、郵便局ですら単独では採算が取れないほど人口が少ない地域ということでしょう。そこにセコムが名乗り出たということです。どのような計算があるのかは知りませんガ、採算が見込めなくては参入しないでしょう。最初に参入する地域がどこなのか、それを見るのが楽しみです。

この提携戦略は、過疎地域におけるサービス・ビジネスのあり方を考えるに良い材料ですが、一般事業会社、地域金融機関、そして局会社にとって大いなる実験となるでしょう。下手をすると自社のレゾンデートルを失うことになります。既得権しか考えない企業は自業自得ですが、手足を縛られたままの局会社にとっても、今の発想のままで良いのか? となるはずです。過疎地域で十分にやっていける代理店が出来たとなれば、自分たちは何をやっていたのかとなります。手足を縛っているのは誰なのか。政治家なのか、行政なのか、それとも自分自身なのか? 今回の提携戦略は、きわめて画期的なものです。公的組織民営化の過程で、組織内に市場原理というか競争原理を入れることになるのですから。セコムには、是非とも大成功を収めて欲しいものです。

3年ほど前に銀行の代理店戦略を考えたことがあります。幾つもの代理店候補が出ました。セコムや綜警などの大手警備保障会社も対象としました。警備会社といっても質に随分と差があります。警備員資格は簡単に取得できますから、悪質低質な警備会社も多いようです。しかし、大手に対する一般個人の信頼は警察官に対するものと同等です。であれば、セコムショップをインバウンド型の来店チャネルにできないか? しかし、拠点数が少ない、地域的にも富裕層住宅地に偏在している。ホームセキュリティの顧客も富裕層である。であれば、PBの代理店チャネルが良いのではと。セコムや綜警に直接確認したわけではありませんが、彼らの持つITと巡回要員はPB以外にも活用できそうだ。では現金の集配や決済代行はどうだろう。それは、一件処理あたり手数料でまかなうのか、それとも会費制で基本料金と従量制の組合せにすべきかなどといろいろと考えました。今回の郵政・セコム提携は、PBとかのクリームスキミングの発想ではありません。エコノミーオブスコープの戦略で、その根幹にセキュリティ、安心、信頼があります。この提携が成功するようなら、過疎地域チャネルに悩む地域金融機関にとっても参考となるでしょう。しかし、自分のレゾンデートルも失います。箱根の駕篭屋や大井川の川越人足が鉄道敷設に反対しながら消えていったことのデジャブーに思えて仕方ありません。