ATM 提携 (信金業界がイオン銀と提携)


平成20年6月6日付けニッキンの記事です。店外を含めて1万9千台のATMを持つ信金業界(280金庫中260金庫が参加見込み)が、全国998ヶ所1351台のATMを保有するイオン銀と6月16日から提携するとのことです。信金業界は、99年1月に郵貯と03年7月にセブンと提携しており、久しぶりの大型ATM提携だそうです。

残された提携先はコンビニATMのイーネットだけですが、そことも銀行間ATMMICS経由でつながっていますので、信金の顧客は引出し(要手数料)と残高照会は可能です。他行ATM取引となりますので信金はATM管理銀行に1件200円程度の手数料を支払う必要がありますが。地域密着を標榜する信金としては、狭域高密度のATM展開(提携を含む)が必要でしたが、他業態に追随して広域提携に走ってしまいました。つまり、業界内の提携に始まり、その後、業態間の提携ネットワークを通じて地域内他行を含めた全国の銀行とも相互利用できるようになりました。しかし、他行ATM利用件数が多いので支払い手数料が膨らみます。といって自行ATM利用件数が増えるわけではありませんので、大半の自行ATMはコスト割れのままです。顧客利便を高めるためにATM提携を進めるほど他行ATM利用件数が増えますから手数料支払額も増える一方でしょう。コスト割れ解消策は自行ATMを廃止するしかないのですが、それもできないでしょう。30年近く前のATM提携戦略の間違いが、いまだに尾を引いているということです。2万7千台を保有するゆうちょ銀でも同じことが言えます。ネットワーク戦略で、顧客を囲い込もうとすると自縄自縛となります。顧客利便を追求しつつ、そこでの機能差別化や価格戦略、サービス戦略が重要です。ネットワークにおけるコア的存在となれば、価格やサービス内容の主導権が取れます。さもなければ、規模だけの競争となってしまいます。昨今、銀行のATM戦略は、自行ATMコストの削減と他行客に使わせることで他行から手数料を取ることばかり考えているように見えます。料金体系を含めて、ATM戦略を根本からみなおすべきでしょう。テラーコストと比較して一日200件とか100件の利用件数を追求するような時代ではなくなりました。それではコンビニATMに勝てる可能性は皆無です。

セブンやイーネットのコンビニATMは、コンビニにとって客寄せツールです。買い物のついでに金を引き出す機会など少ないと銀行員は思っていました。筆者もです。ところが、身近なところにあるコンビニで金を引き出そうとした顧客がついで買いをするのだそうです。ATMが使用中の場合、ますます、ついで買いの率があがるそうです。引き出したばかりですから、目的買いの顧客より購買単価も高いそうです。一日千人の顧客が500円買うというのが平均的コンビニの売上モデルですが、50人のATM顧客が千円買えば、10%の売上増です。有人の既存施設ですから、電気代、スペース代、警備代などが減ります。売上をATMに入金すれば現金装填の費用が減ります。セブン銀のようにコンビニ店の通信網に相乗りすれば通信コストも下げられます。ATM購入費は銀行の500万とか800万円ではなく、単純機能なので200万円程度です。金種が少ないとか記帳ができないなどと言うのは銀行員だけで、お客は気にしません。期待していないのですから。年に4億件取引のセブン銀などは、ほぼ全取引が他行客ですから、カード発行銀行からの手数料収入は莫大(800億円?)です。コスト競争力では圧倒的にコンビニATMの勝ちで、ATMを使ってコンビニ来店客が増えるようにすることがATM戦略そのものです。コンビニ収納も、その延長線上の戦略です。地銀などが、コンビニ収納への対抗手段を検討していますが、自分(だけ)が儲けたいというのと、他人を儲けさせれば自分も儲かるというビジネスでどちらが勝つかは自明です。

時々、欧米ではコンビニATMはどうか? という質問を受けます。昔からストアバンキングがありますが、これは小切手処理やデビット決済が主です。その点で日本とは異なります。イオン銀の苦戦はここにあります。ATMは、圧倒的に店外外壁型が多い。都市圏や観光地では、設置台数も極めて多い。シーラスやプラスといった共同ネットワーク網が普及しているので、主だった銀行のカードであれば、欧米どこでも使えます。これら共同ATMは、もともと地域共同から始まって、合従連衡の結果5つ程度の大共同網が出来上がっています。共同化の発想が顧客利便でした。日本のように顧客囲い込みや業界内の結束、コスト削減ではありませんでした。それに口座維持手数料やATM利用手数料の存在も大きかった。銀行にとってATMはコスト削減ではなく手数料ビジネスだったのです。日本では無料に始まり、一部有料化したと思ったら、また、無料化競争に陥るといった悪循環です。お客は、タダで使え、時々障害が起きれば怒る権利があると思っています。この前提でATM戦略を再構築するのは至難かもしれません。であれば、一部のメガや地銀が始めているように、全面的にコンビニATMにアウトソーシングしてしまうという方法が単純でよいとなります。チャネル戦略は銀行にとって最大の差別化要素ですが、マーケティング・ノウハウで圧倒的に優位な小売業界との競争と協調がポイントです。これからも試行錯誤が続きます。