オンメモリーによるファイル高速処理


ニッキンの平成20年4月18日記事です。日立のインメモリーデータ処理技術を使って、大手銀などがオンラインやバッチ処理の超高速化を検討しているという内容です。DASDなど外部ストレージから、必要なデータをメモリー上に展開しておきファイルIOを極少化するとともに、DASDの百倍以上の速度を持つメモリーでデータ処理する技術です。オンメモリーともインメモリーとも言います。

ニッキンでは、このような特定ベンダーの製品を紹介する場合、第13ページのIT欄に掲載しますが、この記事は3面総合欄で大きく報道されています。ニュースソースが銀行なのかと思いましたが、日立の製品発表が4月9日だったので、紙面枠調整の都合で3面に掲載されたのでしょう。日立としては得をしたことになります。

オンメモリー技術は以前からあります。弊社サイトの使えるIT製品・サービス欄でも、5年前にターボデータラボラトリー社や高速屋の製品を紹介しましたが、これらの製品はその数年前に開発されているものです。このほかにも、数理技研や東京エレクトロンなどが同様技術を使った製品を出しています。どちらもメモリー上に処理対象データをローディングしておく原理は同じですが、その時のアルゴリズムに違いがあり、各社ともに特許で権利を確保しています。メモリー処理ですから、データのローディングに時間がかかり、障害が起きたり電源が落ちればメモリー上のデータが消えるという弱点があり、それを補完する工夫にも違いがあります。日本が世界に誇れる数少ないIT技術の分野です。日立や富士通などが、こうしたベンチャーを資金や技術面で支援しているのですが、自社のコア製品とする動きにはなっていませんでした。大手ベンダーの既存ビジネスが大きく損なわれるからだろうと思っていましたが、ようやく日立が本格参入することになりました。

近い将来には、半導体DASD、或いは実質無限大メモリーにより、現在の磁気ディスク製品は、アーカイブ装置になると思いますが、今時点ではファイルI/Oの多い処理に極めて有効な技術であることに違いありません。膨大なデータではあるが単純で、スプレッドシート方式で処理可能な業務に適しています。官公庁などがレガシーなソフトウェアと運用に膨大な税金を投入し続けている事例を見るにつれ、なんでこうした技術を使わないのかと疑問に思ってきました。社会保険の年金管理など、最も向いた業務なのですが。巨額の費用を使いながら、穴だらけのデータ管理が一向に改善しない状況を聞く都度、つける薬がないのかと思います。

銀行のベテランCIO達にデモンストレーションを見せると、皆さん、愕然として、今までの自分達の苦労は何だったのかとい言います。しかし、実際に勘定系や大量バッチ処理に使う人はいません。せいぜい、部門処理や特殊な業務に独立したシステムとして使われるだけです。ベンチャー企業の製品だということや、先例実例がないことが理由です。また、既存汎用機との連動処理にはAPI等あるものの、様々な工夫が必要になり、現行システムを触りたくないということも理由でした。

最近、ウェブ・サーバーにオンメモリーを使って、膨大な数のサーバーを集約しようとする計画が出てきました。仮想化技術で集約するより、プログラム・プロダクト料金を含めて、単純に費用削減と運用効率化が可能となります。そこに日立のような大手ベンダーが参入すれば、他社も追随するでしょうし、顧客企業も安心するでしょう。これからの数年間は、注目すべき技術です。

技術革新は新旧技術の競争によって加速されます。新が出てくるから旧が進化する。やがて、新が旧を凌駕する。評論家はその転換時期に注視するが、実務家は旧を利用しながら、新を試用しながら乗り換えのタイミングを測る。それがテクノロジー戦略です。オールorナシングではありません。方向が正しくともタイミングを失っては意味がありません。タイミングを測るには、情報収集と試行錯誤が重要です。わが金融業界には、評論家は多いが試行する人が少なすぎます。試行は賭けでも冒険でもありません。投資なのです。わが国のIT活用で最大の弱点は、IT需要の30%近くを占める官公庁と金融業界の守旧体質と言えます。試行錯誤や実験をできる体力と能力を持ちながら、表面的な失敗が許されないと思いこんでいます。失敗は進化の源泉だと判ってはいるのですが。

大手銀は極めて早いスピードで保守や運用の費用を絞り込んでいます。オフショアリングを含めて、発想を大きく変えつつあります。そして、戦略案件への資源配分を確保しようとしています。以前からの動きだと言う人がいるでしょうが、今回の動きは本格的です。ベンダーは、大手銀の後追いをしていたのでは、ベンチャーや海外勢にビジネス・チャンスを奪われます。それほど大手銀の動きは早いのです。IT投資の過半を占める保守と運用は、新規開発よりも数段大規模で安定したビジネスです。従来は、その金融機関のメイン・ベンダーの牙城と思われてきました。それが、ゼロベースで見なおされるようになっています。