郵政とローソンが包括提携



平成20年1月12日に日本郵政西川社長とローソン新浪社長が共同で記者会見し、両社の包括提携を発表しました。(日経新聞1月13日付け)。ローソンによれば同社からの提案で、郵便局業務のサポート、併設店舗の設置、商品サービスの提供・委託・共同開発、物流・金融・人材等の共同取り組み等幅広く業務提携し、将来は資本提携も検討するとあります。

郵政とローソンの提携は2003年から始まっており、コンビニ店内での郵便ポスト設置から始まり、ゆうパックの取扱い、共同配送、共同店舗の設置などと範囲を広げてきました。2004年のゆうパック取扱い開始の時、筆者は「ローソンは何を考えているのか?仮に郵政がコンビニに参入すれば、一番悪影響を受けるのは自分達ではないか?民間宅配業者を敵に廻す気なのか?」などと思いました。しかし、落着いて考えれば、郵政を孤立化させて事業展開を阻害しても誰の益にもなりません。顧客の側から見れば、サービスが向上して、利便性が高まり、利用コストが下がればベストです。4年間共同で仕事をしてみて、それなりの成果とともに、一緒に仕事ができると判断した結果が、今回の包括提携なのでしょう。

それにしても、ローソンは何故、わざわざ自社から提携を提案したと明示したのでしょう。郵政としては、「排他的に提携を進めているのではない、良い提案があればどことでも提携を考える。」とのメッセージとなります。小荷物宅配で日通、コンビニでローソンと、郵政は当該分野のトップ企業とは組んでいません。ローソンはセブンに次いで業界第二位とはいえ、店舗数、売上ともに大きく見劣りします。加えて、郵政経営陣が親しい住友系ではなく三菱商事系です。セブンの親会社ヨーカ堂は三井物産と強い資本関係があるにも関わらず、何故ローソンなのでしょう。一番良い説明は、よい提案であり、過去の実績から実効性が期待できるということでしょう。また、業界トップと握れば、2位以下企業の反発が強く、判官贔屓の世論に叩かれる危険性があります。独禁法の問題が出るかもしれません。更に、業界2位企業の方が危機感が強く、提携に前向きでスピードが早いということもあるでしょう。

店舗網の違いも大きな判断材料だったかもしれません。総じてセブンイレブンは過疎地域の店舗数が少ない。青森、秋田、北陸4県、四国4県、山陰2県、鹿児島、沖縄に店がありません。過疎地域は郵政にとっても荷が重い地域で、何らかの施策が必要です。ローソンはこうした地域にも多くの店舗展開をしています。セブンとローソンの店舗数と売上の差は、大都市圏にあるといって構わないでしょう。共同店舗を郵便局に設置すると考えれば、過疎地に大規模局は少なく、都市圏となります。ローソンにとっては、人口密集地域で郵便局を利用できれば、セブンイレブンとの店舗網ギャップを埋めることができます。とりあえず3年で800の共同店舗を設置し、1万の局でローソンの商品を販売し、8千以上のローソン店舗で郵便局窓口業務の代行(郵便?貯金?保険の復代理は法的に禁止)を行なうそうです。

ローソンは、今年2月から来年3月にかけて新システムへの移行真っ最中です。200台のサーバーをIBMz990x2台に集約しながら、光ファイバー化、マルチメディア端末更改、統合マスター導入、店舗システム更改など450から500億円を投資します。この新システムをそのまま郵便局に持ちこむことはないでしょうが、POSレジや最大の財産である統合マスターなどは業務提携における戦略的ITとなることでしょう。また、ローソンはセブンやampmを除くコンビニ共同ATMネットワークであるイーネットの主要メンバーです。仮にゆうちょ銀とイーネットが全面提携すれば、巨大な統合ATM網が実現します。欧米のATM網は、業種別ではなく、地域別共同を全国、グローバルに連携させています。日本でも顧客視点での共同ATM網が実現するかもしれません。そうなるとセブン銀ATMの強力な対抗ネットワークが出現します。とはいえ、イーネットには地銀を始め、多くの民間銀行が参画していますので、簡単に合意が得られるとも思えません。その場合、ゆうちょ銀ATM網を中核にローソンなどで新たな共同ATM網を作る可能性が出てきます。ゆうちょ銀がセブンと組む可能性も当然、ありえます。

これまでの金融サービスは常に提供側論理で進められてきました。利用者視点、顧客主義とは題目ではあっても、真に顧客都合からの発想ではありません。郵政もローソンも立場上、必至に生き残りと事業拡大を考えている筈です。規模や顧客基盤に勝るトップ企業に対して提携だけでは勝てません。その提携が顧客に圧倒的指示を受ける商品かサービスか価格を提供する必要があります。今回の提携は、物流を中心としているようですが、コンビニは小口決済、金融の拠点となりつつあります。いずれ、金融サービスでの提携話が出てくるでしょう。更に、郵政もローソンも他社との提携も推進するはずです。誰が中心かということでなく、どう組んだら顧客に喜ばれ、新たなサービスやビジネスを創発できるかの問題です。この時代に、既得権や過去のシガラミに拘泥している企業には、衰弱死が待つだけでしょう。ことリテールに関して言えば、拠点網は最も重要な資源です。リアル・チャネルとサイバー・チャネルをいかに組み合わせるかと試行錯誤が続くでしょう。サイバー・チャネルを構築するのは比較的簡単です。ということは、鉄道の駅、大手小売業、郵便局のような膨大な物理的拠点網を活用しない手はありません。多くの企業が、こうした拠点を活用するメニューを考え、提案することになるでしょう。その時に必要なIT要件は何でしょう。いまだに、まとまった資料やストーリーを見たことがありません。