システム統合(三菱東京UFJ銀行)



日経新聞19年12月11日記事です。三菱東京UFJ銀(BTMU)がシステム統合に関して来年5月から年末にかけての移行を決定し、そのためのリハーサル日程と休日のATM停止予定などを公表したとの内容です。記事見出しは、ATM停止最大12回とあり、顧客利便低下を強調する書き方です。マスコミはどこも、銀行のシステム統合に冷たいだけでなく、トラブル待ちの様子がありありです。関係者が長期に渡って大変な作業を細心の注意を払いながら行なっていることなど全く無視です。筆者はいつも取材者に向って「もっと銀行ITを勉強して、客観的な記事にすべきだ。トラブルが起きて、誰も得はしない。頑張っている現場の人達を激励するようなトーンにした方が、社会的プラスではないか?」と言うのですが。マスコミでは担当者にその気があっても、編集長あたりが大トラブルを期待していて、そのために本番稼働前から批判(誹謗)的な報道をしたがっているようです。郵政分社化プロジェクトでも、些細な不具合を針小棒大な記事にし続けた全国紙がありました。偏向報道で読者をミスリードしていると記者に注意喚起したら、上の指示で仕方ないと嘆いていました。某TV局では、BTMUのシステム統合に伴うサービス見なおしで、不便を被る顧客を引合いに出して、統合化計画の妥当性を否定する特集を組もうとしていました。採算を無視して全顧客に喜ばれるサービスを拡大しつづけていたら企業は存続できない。様々な視点に配慮した上での政策判断を評価するなら、それなりにキチンと取材して中立的に報道すべきだと思います。マスコミは国民のレベルに従うと言いますが、日本のマスコミが想定する国民のレベルというのがどの層なのか?

BTMのシステム統合における最大のリスクはメディアによる風評リスクであることは間違いありません。その意味で、1月10日から金融庁がターゲット検査をやってくれるのはBTMUに幸いでしょう。過去に例のないほど念入りなテストとリハーサルを重ねています。検査の結果でベストな準備状況だと保証してもらえれば、マスコミも因縁をつけ憎くなります。それとも2年前のように、安全に安全を求めて、また延期か中止を求めるのでしょうか?システム開発に完璧はありませんから、検査する側も受ける側もノーミスを保証できませんが。要は経営判断の問題なのですが、無条件の顧客保護(?)を前提とするわが国では、経営者に判断する余地がないとも言えます。騒ぐのは、その銀行にとって収益源ではない人達ばかりなのに、余計なコストを最終的に負担するのは優良顧客と株主という不条理です。リスクを許容しない社会で、前向きなIT化など不可能です。ITディバイドのマスコミ、政治、行政とIT推進派との闘いに、ITが劣勢という構図です。経済格差や学力格差と同様、IT格差は学者に研究して欲しいテーマです。

BTMUは、11月26日からホームページや顧客へのDMなどでシステム統合に伴うサービス変更内容の案内を開始しています。記事によれば、他行客もBTMUのATMを使うので、TV広告だけでなく全世帯と全事業所にATM停止等の案内DMを発送するそうです。そこまでせんでも・・・というのが実感ですが、後で知らなかったと文句言われるよりはという判断なのかも知れません。海外の銀行が聞いたら感心するでしょうか?絶句するでしょうか?外人株主は怒るでしょう、俺の金を捨てるなと。

来年5月11日に、旧東京三菱の約250店が新システムに移行予定です。新システムは、旧三菱銀システムのインフラを再構築し、旧三和銀システムから移植するアプリや新アプリを搭載したものとされています。DB移行や端末・ネットワーク更改などがないので1日で実施できるのでしょう。約420の旧UFJ店舗は、7月、8月、9月、11月、12月の5回に分けて移行予定です。こちらは、全面移行となるので、危険と負荷分散のために分割移行が予定されています。

費用総額は予定を上回って4千億円と報道されています。BTMUは金額を発表していませんので、記者の推定でしょう。マスコミ数社から筆者にも内訳の問い合わせがありましたが、筆者の知るよしはありません。Day1が800億円と発表されており、Day2は1千億円の予定でした。その後、期間も内容も大きく変わったので、相当に膨れていることは確かです。経費ベース予算で、17年度2600億円、18〜20年の各年が2900億円程度と健全化計画で計上されていました。合併前の両行IT費用を差し引いて予想すると3千億強というところでしょうか?もっとも、新規業務や新インフラへの投資も含むので、何が統合コストかという定義の問題は大きく残ります。

BTMUの役員が講演会などで発言した内容からすると、ピーク時9500人(内グループ社員2500人)がDay2の要員数です。サブのプロジェクト数は1千を超えるそうです。Day1の3万人月と合わせて全部で11万人月のプロジェクトとなります。1日5千万件のオンライン取引、30万端末、店舗数800ですから世界最大規模のプロジェクトです。何でこのような有様になってしまったのか。開発規模が大きいということは、IT戦略からすれば誉められることではありません。大銀行の合併という特殊な環境が、こうした化け物のようなプロジェクトを発生させてしまったのでしょうか。良く制御してきたものだと感心します。筆者は、合併時のシステム片寄せに批判的な考えを持っています。最少公倍数のアプリを一方の皿に乗せかえるだけなら、皿が二枚のままでも利用者にとってたいした不便ではないと考えるからです。それより日本を代表する銀行として、グローバルに通用する戦略的なシステムを新規開発した方が、時間も短く、コストも安く、開発者の技能とモラル向上になる筈です。

BTMUの統合システムでは、四つのスコープが新システムの理念として掲げられているそうです。コングロマリット型、異業種連携共存共栄型、地銀外銀と競争・協調の共進モデル、メガモデル(価値観、行動理念の一体化と統合型ITフレームワーク)です。具体的内容は知りませんが、やがて新インフラの全容や新サービスが姿を現します。そこで4スコープの戦略的価値が見えるでしょう。それまでは、マスコミを始めとした外野の人間は、プロジェクトの足を引っ張って芸能ニュースとせずに、静かに見守るかサポートすることが望まれます。IT関係者には、マスコミのITアレルギー、ITオンチを改善すべく、身近にいるマスコミ人の啓蒙活動に努めて頂きたい。国の発展を左右するかもしれない問題です。