保険業界BPR(手続きペーパーフリー化)

日経新聞平成19年12月5日号記事です.保険の契約手続きで書面をなくす動きが広がっているようです。例えば、三井住友海上では、ノートPCに自動車保険の契約内容を入力して、専用端末の電子ペンで署名することで書類と印鑑が不要なシステムを構築したそうです。5千の代理店に導入すれば3600万枚の書類が半減するそうです。来年から火災保険も対象にする予定です。東京海上日動は、顧客による契約書記入を止めて、代理店がパソコンに入力する方式に変えるそうです。やはり、自動車保険から始めて火災保険に広げる計画とのことです。損保ジャパンや富士火災などでは、ネット加入の損害保険を勧めています。生保では、住友生命の診断書不要の医療保険が紹介されています。日本生命が医療費請求の診断書を医師がPCで作成して保険会社に送付するシステムを開発し、生保協会が医師会と提携して業界として採用するというニュースも最近ありました。

これらの損保事例は、記事見出しが正しくて、ペーパーレスであってペーパーフリーではありません。顧客には、今まで通り分厚い書類が渡るようです。代理店と損保の間で流通・保管する書類が減るだけのようです。BPRと言えるほどのプロセス革新ではありません。筆者の自動車保険は、毎年期限間近に代理店からパンフレットと複数見積りが郵送され、電話でやりとりした後、見積書が郵送されてきます。入金すると受取書が送られてきて、やがて契約書控えが郵送されてきます。その間、印鑑を使うことも、代理店に出向くこともありません。いつも、ネットにすればもっと手軽なのにと思うのですが、それでは代理店の存在意義がなくなってしまうのでしょう。また、他の損保に乗り替え易くなるリスクもあるのでしょう。損保は、チャネルとしての代理店機能を見なおすよりも、代理店数と千数百ある商品の統合整理を優先しているようです。全てネット化すれば良いと言う気は更々ありませんが、プロセスをなくしたり、自動化したり、集中化することなく、紙を電子にするだけでは、芸がなさすぎる感じです。代理店が契約を代行し、事故などのクレーム対応も行なうという現在のビジネス・モデルでは仕方ないのでしょう。代理店機能を分割するか、拡大させなくては、全体としてのBPRを行なえないと思うのですが。

生保では、長年の宿願であるペーパーフリー、キャッシュフリー、チャネルフリーが進められています。生保の契約書類はサイズ、色、厚さ、コピー枚数(関連する組織数だけある。)が千差万別で扱いにくい限りです。オートフィードでFAX、スキャンすることもできません。それに難解な文章が小さな字でギッシリですから、まともに見る契約者はいないでしょう。ようやく表現を易しくし、読み易い書類を作る努力が始まったところです。手書き書類もイメージスキャンして電子化され出しました。保険料支払いもクレジットカード化されつつあります。生保の主力チャネルである外務員は大変な政治力を持っていますが、それでも生保の管轄下にあるのが幸いしています。業績悪化の時代に外務員は50万から35万人に減りました。それを更に減らしながら、業務量回復に対応しようとしています。損保のように代理店ではなく、生保会社に契約権のあることも幸いしています。このまま事務改革が進むと、数多くの支部や支社の役割も変わるはずです。結果的に数も大幅に減るでしょう。そのためには、チャネルを含めた決裁権限の根本的見直しが必須です。一方、商品、特に特約の整理統合も検討されています。マス商品、カストマイズ商品、オーダーメード商品に括られていきます。審査から保全までの一連のプロセスを紙なしで、シームレスに組織間を連携させるプロセス・フローが追求されています。改善ではなく、ゼロリセットで設計しなおすことになります。その時に抵抗勢力となるのは、顧客か、代理店や外務員か、社内組織か?ブレークスルーし易いのは、生損乗り入れの際に設立された子会社でしょう。

ITベンダーにとっては、BPRに絡めた提案は商談成立までに時間を要し、挫折するリスクも高いので、避けたい気持は理解できます。しかし、単純に紙を電子に置きかえるだけでは、商談規模は些細ですし、簡単に追随されますし、そもそも達成感がありません。保険会社の全体プロセスとバリューチェーンを見なおして、具体的な保険業務BPRを提案して欲しいものです。今が、保険業界改革の絶好の機会です。改革に成功して盤若な経営基盤が出来れば、次に、保険会社中心の金融コングロマリットという壮大なビジネス機会が期待できます。