アンチマネロン(埼玉県警が国際マネロン組織を摘発)

産経、朝日、読売などが平成19年11月26日と27日に報道していました。埼玉県警は9月に不正に銀行口座を開設した7人を詐欺罪で逮捕していたが、その後の国際刑事機構等を通じた捜査を受けて、ナイジェリア人と日本人の2人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の隠匿)で再逮捕したということです。米国で詐欺にあった被害者が、指定された日本の大手銀行に2100万円を振り込んだ。その口座は、ナイジェリア人達が事前に不正開設した口座で資金を受けとる際、銀行には自動車パーツ代などと説明している。そして、2%を手数料として取り、10日程度経過してから、米、加、英などの銀行に分散して送金した。送金の際には、受取口座の大手銀とは別の金融機関複数を使った。17年3月から今年7月にかけて、31口座を不正に開設して、合計8億5千万円を資金洗浄したとみられている。事前に調べてチェックの甘い金融機関を選んだと供述しており、該当する金融機関は面目丸つぶれです。組織犯罪処罰法は、短期間に巨額の資金が送金された場合に警察庁へ報告することを義務付けています。銀行には送金を拒否する法的根拠はありませんが、通常は理由をつけて断ります。

このナイジェリア人の友人で別のナイジェリア人を中心とするグループが千葉県で逮捕されています。100件前後の不正口座開設の容疑ですが、やはり13億円を米国から受けとっていたということです。海外の複数詐欺集団が日本国内のマネロン・グループを中継して資金洗浄の仕組みを作っているようです。今回、ナイジェリア人グループが摘発されましたが、別のグループが組織化されるでしょう。巨額資金の2%という手数料ですから、希望者は多いはずです。都市圏の大手銀は、チェックが厳しくなっていますが、犯罪者達は地方の中小金融機関や郵便局を使って送金するようになっています。海外からの資金受けとりには、コルレス先や現地での認知度などの問題から大手銀行が使われますが、送金には抜け道が多いようです。これから、送受金額の小口化が進むでしょう。金融機関としては、ヒストリカルに調べる必要があります。中小企業の海外取引増や個人でも輸入業務を手がけることが増えているので、正常取引との区分が難しく煩雑になりますが。

AML(アンチマネーロンダリング)プログラムについては、当コラムで3月にも紹介しましたが、ITベンダー各社が懸命に売りこんでいる割合に、採用されるケースは少ないようです。コンサルティングとのセット販売なので、コスト手間ともに膨大になるからでしょう。また、使用するプログラムパッケージが海外ものなので、(国内では事例が少なく、ケース・ハンドリングやスコアリングの材料がないため)馴染めないなどが理由です。そこで、アリバイ的に簡単なチェック・プログラムを作って姿勢だけ示す地域金融機関もあります。しかし、こんなことをいつまでも続けることはできません。また、様々な制度案件に都度対応していたのでは、導入コストもさることながら、事務システムがズタズタになってしまいます。それでは、顧客に迷惑をかけますし、現場担当者にとって悲惨な結果をもたらします。実際、現場担当者の間では、事務量増やセールス・ノルマの負担だけでなく、コンプラ違反で自分が懲戒、或いは、警察に取調べられる不安をしばしば感じるという話を聞きます。IT産業は新3K産業といわれますが、金融機関も放置すれば新々3K産業(キツイ、キラワレル、コワイ)となってしまいます。

AMLだけでなく、本人確認法、預金者保護法、個人情報保護法、金融商品販売法、金融商品取引法、組織犯罪処罰法、インサイダー取引防止などコンプラ関連法規に包括的に対応し、更に、現場の負担を押さえ、顧客利便を損なわない事務システム構築が必要です。どの法律も共通のコンプラ関連プロセスを必要としています。フィルタリング、本人確認、権限確認、取引の適合性確認、ログ保存、モニタリングなどです。問題は、これらのプロセスの後方というかインフラとなるプロセスです。例えば、権限変更管理、ネガティブリスト更新、名寄せ、リスクスコアリングなどが整備されていなければ、フィルタリングも適合性確認も機能しません。現状では、これらが、当該法規毎に導入されています。そのため、プロセス、機器、プログラムが重複する上に不整合を内包して、現場作業を混乱させ、顧客対応を非効率化させることになります。

ITベンダーがコンプラ関係のソリューションを販売しようと金融機関を訪問すると、どこでも「それは、当社では既に実施している。」という答えばかりだそうです。コンプラを局所対応してアリバイ工作はできるでしょうが、実効性がなく、現場や顧客に迷惑かけるだけならば、何の為のITかということなのですが。要は、関連法規から必要となるコンプラ・プロセスを共通、個別、フロント、ミドル、バック別に整理体系化し、そこに個々のソリューションを組みこんでいくことが必要です。結果的に、事務システムの全面的見直しに発展してしまう場合もあるかもしれませんが、それも必要でしょう。ベンダーは、コンプラを商機と捉えるのは良いですが、もう少し包括的なソリューションを研究して欲しいものです。必要なのは、当面の解決と長期的な整合性です。