次世代電子行政サービス基盤(転居手続き等ワンストップ化)


日経新聞平成19年11月17日夕刊記事です。政府はeガバメント推進の為に、内閣官房に省庁横断の官民合同プロジェクトを発足させたそうです。転居、結婚、出産、入退社などにおける行政手続きの窓口を一本化することを検討し、2010年実現を目指すとしています。プロジェクトには、東電、ドコモ、郵便局会社などが参加するそうです。

eガバメントは、行政手続きのオンライン処理率50%を目指していますが、現実には1%以下です。それはそうです。届け出書類を受け取る役人の入力作業を減らすことだけを考えたデザインなのですから。年に一度あるかないかの届け出に、複雑な利用申請手続きを行ない、ようやく使えるかと思ったら、証明書類は別途持参か郵送の手間がかかります。我慢してその場は使ったとしても、翌年には制度が変わっていて、全てやりなおしというサービスばかりです。多少の手数料値引きでは割りに合いません。むしろ数千円の手数料を貰わなければ収支が合わないというのが、筆者の経験です。よくもマア、これだけ利用者も提供者も使えない業務設計ができるものだと感心するほどです。プロジェクト・メンバーを見ると、役所の課長級と元役所だった大企業の部長級ばかりです。自分で役所に行って、手続きしたことがない人達ではないかと思うメンバーばかりです。次の改善策を見るのが楽しみです。筆者なら、お笑いタレントや主婦を集めてWGを作りますが。

転居手続きは、一般個人にとって負担の大きな作業ですが、金融機関にとっても重大な課題です。銀行が発送する個人客宛の郵便の多く(20〜40%)が宛先不明で戻ってきます。生損保の不払い問題では、契約者の所在不明が問題処理に大きな障害となっています。銀行ならば、転居届けをしなくても特段困ることはありませんが、保険は何かあった時に困るから保険会社には転居届けを出すものと思っていました。現実には、忘れてしまった、本人が保険加入したのではない・・・などが理由で想像以上に届け出率が低いのが実態です。転居する場合には、余りに多くの届け出先があるようです。筆者は最後の転居から30年ちかく経ているので実感がありませんが、最近転居した40代前半の人に聞いたら、一週間の有給が必要ではないかと思うほどです。

転出届け、転入届け、印鑑届け、郵便転送先、電気ガス水道電話NHK新聞の新旧、学校の転校転入、国民保険、自動車関連では免許証・車庫証明・車検住所変更・ナンバー変更などです。民間でも、私立学校転出入、取引銀行、カード会社、生命保険、損害保険、年金受給先、インターネット・プロバイダーなどです。各社によって手続きと必要証明書類が異なります。変更手続きがなく、一度退会そして新規入会というところもあります。忙しくて会社を休めない人はどうするのだろうと思います。昔と違って、最近では夫婦ともに働いている世帯が多いですし。絶対必要という手続き以外を後回しにして、そして忘れるというパターンは容易に想像できます。代行してくれるサービスを引越し運送会社などが提供しています。しかし、公的手続きでは代行できません。それには行政書士に頼むしかありません。転入転出届けが1万5千円、自動車関連手続きが2万5千円、パスポート代行手数料が1万3千円、新住民票取り寄せが1枚千円という相場です。単価は安いのですが、総額にしたら幾らになるでしょう?はらいますか?会社休みますか?の問題となります。

金融機関にとっても顧客の住所把握は、(これまでないがしろにされてきましたが)重要な課題です。クレジット・カードのようにカード有効期限はありませんでしたから、一時は口座の半分近くが現住所不明でした。本人確認法によって公的書類での確認をするようになって大分改善されましたが、これから徐々に劣化するでしょう。電話の発呼信号を使った存否確認サービスがあります。少し以前までは、固定電話だけでしたが、最近では全数ではないものの、携帯電話番号による存否確認が提供されています。電話番号は、与信審査でも有効なデータです。個人だけではなく、法人向け融資でも使われています。電話番号を最新状態に更新しながら、金融機関や通販業者などに低価格で提供するサービスが増えています。上述プロジェクトにドコモが参加していますが、NTT本体や他の電話会社は参加していません。NTTでは住所更新サービスの事業化を考えているようですが、果たして利用者の理解や協力を得られるでしょうか?

日本には個人を特定する公的識別番号がありません、もっとも近いのが電話番号ですし、郵便配達で使う住所でしょう。これらの企業が顧客同意を得ながら、指定された公共機関や企業への住所変更、現住所確認サービスを行なえたら、双方に大きなメリットがありそうです。新旧住所担当の行政書士達にIT支援を行ないながら、利用者には低料金で簡便な転居手続きを代行する方法もあるでしょう。NTTも郵政も既存のビジネスモデルそのままで、分社しただけでは将来がありません。自社の固有財産を活かしながら、B2CやC2Cの中間に介在して双方から手数料を得るようなビジネスモデル開発の試行錯誤が必要でしょう。役所につまみ食いされていては、その芽も消えてしまいます。