顧客住所の更新(電話番号使用履歴の追跡)

ニッキン平成19年8月17日号記事です。電話番号調査システムを得意とするクローバー・ネットワーク・コム社が、(CNC)が、電話番号の使用履歴を使った与信判定システムを販売開始したという内容です。電話番号使用状況調査サービスは、幾つかの業者が提供しています。顧客の電話番号を発呼し、その電話番号を扱うキャリヤーの交換機の段階で遮断します。生きている電話番号の場合は、そのまま遮断してしまいますので、相手先の電話機は鳴りません。つまり通話料金がかかりません。当該電話番号が使われていない時には、交換機が発する遮断理由などの情報を含んだ信号を取得します。当然キャリヤーとはその旨の契約を結んでの合法的データ取得です。弊社サイトの使える「IT製品・サービス」のコラムで4年ほど前に紹介したジンテック社のTACSなどが有名です。

少し前に知人から、CNC社が与信判定システムをクレディア社と開発して販売するようだとの話を聞いて、面白い発想だとは思いましたが、従来の判定モデルに電話使用状況を付加する程度だと思っていたのです。それがニッキンに掲載されたので気付いた次第ですが、電話番号使用履歴を分析すると想像する以上に有益な情報がわかるようです。記事では、その電話番号が1年で3回以上実在と欠番を繰返す場合は、レンタル電話の可能性が高いという例をあげています。しかし、この例は単純な方なのでしょう。電話番号調査会社は、毎月或いは2ヶ月に一度は、登録電話全てに調査をかけ(CNC社の場合は、固定形態合わせて3億5千万件)の使用状況を調査します。このデータそのものもDVDなどで販売しますが、平成9年4月にデジタル版の電話番号調査システムを稼働させていますので、10年以上の調査結果が蓄積されています。知られているように、電話契約を解除すると一定期間その番号は使われません。ですから、1ヶ月や2ヶ月間隔で調査すれば、欠番の有無は確認できます。転居などで顧客が希望する場合は、転居先の電話番号を教えてくれます。これを統計的に分析すると電話番号が持つ特性が見えてくるそうです。それに当該顧客と自社との取引振りを擦り合わせると、顧客の特性が一段と正確に把握できるのでしょう。

頻繁に電話を変える人、新しい電話番号になりたての人、電話料金未払いで使用停止になったことのある人などは、簡単に把握できます。小規模法人の場合などは、財務的な与信判断など必要ないかもしれません。不良債権を抱え込んでしまった新設銀行などが、この方法をとっていれば、救世軍融資などと揶揄されることはないのにと以前から思っていました。

電話番号調査サービスは、今年は大盛況のようです。不払い取りすぎ問題を抱えた保険会社、年金記録のすり合わせに失敗した社会保険庁、名寄せを充実したため限度額超過が判明した貯金者に引き出しを要請しなくてはならない郵便局などが、顧客と接触したいのに住所が変わってしまっていて連絡をとれずに困っています。追跡するのは実に大変なことです。個人情報保護法以来、役所も転居先などを教えてくれなくなりました。以前は転居した顧客の新住所を調べるのに平均800円と言われていましたが、現在はとてもそんな費用で済まないでしょう。年間7%の人が転居するそうです。(引越し業者の推測情報)転居を繰返す人も多いでしょう。数回以前の住所から辿り当てるのは、できますが大変なコストです。以前は、お客から届け出がないのだからと放置していても良かったのですが、自社側過誤により顧客に何らかの返金、保証をしなくてはならない場合は、顧客の不届けを理由に放置することもできません。保険業界は、想像を絶する人力、コスト、時間を投入しています。業界の心機一点出直し運動として、コスト度外視の作業が続いています。後から考えれば、DM不着などで顧客住所が替わった可能性は感知できるのだから、その時点で電話番号使用状況のチェックを行っていれば、随分と効率が違ったのにと思うことでしょう。

顧客住所の継続的把握は、金融機関事務の基本の一つです。それも約款に基づいて顧客からの申告ベースで更新することを前提とすることができなくなりました。理由は、顧客財産の保全義務があるからです。物品販売のように単発的取引関係ではなく、口座のある限り継続する取引関係のビジネスにおいて事務のあり方を根本から見なおすことが要求されているようです。社保庁のように、システムで名寄せすれば問題が解決すると国民が思っているのに、自分達はそのように言っておらず国民が勝手にそう思っているだけだという姿勢では、社会の非難が止むことはありません。事務はどうしても防衛的な発想になりがちです。保守的な組織は、細かく規則を設け、自分で増やした異例処理を嫌います。新規参入者やニッチ狙い企業は、その逆を行います。実は、どちらも天動説です。コペルニクス的発想転換で事務を見なおすことが必要となっています。そう言えば、筆者が金融機関とビジネスでつきあうようになった40年近く以前、コンピュータ関連の研修では、事務管理論が必修科目でした。最近では、事務管理に関する書物も研修もまるで見当たりません。どうやって基幹系システムを開発、保守してきたのか不思議なほどです。幸か不幸か事務の基本を体に叩き込んだ世代は、既に引退しました。先見の明のある若い人は、新時代の事務管理論の先駆者を目指したら良いと思います。ネット・ビジネスよりも、はるかに確実で大きな機会が待っているでしょう。