金融商品取引法(不招請勧誘禁止)


平成19年7月31日付け日経記事です。金融庁は、金融商品取引法の行為規制の一つである不招請勧誘禁止に基づいて、夜間、早朝、休日などの電話や訪問による営業活動を原則禁止する方向で検討しているということです。顧客の事前の合意を受けて、予約した時間の営業であれば規制外であるが、悪質な違反行為に対しては登録取消しなど厳しい処分がありうるとしています。

金商法の施行は今年9月30日と決まりました。金商法では、いわゆるJ-SOXが注目され、上場企業や大手企業では財務などの透明性と説明性確保に膨大な労力とコストを投入し、ITベンダー各社は、一大商機と活発な(中には品格に欠ける)営業を行ってきました。当法は、原則として証券取引法をおきかえるものとして、従来規制外にあった私的ファンドなどにも利用者保護の観点から様々な行為規制が課せられています。投資性金融商品が対象なのですが、預金や保険も対象となることから、総合的な金融商品販売に関する規制となっています。

銀行や保険会社など免許事業者にとっては、J-SOXも行為規制も従来から厳格に規制されてきましたので、大きな変化はないと考えられています。適合性確認義務と書面交付義務が、厳しくなる程度という認識です。ITとしては、新たに手当てすべきことは特段ないとも理解されています。一部の地域銀行で、適合性確認の手順をワークフロ−化して現場のミスや負担を減らすとともに、本部から随時モニタリングするようなシステムを作る事例が見られますが、多くの金融機関では、すでに研修や規程の整備は済んでいるということです。

行為規制には主として、誠実公正義務、書面交付義務、虚偽情報禁止、断定的判断の提供禁止、不招請勧誘の禁止、損失補てんの禁止、適合性原則などがあります。金商法38条3号で不招請勧誘は「金融商品取引契約の・・・締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて・・勧誘する行為の禁止」とあります。ここでいう顧客とは、特定投資家(プロ)ではなく、新規客か取引に慣れていない個人客であると想定されていますが、形式論ではなく法の趣旨で考えておかないと、後でどんな裁量が行われるかという行政リスクがあります。金融庁は、新体制でベターレギュレーションを標榜し、金融機関との対話路線に修正したとされていますが、金融機関として顧客の苦情などの状況を常時把握して、フェイル・セーフに努めないと、フェイル・アウトされる危険性を認識しておくべきです。

不招請勧誘規制には、オプトアウト規制とオプトイン規制があるそうです。前者は勧誘拒否の意思表示をした顧客に対する勧誘活動禁止で、後者は顧客の事前承諾がなければ勧誘禁止というものです。日本は前者で米国は後者というのが、これまでの認識でした。そういえば、4年ほど前に米国でDNC法という規制が導入されました。電話セールスを受けたくない個人が州政府や連邦取引委員会の事務局経由でDo Not Callリストに登録すると、企業が勝手に電話セールスをした場合に罰金刑を課すというのです。この方式はオプトアウトですが、相当に厳しい制約です。登録の受付け開始から数週間で2600万人が登録したそうです。一年で6千万になると予想されていましたが、その結果はフォローしていないので知りません。当時は、「アメリカは相変らず禁酒法の国だな。でも、日本では夜や週末に、一回は嫌な思いをするから羨ましい。」と思ったものです。金融庁見解では、金商法の不招請勧誘禁止はオプトイン規制だそうです。金融機関が違反すると損害賠償責任も負うことになるそうです。これからは裁判外紛争解決(ADR)制度が整備されますし、原告適格権を持つ適格消費者団体も増える見込みですので、訴訟は増えることでしょう。相手が善良な個人だけであれば、誠意をもって対応することで解決できるでしょうが、中には損害賠償請求を生業とする人たちも出てくることでしょう。

不招請勧誘禁止の対象手段は、法の条項では訪問と電話が明記されているだけですが、メール、手紙、ファックス、店頭販売も、同法38条4号、5号の勧誘許諾の意思不確認、再勧誘の禁止条項に触れる可能性が高いということです。顧客の明確な事前承諾なしには、アウトバウンド型の販売活動ができないことに近い。しかし、いつ承諾を得るのでしょう?顧客がインバウンドで接触してきた時に、ガツガツと勧誘承諾の書面交付を要求していたら、余程時間に余裕があり話相手を欲している人以外は、逃げ出すことでしょう。一度、承諾書面を貰っても、顧客は忘れるでしょうし、気持ちが変わることもあります。忘れずに変わることもないITを前面に迫ると顧客は怒るかもしれません。再勧誘を拒否され、金融庁や協会の苦情センターに通知されれば、累積件数次第で検査対象となることも考えられます。

ITに関連してコメントしますと。営業活動がアウトバウンドからインバウンドに変わります。既存客は会員化すればアウトバウンドを継続できますが、顧客の神経に障るようなアプローチは、経営リスクを高めます。EBMも良いのですが、顧客のプライバシーを知ったか振りするアプローチは厳禁でしょう。新規客はインバウンドとなります。どうやって、顧客を呼び込むのか?新規客ばかりを優遇する商品、価格、サービスは既存客の離反を招きます。ターゲットの顧客層に強い企業とのアフィリエートによって、顧客の紹介を受けるアプローチが主流となるでしょう。提携戦略の要として、自社が提携相手に選んでもらえる強みを持っている必要があります。CRMもコールセンターを含めたダイレクトチャネルも、これまでとは異なる戦略とテクノロジーが必要となります。プッシュ型営業からプル型営業への転換が叫ばれて久しいですが、果たしてその実現の方法を見つけられるでしょうか?セールスよりもマーケティングを支援するITとはどんなものなのでしょう?過去にブームとなった様々なジャーゴンがありましたが。