地銀システム共同化(千葉、第四、北国、中国)

日経新聞平成19年7月26日付け記事です。このニュースは、金融関連ジャーナリストの注目を浴びています。地銀の多くが共同化に踏み切っているにも関わらず、自主路線を維持していた有力地銀が4行もまとまったのですから無理もありませんが。マスコミにとって、システム共同化と将来の地銀再編は同じ絵柄に見えるようです。特にIBMと富士通には、システム共同化に加わっていない有力地銀が多かったので、その動向は地銀再編の行方を左右すると思っているのでしょう。筆者は、システム共同化と経営再編とは直接の関係はないと説明するのですが、記者諸氏に理解してもらえません。同じマンションに住めば、結婚するのかとも比喩するのですが。一度、思い込んだ記者の見方を変えるのは無理です。

今回の発表は、今までの共同化とは大きく異なっています。メインベンダーであるIBMは一切の情報を発信せず、ユーザー地銀各行が発表する形式をとっています。それも、基幹系への共同化移行は将来の課題とし、当面は周辺システム、それもチャネル系などを先行させるとしています。中国銀行は、途中から検討に加わりましたが、次期基幹系と連携基盤の調査研究に参加するといいます。基盤系との連携基盤を来春までに検討するということは、次期システム基本体系の腹案はあるということを意味します。この共同化計画は、よく考えた結果だ思います。勘定系の更改をITコスト20%削減などという些細な発想ではなく、しばらく現行システムで行くとしています。 24時間だとかネットバンキングなどは現行システムで実現していますから、更改にビジネスニーズがありません。ベンダーが現行インフラソフトの保守継続を確約し、ハードも上位機種がある限り、基幹系の更改は時間と投資の無駄という判断です。それよりは、業務分野の拡大やデリバリー・サービス多様化に向けて周辺システムを強化することを優先するとしています。極めて妥当な判断でしょう。

30年近く前の第三次オンライン企画の時、都市銀行でも開発体力不足でした。アプリ開発は自力で行うが、ミドルウェアはベンダーが提供しなくては、どうにもならないという状況でした。OSや基本的なアクセスメソッドはベンダーが提供していた上での話です。そこで、DBMSやトランザクション・コントロール、アプリケーション・コントロールなどのミドルウェアをパッケージ製品として、ベンダーが開発したのです。その際に、きちんとアーキテクチャに基づいたモジュール化ができていたか否かが、ベンダー提供ミドルウェアの寿命を決めました。今日では、大手銀行がアプリすら全て自力開発できる状況ではなくなりました。それは、プログラム開発力の問題だけでなく、業務知識であり、プロジェクト管理能力であり、ユーザー銀行側コンピテンシーの問題となってしまったのです。そして、IT投資余力に加えて、情報収集力と企画立案力が経営ネックとなりつつあります。千葉銀は地銀の中でも先行して、証券業務や信託業務に参入していますが、今後、保険窓販も全面解禁されます。コンプラ関係でも次々と新しい制度案件が出てきます。これらに関する情報を集めて分析し、システム対応策を決めるだけでも大変です。行員数を3千人としても、そのうち新規業務企画に携われる要員は2桁でも低い方の人数です。とても手が回りません。

情報収集力について一番の問題は、情報源がなくなってしまったことです。昔のように当局や協会からの情報に頼れる時代ではなくなりました。加えて、基幹系共同化に加入すると、担当ベンダー以外との接触もなくなりますし、担当ベンダーも安心してしまうのか、情報提供の努力がおろそかになっています。交通が便利となったので、首都圏以外の行員が東京出張しても日帰りです。ノミュニケーションを通じて、他の銀行や業界知識人から情報収集する機会が減り、新聞や業界紙の表面的情報だけに頼るようになっています。新鮮で大局的、かつ、生きた裏情報がなくなると、どうしても局所情報に振り回されます。この状態が続くと、アンテナが鈍るだけでなく情報咀嚼力が弱まり、ディープシンキングもストラテジック・シンキングもできなくなります。戦略的IT活用など、無理な話です。

筆者は昔から基幹系のアウトソーシングや共同化に批判的でした。(その理由は、このコラムで何度も触れました。)それでも、十数年前に地銀各行に共同化を本気で提案したことがあります。それは、新規業務を対象に、第一ステップとして調査研究、第二ステップがシステム・アーキテクチャとビジネスプロトコルの整理、第三ステップがソフトの共同開発、第四ステップが共同運用というものでした、第一ステップには多くの地銀に参加してもらい、それ以降のフェーズは各行の事情により参加是非を決めればよいとの考えでした。どの地銀も方向性には賛成してくれましたが、時期尚早ということでした。正論よりもタイミングが重要なことが身に沁みた経験です。十数年を経て、ようやく、その時期がきたのかもしれないという気がします。これからの共同化は、カフェテリア方式が必要だと思っています。共同化する対象は、IT関連資源なのか、業務分野なのか、システムのライフステージ別なのかによって組み合わせは千差万別となります。それを、お握り弁当や幕ノ内弁当方式で対応するのは無理です。