ITサービスのビジネスモデル


5月になって上場IT企業の決算発表が続いています。ITProによれば、業績の二極分化が進んでいるということです。SI企業においても同じ傾向で、NTTデータ、NRI、CSKが好調を持続し、CTCやNSSOLなどが増収増益に戻っていますが、TIS、ユニシス、富士通ビジネスシステム、NSWなどが不採算案件のために低迷しています。総合ベンダーの日立、NEC、富士通は、相変わらず一部事業の赤字を理由として、元々低い利益率を更に減少させています。数万の社員が必死に働いて数兆円も売り上げた結果が、赤字や数百億円の利益です。いっそ米国TBでも買って、寝ていた方が株主に還元できるではないかと思う状況です。我国には2千社を超えるITサービス企業がありますが、10年以上も新たなビジネスモデルを捜し求めてきました。しかし、まだ、見つかっていません。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070522/271876/?ST=kessan

SI勝ち組でも中味はだいぶ違います。NTTデータは、目標の1兆円売上を達成しましたが、営業利益は750億円です。一方、NRIは売上3千億円に対して営業利益を440億円あげています。両社の売上、収益構造を分析した訳ではありませんが、データの場合は、ハード関連の収入がNRIよりも数段大きいでしょう。ハードは国産機ベンダーから相当低コストで仕入れていますから、利益率は高い筈です。それでも、全体の営業利益率はNRIの半分ですから、開発関連の収益性が相当に低いのでしょう。IT商社型といえるハード再販ビジネスは、今後、売上も収益性も落ちていくでしょう。ハード再販からサービスに事業シフトしてきた企業でも苦戦が続いています。生え抜きコア人材なしでのサービス・ビジネスは難しいのでしょう。加えて、行政機関が契約の透明性や品質向上を目指して、ハード、ソフトの分離発注や開発すらも共通ソフト、個別ソフトと分離して、中小ベンダーの参入機会を増やすことになりました。長期的流れとしては、大手ベンダーにとって政府関連ビジネスが大きくて美味しいビジネスであり続けることは期待できません。こうした背景から、NRI型を目指す企業が増えています。しかし、何がNRI型かという説明を聞いたことはありません。NRIはマスコミの取材に対して、利益率の高さは企業秘密だとしています。ITProが言うように、中国オフショア化による低コスト化だけが理由とはとても思えません。

NRIに関してアナリスト達は、収入が野村証券とセブンに偏りすぎているとか、金融関連のウェイトが高すぎる(約70%)と指摘しています。しかし、NRIの強みは業務知識にあります。特に、証券市場系は、業務知識に加えてコアソリューションを持っています。その範囲を広げると強みが薄らいでしまいます。また、収入の安定基盤として複数の大規模ユーザーを持っていることは有利な条件です。欲を言えば、もう2、3件は年間売上100億円クラスの安定客が欲しいところでしょうが。証券関連業務の市場は、今後とも拡大することは確実ですし、顧客側に業務知識がないこともNRIにとって有利です。他にも、この分野で名をはせたベンダーがありますが、安定した大規模顧客がなかったために、ここ10年ほどの業績低迷で有能社員の大半が消えてしまいました。

サービス・ビジネスは、幾つかの分野に分類できます。

@     業務パッケージ・ビジネスは、採算確保が極めて難しい。会計や人事のように、顧客による違いが少なく、頻繁に制度改正が行なわれる分野であれば、安定ビジネスのチャンスはありますが、大きなカストマイズを要求されるような業務の場合は、開発費すら回収できないことが多い。顧客がなければ撤退が可能ですが、1件でも顧客がいると保守を続けざるをえません。このケースが最も悲惨でしょう。

A     ASPは、一時期注目されましたが、成功事例は限られています。理由は、パッケージ・ビジネスと全く同じです。業務パッケージをリモート・コンピューティングで提供するというだけのビジネスモデルになってしまっています。

B     アウトソーシングは、ビジネスモデルの限界が顕在化してきました。ITの戦略的活用という目的が実現しないまま、コストとIT要員の削減という目的ばかりが追求されて、新規業務の追加搭載が遅れた結果、エンドユーザー・ニーズは無視されています。サービス継続性を目的としたベンダー要員の固定化は、時間とともに人件費アップとなり、コスト削減の財源であったハードは更改時期を超えてしまいました。このことは、このビジネスの初期から判っていたことですが、解決の方法が見つからないまま、10年がすぎてしまいました。これからは、アウトソーシングからインソーシングに移行するビジネスが増加するでしょう。

C     SIビジネスは、認知されて約20年になります。日本は世界でも稀なSI大国となりましたが、それは売上高を増やすものの収益に貢献できずにいます。理由は、不採算案件です。ユーザー側に業務設計力がなくなったこと、ベンダー側のプロジェクト管理、品質管理能力が向上しなかったことが原因です。結局は人月商売の多重丸投げ構造のままです。最近では、各社ともに業績悪化の釈明と改善事項として、プロジェクト管理強化と体制整備を強調しますが、実現できるベンダーは限られています。逆に、かつて優れた管理体制を誇ったベンダーで不採算案件を急増させているケースもあります。

これらの問題はベンダーだけでは、解決できません。ユーザーとのパートナーシップが不可欠です。地銀などを中心に進められている共同システムの中に、解決のヒントがありそうです。筆者は昔からSWIFTのビジネスモデルが面白いと思ってきました。ユーザー代表とベンダーが共同で事業計画を立て、業務を設計し、ベンダーが開発・運営する仕組みです。また、3年ほど前からWebサービスが使えそうだとも考えてきました。最近では、SaaSに発展して注目されています。しかし、SOAだけでは機能しません。ビジネス・プロトコルの標準化が不可欠です。業務標準化は20年以上もの間、必要性が叫ばれながら少しも進展していません。多くの金融機関が集まるのは逆効果のようです。大手金融グループが、自社システムをSaaSの考え方で構築し、それを他の金融機関に開放するとともに、ベンダー各社が業務ソフトを登録して、従量制料金で提供すれば、利用ユーザーが増えるのではと思っています。1社が垂直統合でITサービスを提供できる時代は過ぎました。金融ITを支える新しいプレイヤーが必要です。