リース・ビジネス(各社が医療金融に注力)

日経新聞平成19年5月8日号の記事です。リース各社が医療分野に注力しているそうです。三菱UFJリースが診察報酬のファクタリングを拡大し、昭和リースが病院・老人ホームを含むヘルスケア営業部門を設置した。日立キャピタルが新品、中古の医療機器リースに特化した営業部門を設置したなどが報じられています。昨年度の医療機器リース取扱い額は3955億円ですからリース市場全体の5%弱ですが、毎年3%近い成長をしているそうです。

病院事業は最新機器と技術を導入している反面、経営面では遅れています。大病院の多くは赤字ですし、資金繰りにも窮しています。財務経理責任者として銀行OBが送りこまれていますが、医者でもある院長の保守的姿勢に阻まれて、思うような財政再建ができないとも聞きます。銀行の新たな融資分野として農業と医療が注目されて数年になりますが、まだ定着したとは言い難いようです。というのは、時々報道される案件を見ますと、いかにも小さい案件が特別なもののように書かれていますし、もっと単純で良い資金調達に無理をして動産担保融資と証券化を組み合わせたりしているからです。両業種とも銀行が業界知識に疎い産業で、政府系金融機関や農協系に委ねてきた歴史があります。しかし、これら保守的産業も改革を必要とし、資金フローだけでなく、資産、負債、資本のあらゆる面で構造改革が要求されています。金融業界にとって大きな事業機会です。その中でも、物的資産から入るリース業は、顧客に判り易いだけに参入し易いといえます。最近ではメガ系だけでなく、千葉や横浜など地銀にもリース関連会社の機能を見なおし、強化する動きが出ています。

昨年10月23日付けの当コラムでも紹介しましたが、リース産業は大きな曲がり角に来ています。会計基準が変更されてフィナンシャル・リース物件を資産計上しなくてはなりません。顧客企業にとってリース利用のメリットが大きく減衰します。また、金利上昇局面に入り、リース会社にとって資金調達コストが上昇し、既存物件の利幅が縮小しつつあります。各社は規模の利益を目指して合併統合の動きを見せています。また、新たな収益機会として、自動車リースや海外展開などに力を入れています。ところが、前回も申し上げたのですが、リース会社各社はイノベーションに遅れています。これといったコンピテンシーもありません。殆ど営業ルートと資金ルートが勝負です。これからは、保守サービスなどを含めたオペレーティング・リースが主力になるでしょう。顧客と日常的に接触することになります。恐らく、自動車、医療機器、農業機器など得意分野を作り(つまり専門的な要員とサポート体制)、結果として確保したドミナント市場の数が業績を決めます。経営戦略としては、注力市場を選択し、営業チャネルを確立し、専門特化要員を育成することが重要です。この時に、ITをどう使うのか?リース業界の人件費は銀行業界より低いですが、人界戦術は不可能です。バック業務の自動化だけでは競争優位は得られません。顧客と共有した知識ベース的なものが重要となるでしょう。また、様々な金融ノウハウや商品も必要になります。単純なリース一点販売では無理です。

こう考えると小出しの規制緩和の結果として、バラバラとなってしまったノンバンク業務(この表現もいかにもですが)は、少なくとも機能的に一元化する必要があります。また、銀行を頂点とした金融グループという考え方も陳腐化していくでしょう。信販業や消費者金融業などでは、地方発祥の企業が大きくなっています。必ずしも東京発祥だとか、旧財閥系が有利ということではありません。その歴史を見れば、経営者の資質が成功の原因だったということです。逆に考えると、銀行出身の経営者を頂くノンバンクには、成長の機会が少ないと考えて良いかもしれません。銀行員にはノンバンク経営に向かない人が多いと思います。バブル崩壊時に、ノンバンク再建として支援銀行から多くの経営者が送りこまれましたが、成功例が殆どないことが物語っています。といって一般事業会社が設立して、金融未経験者が経営する金融サービス業も成功例はありません。金融サービスの構造変化は、これまで免許事業の周辺業務とされてきた分野の経営経験者を求めているようです。

個人向け総合金融化を目指すアイフルや中小企業向け総合金融化を推進しているNISなどの動きが参考になりそうです。両社ともに、現在はグレーゾン金利撤廃などで経営的に苦しい状況ですが、伝統的金融機関にない企業ビジョンと意思決定メカニズムを持っています。オリックス・グループも同様ですが、コア事業を持つ金融サービス会社が様々な形で提携や統合を繰返しながら、市場変化を追っていくのでしょう。いたずらにビジネスモデルなどと称して固定的な経営を行なうよりは、リスクが少なく市場受容が得られるのではないかと思います。

それでは、こうした新たな経営スタイルを支えるITは、フロント、ミドル、バックそれぞれに、どのような機能と要件が必要なのでしょう。ITベンダーの方々は、すぐにハブ&スポークだとかSOAが解決策だと言い、最近ではSaaSだと言います。古い人は、まだアウトソーシングだとかオープン分散だと言います。ビジネス・イシューからITソリューションに飛躍してしまうのです。だから顧客経営者の納得が得られません。銀行ではなくノンバンクから見たビジネス・イシュー、ビジネス・ソリューション、ITイシュー、ITソリューションを論理的に整理したら、今後の金融ITのあるべき姿を見つけやすいかと思います。