おサイフケータイ(キャッシュカード化)

先週から携帯決済関連の記事が連続しています。日経新聞3月5日号夕刊では、おサイフケータイの契約者数が昨年末の2500万から今年末には4000万になるそうです。スイカに続いてPASMOも携帯精算が可能となり、クレジットカード機能の搭載や大手コンビニなどで読取機設置の動きもあります。更には携帯電話に決済機能を標準搭載することも普及を後押しすると見こんでいます。

同紙、3月6日号では、携帯キャッシュカードが紹介されていました。フェリカ・ネットワークス(ソニー、JR東、ドコモなど)とDNP、凸版、松下、日本ATMなどの共同開発だそうです。携帯から暗証番号を入れてATMの読取機を起動させ、その後はキャッシュカードと同じ手順でATM操作することになります。混んでなければ、さしたる手間ではないでしょう。口座を六つまで登録可能だそうです。銀行カードを何枚も持つ必要はなく、無くしても連絡すれば口座を凍結できるので安心だということです。一瞬にして6口座を凍結すれば、生活に困ってしまいますが。それは、利用者のリスク管理に対する考え次第でしょう。私は携帯を複数持つのは嫌ですから、結局カードと併用とするでしょう。であれば、ATMを使うために携帯とカードの両方を持つ必然性が薄らいでしまいます。携帯がもっと薄く、軽くなれば、考えが変わるかもしれません。厚さ1センチ程度でカード・サイズの携帯が出てくることを期待しています。

日経金融の3月9日号では、3メガバンクによるクレジット一体カードを機能拡充する動きが報道されていました。BTMUとみずほがスイカを搭載しました。SMBCも検討中だそうです。やがてはPASMOも載せるでしょう。BTMUは既にエディを載せています。各行はポイント・サービスなども拡充しています。積極的な動きといえば、その通りなのですが、一体カードの普及や利用が進まないという背景もあります。普及しない理由は、利用者メリットが明確でないからでしょう。おサイフケータイより数段、利用手順が単純で、手持ちのキャッシュカードとクレジットを1枚にするだけです。それでも利用しないというのは、利用者が使い分けているということでしょう。各口座にはそれぞれ使用目的があり、使いなれたクレジットカードには優遇策や信用限度などの移行障壁があるのでしょう。

カードと携帯電話の動きには極めて急なものがあります。銀行界では、銀行機能が他産業から侵されると危惧する意見があります。銀行協会が研究した結果としては、決して銀行機能を置きかえるものではなく、小口決済の多様化と利便性向上という視点で捉えているようです。カード加盟店やアクアイヤラーが、銀行業務の代理を行なっているという側面もあるでしょう。地域金融機関においては、IT投資負担と自分達の存在意義減衰という不安があるようですが、所詮一過性のツールであり、預金、為替、融資という三大業務への脅威とはならないとする意見もあります。これは、過去にキャプテンによるホームバンキング、バンクPOSやモンデックスなどの失敗事例からの意見です。決済銀行として規制化しようとする金融庁の動きも、既存銀行にとっては有利と見えるのかもしれません。

銀行中心の電子決済化に比べて、最近の動きは、リアル・ベースで顧客基盤を持つ企業が主体だという点が大きな違いです。リアルとキャッシュをネットでつなぎ、リアルに優遇処置があるという価値連鎖も違います。技術的にも、非接触型チップに加えて、顧客所有のメディアを使う、利用場所の汎用性など、従来のエレクトロニック・バンキングとは、シナリオ、役者、ディレクターが違います。銀行としては、普及したサービスに後から乗っていくことになります。その為には大きな顧客基盤を持っていることが必要です。ですから、危機感を持つべきは、顧客基盤の小さい銀行なのですが、動きはメガの方が早いという状況です。変化の前線にいるのと、後方にいるのとの違いでしょう。最近の地域金融機関は、情報力の劣化が止まりません。ベンダー諸氏は、もう少し地域金融機関への情報提供に注力すべきです。

カードと携帯が一体化しつつ、本人認証や取引指図のツールになる流れは止まらないでしょう。その携帯は、一段と機能を複合化させていきます。壊れても、無くしても、即座に代替できるようなサービスも出てくるでしょう。問題はビジネス・モデルです。各社は、顧客情報の確保、利便性による新規客の獲得、ポイントなどによる既存客の囲いこみなどを標榜しますが、それでビジネスが成立する筈がありません。顧客からの会費・手数料や金利収入・預り資金の運用益、加盟店手数料、広告収入などが収益源となります。現在は、価格競争を行なっている状況です。それも、既存サービスと併存ですから、既存サービスのコストは減りません。新サービスの開発や運営コストと取引の小口化・多頻度化などによるコスト増ばかりです。まさに、体力勝負であり、最後にひっくり返すオセロ戦略があるとも思えません。マスコミは電子マネーを煽りますが、デビット・カードの方がはるかに利用されているという目立たない現実もあります。銀行としては、電子マネーや電子決済における自社の位置付けとビジネス・モデルを選別する必要があります。と外野が言うのは楽なのですが、実際に決断を求められる銀行トップには難しい課題です。