銀行次期基幹系システム(富士通が新サービスをSaaSで発表)


富士通は平成19年2月27日に、金融SOAソリューション体系「EVOLUO」に基幹系オンラインのSaaSサービスを追加しました。ニッキンの3月2日号で報道されています。また、日経BPのサイトITProでも同日付けで速報されていました。

http://pr.fujitsu.com/news/2007/02/27.html

新サービスの内容は上記サイトをご覧いただくとして、概要はこういうことです。

共通フレームワークにより基本制御機能と業務ロジックを分離し、業務ロジックはSOA化によって決済、融資、顧客、日計などの汎用的アプリケーションをコンポネント化したそうです。これらコンポネントを富士通がワンストップで導入支援します。料金は、選択機能と顧客数の組み合わせによる従量制です。今年の10月から順次出荷して5年間で20金融機関以上から一千億円の売り上げを目指すそうです。順次出荷というのは気になりますが。

報道記事や富士通のサイトを見て、これは良いと思いました。ようやく新しいコンセプトの次期基幹系が出てきたと感じたのです。ただ、筆者自身がベンダー側で長く働いた習性から、鵜呑みにしません。本当だろうか?必要条件は揃っているだろうか?と斜にかかった見方をしてしまいます。ましてや、今では失敗コンセプトの烙印を押されてしまったSOAだとか、最近の流行用語であるSaaSです。富士通発表文章には、短期間、低コスト、安全だとかの空々しい言葉とイタリア語やらエスペラントが羅列されています。読むうちに怪しげな感触が増してきます。ITベンダーは、どうしてこれほど表現力がないのかと思いながら、使うための条件方法を考えてみました。方向は決して間違っていないのですから。

前提としてSaaSとASPとの違いを整理します。ASPは特定アプリをネット経由で顧客にオンデマンドで提供します。カストマイズは可能ですが、かなりの制約があります。ですから給与や人事など顧客企業内で独立した業務で、かつ、汎用的な業務ロジック(計算式と処理プロセスと入出力様式)には効果的です。ところが、多くは単にアプリ・パッケージをネット経由で使えるようにしただけなので、カストマイズは殆どできず、ユーザー企業の既存他システムとの連携にも負荷がかかりすぎるという欠点がありました。日本だけでなく、欧米でも殆ど普及しませんでした。CRMのSalesforceが例外と言える程度です。筆者が始めてSalesforceを使ったのは6年前でした。その使いやすさと料金の安さには感心したものです。金融機関にも勧めたかったのですが、DBがベンダー側、それもUSにあり、公衆回線網のためセキュリティの不安が大きすぎました。しかし、ASPとしては極めてよくできていました。CRMについて顧客企業を数段上回る経験ノウハウがあることがポイントでした。SaaSは、料金を従量性にするとか、カストマイズ容易性を高めるためにSOAを採用するなど、ASPの発展系として出現しました。富士通としては、SaaSが戦略的に活用できると期待したのでしょう。

以下に、今回発表に関する疑問や希望などを思いつくまま列挙してみました。最初からベストの商品などありえませんので、対応してくれれば良しという気持です。

第一に、SaaSのインフラは富士通が握ります。銀行IT戦略は富士通の営業政策に全面依存することになります。それは避けたいので、インフラだけ提供して欲しいという銀行が多いでしょう。ITベンダーは、全てを抱え込もうとしないで、プラットフォームの提供にとどめた方がよいかもしれません。

第二は、業務ソフトに関してです。SOA化されており、顧客ニーズに合ったプログラムを組み合わせ可能としていますが、果たして実現できているのか?PROBANKが雛型ということですが、それでは不十分なことが多いでしょう。融資や顧客管理が汎用的だとしていますが、それは余りに無理があります。利用銀行に業務の選択肢を提供するためには、多くの先進的なユーザーの業務ソフト提供が必要です。ユーザー・コミュニティの存在とユーザー開発の業務ソフトの登録制などはどうなっているのか?

第三は、営業店端末との機能分担です。銀行オンラインでは、ホストと営業店サーバーで業務機能が分担されています。SaaSのメリットの一つに、端末はシンクライアントで済むということがあります。ところが、現在の銀行営業店システムは2百万ステップものアプリケーションを持っていることがあります。この端末機を残したままでは、SaaSのメリットが消えてしまわないか?

第四は、機能追加の容易性です。業務テンプレートがあるとしても、各銀行は数十年慣れ親しんだ業務プロセスで考えますし、他行にはない新商品や新サービスを必死に考えます。それが、どの位、容易かつ迅速に搭載できる仕組みになっているのか?

第五は、富士通以外のベンダーの参画はどうするのかです。今日では、一社が全てのソリューションを提供することは、全く不可能です。多くのベンダーや業務に強い独立系ソフト開発会社の協力が必要です。その受け皿は考えられているのか?用意する意図はあるのか?

第六は、開発保守のツール・セットです。銀行のIT要員は、進化・変化するITスキルに追随できなくなっています。特定のベンダー技術や日進月歩する技術を、特別な研修もなく使いこなせるようなツールが揃っているか?

第六に、既存システムとの関連です。全面移行するとしても、移行期間中の連携が課題となります。多くの銀行は、一部業務を既存システムに残すことでしょう。アプリ、データなどの連携はどのように取るのでしょう?

銀行基幹系システムを支えてきたベンダーは、どうしても既存システムを置き換えたいようです。ハードやミドルウェアの保守に耐えかねているのでしょう。といって、全面更改するだけのビジネス・ニーズは明確化されていません。銀行経営者やユーザー部門からすれば、わざわざ危険と労力を費やして、高い費用をかける理由は全くないのです。筆者なら第二勘定系を作って、既存勘定系はトコトン延命させます。保守ができないとか、維持コストの方が高いとか言うのですが、果たして本当でしょうか?第二勘定系をSaaSで提供し、既存システムとの連携を図る方が、銀行にもベンダーにも良いと思うのですが。