協調融資のネットサービス(電通国際が開始)


平成19年2月21日の日経金融が、電通国際情報サービス(ISID)の新サービスを紹介していました。、シンジケートローンのアレンジャーが入力した契約情報を参加金融機関がWebで閲覧できるサービスを開始するということです。複数の遠隔地金融機関で情報の共有可能性と同時性を高めることができます。アレンジャーからのローン契約条件や財務関連情報の配信機能もあります。アレンジャーの負担は減りますし、参加金融機関の意思決定や手続処理も早くなります。一見すると新聞記事になるほどの話ではなく、単純にWebとメールがあれば済むと思います。ただ、機密情報ですからセキュリティには充分な手当てが必要ですし、財務情報などにはデータ様式の標準化が要求されます。ISIDのサイト情報によれば、米国IntraLinks社のOn-Demand Workspacesというシンジケートローン組成プロセスに沿った、一種のグループウェア・ソリューションを使うということです。このソリューションは欧米で広く使われており、ISIDとしては日本の業界標準とすべく、みずほCBなどメガバンクと共同で利用可能性を調べてきたということです。http://www.isid.co.jp/news/back/070221IntraLinks.html


日経金融の記事によれば、みずほCB、SMBC、BTMUが採用する見通しで、2月には第一号案件が組成される予定だそうです。地銀などシンジケート参加各社は、ISIDと直接契約する必要はなく、IDとパスワードを入手して利用することになります。また、ISIDはOn-Demand Workspacesが共通インフラと認定された暁には、シンジケートローンの期中管理システムの提供も計画しているとのことです。

派手なツールではありませんし、マスリテールを対象とするのではないので、マスコミの注目度は低いと思います。しかし、今後、複数の金融機関が協調して融資や証券化などを行なうケースが増えることは確かです。更に、法人取引先や弁護士、会計士などプロフェショナルが参加するケースも出てくるでしょう。こうしたB2Bのワークスペースを単品でなく、インフラ・サービスとして提供することは、今後の金融関連ITビジネスの方向性に沿ったものと言えます。ASPまでいくと途端に個別仕様が必要となって、クリティカル・マスの顧客数を確保できなくなリます。業務インフラに寸止めするのがミソでしょう。

11年前になりますが、バーチャル金融を提唱したことがあります。バーチャルは今日で言えばサイバーやネットという意味ですが、これを使って複数の金融機関や専門家、取引先(法人、個人)が協業するプラットフォームです。例えば、逆オークション方式の1対n融資、中小企業向け私募債やCPのシンジケート、そして協調融資などです。著書や講演などで数十回と提案したのですが、金融機関の皆さんの反応は極めて冷淡でした。理由を聞くと、規制だとか時期尚早などという抽象的な回答でした。実現させるという前提で、その方策を考えませんか?と言うのですが、考えたくないという反応でした。

協調融資や動産担保融資など、今でこそ、機会があれば参加を検討しますが、その当時は面倒で利益にならず、失敗すれば出世に響くという金融手法だったのでしょう。今は、単純融資では金利競争のみで全員敗者というビジネス環境です。付加価値をつけようとすれば、銀行だけでは手に負えません。銀行にはない機能を他から取りこんで、資金に価値をつけることが必要な時代です。さりながら、銀行員の横睨みと石橋叩きのDNAは抜けません。むしろ、民営化を決められた政府系金融機関の方が、新しい手法に積極的です。商中や政策投資銀行などのABLやDIPなどがその代表例です。もっとも、金融機関だけを責めても仕方ないことは事実です。顧客である企業や個人に先進性やリスクテイクの土壌がないのですから。

ISIDの新サービスが短時間で普及することは難しいでしょう。利用する金融機関の変化速度が遅いからです。しかし、方向性は正しいのですから、長期の不採算に耐えられるかがポイントとなります。赤字にならない程度で、徐々に使い方に馴れ、利用範囲が広がれば収益源に成長する可能性はあります。このようなアイディア・ビジネスを他のITベンダーも展開すれば、金融業界のIT化促進になることは確かです。提案力を磨いて欲しいものです。その際には、カストマーベースとタイミングが重要な意味を持ちます。