テレホン・バンキング(十六銀行がサービス廃止)



平成19年2月2日付け日経金融の記事です。十六銀行と第三銀行がテレバンを廃止するということです。利用が少なく採算性が悪いことと、ネットバンキングや携帯バンキングの方が利便性が高いので、顧客に大きな迷惑をかけずにネット・サービスに誘導できるという判断のようです。

2行が続けてテレバン停止というと大きな流れと思われますが、実際はそうでもないようです。多くの地域金融機関は存続予定ということです。たまたまITに関心のある記者が日経新聞東海支局にいて、その取材中に、この2行の話が出てきたのだと想像しています。とはいえ、一昨年のFISC調査の結果で、テレバンを新設・再構築するという銀行は1行ずつでしたから、衰退期に入っていることは確かでしょう。

現在、ネットバンキングで提供されているような単純なサービスであれば、PCでも携帯でも自分で操作しますが、複雑な取引の場合はテレバンが便利です。オペレーターと相談しながら、全てやってもらえます。尤も、複雑な商品・取引の組み合わせがあり、それに対応できるオペレーターを備えている銀行は限られていますが。この種のサービスは、今後、TVバンキングなどに置き換わっていくでしょう。筆者は、その時期を5年後頃と見ています。理由は、NGNが普及し、個人でも高機能なマルチメディアTVを購入できるタイミングと想定しているからです。金融機関としては、機器やソフトなどは購入すれば済みますが、顧客相談のできる人材をどれほど準備できるかが勝負となるでしょう。

テレバンやテレマが一世を風靡したのは、20年近く前のことでした。それが、十六銀行クラスの銀行ですら、利用者が少ない状態で今まで運営してきたということになります。経営効率からすれば辛い話です。廃止を決めまた2行では、上申した担当部門も承諾した経営者も賢明というか、勇気があるということです。通常は、採算割れに目をつむって継続するのが、金融業界の慣わしです。

このトピックスからの教訓は二つあります。

第一は、クリティカル・マスを確保できない銀行にとって、新チャネルは単なるチャネル・コストの二重化だということです。地域金融機関にとってテレバンは、競合上やむを得ずに導入した経緯があります。営業部門から、他行に客を取られると圧力があったのです。積極的なチャネル戦略ではありませんから、投資を抑えます。自動応答機能などの投資はせず、夜間や休日はサービスしません。単純な取引だけならATMの方が便利です。結果として利用者は増えません。しかし、固定コストはかかります。差別化が難しい産業では、他社の商品・サービスに追随せざるをえないのは理解できますが、経営判断として経費削減狙いなのか、業容拡大狙いなのかによって、投資やサービス内容などを決定する必要があります。営業部門は何でも新しいことを要求するだけです。

第二は、新商品・新サービスの開始には撤退戦略が事前に不可欠だということです。金融機関の場合は、一般企業のように簡単に廃止できません。最近では、頻繁に店舗統廃合をしますが、顧客のついた商品を廃止することは容易ではありません。特に、信託や生保のように長期間の商品となると、完全廃止まで10年以上を必要とします。郵便貯金は、今年9月末日で定額貯金を販売停止としますが、記念に新規取引する顧客が多いと思います。10年後に満期となりますが、引き出さない客もいるでしょう。法律で10年は保管することになります。その時点で、顧客に引出しを再要請しますが、連絡のつかない客も出てきます。規約で更に10年保管して、その後は雑益処理することになります。つまり、2037年9月30日まで定額貯金の口座管理が必要ということです。この間のコストは大変なものでしょう。今回のテレバンのように、携帯やネットなど代替手段があり顧客財産の減衰にならない場合は、比較的簡単ですが、商品・サービスの開発の段階で、撤退・廃止の手順を決めておくことが必要です。金融機関にはシステムを含めて、廃棄に関する概念がなさすぎるようです。

ITに関連して言えば、機能追加を際限なく続けた結果、システムは巨大化、複雑化しました。トランザクションが殆ど発生しないアプリケーションも多いことでしょう。例外処理のロジックと合わせて、システム費用の大半を占める保守費を膨らまします。例外処理をシステムで処理せず、利用の少ないアプリをPC化できれば、どれほど基幹系システムが身軽になることでしょう。