住宅ローン・ビジネス(地銀が外資と提携)


日経新聞平成12年12月2日付け記事によれば、全国銀行の住宅ローン残高が10月末時点で、101兆6千億円に達したそうです。5年間で20兆円ほど増やしたことになります。住宅公庫が今年度で直接融資を廃止することもありますが、銀行の貸出競争は大変なものです。余りの低金利に、これで利益が出るのか、信用リスク・コストは入っているのかと心配してしまいます。ところが、メガバンクの話では、今やリテール分野最大の収益源になったそうです。

11月20日の日経で、モルガン・スタンレーが地銀と組んで、住宅ローンに参入という小さな記事がありました。自営業者や非正社員を対象にした商品を開発し、地銀が融資・回収をし、モルスタが貸出債権を買い取り、証券化して機関投資家に販売するというスキームです。八十二銀行など地銀8行との提携が決まっており、20行程度まで広げることで、年間数千億円の扱い量にするという内容でした。読み取るポイントは二点あると思います。第一は、これまでの規格化された融資先条件に非定型条件が加わることで融資先即ち市場の拡大が可能となります。審査モデルの新規作成が必要なので、モルスタが米国で使用している先端システムを活用するとあります。しかし、日米の不動産市場や労働市場、税制などの違いで、ほとんど使えないと思います。国内ですら地域特性がかなり異なります。第二は、証券化ビジネスが、対象債権を新たに開拓してから組成するビジネスモデルの時代になったということです。クリエイト、オリジネートが証券化の競争力になってきたようです。

12月6日付けの日経金融が、モルガン・スタンレー証券やGEコンシューマー・ファイナンス(GECF)が、地銀と組んで新型の住宅ローンを開始するという記事を掲載しました。上述記事の詳細版です。表題が面白いのですが、「融資しづらい顧客に的」とあります。融資しづらいというのは、リスクが高いということでしょうが、実態は銀行員が理解できない客ということではないか?融資すれば貸倒れが発生するのが当然ですが、銀行にとって貸倒れは例外中の例外です。業務純益の計算式に信用コストが入らないビジネスモデルです。貸倒れという例外が発生しても、誰も責任を問われない仕組みも必要です。ですから、こんな属性なら貸倒れはない筈だという顧客層を前提に審査基準が定まっています。ある大企業社員が最近、高級マンションを買いました。簡単に審査が通ったかと聞きましたら、何の問題もなかったそうです。しかし、その人は近く退社して独立予定です。労働移動率は高くなっています。ある超大企業の幹部が、融資申込を断られたそうです。ニ十数年勤めているのですが、100%子会社役員に転籍して2年なので勤務年数が不足だそうです。こうなると笑い話です。ある企業オーナーが買い換えの為に申込みをして断られました。所有会社の直近業績が低下傾向だからだそうです。IPO長者で、返済能力に問題は全くないのですが。自尊心を傷つけられたオーナーは取引銀行を変えました。こういう事例を見ますと、資金ニーズがないとか、ある先はリスクが高くて貸せない・・・というより、銀行が勝手に怖がって逃げているというケースが多いように思えます。NPOバンクなどへの期待が高まるのは自然の流れでしょう。ネガティブ審査だけでなく、ポジティブ審査も望まれます。100%リスクのない客に資金ニーズはありません。

GECFは、地銀の融資基準に満たない顧客を紹介してもらい、独自の審査基準でリスクと金利の判断をするそうです。旨みのあるビジネスです。福岡銀行、熊本ファミリーとの提携で、今月からサービスインしています。モルスタが米国で扱う住宅ローン担保証券は、年間で400億ドルを越えるそうです。外資から見ると、日本の住宅ローン廻りには、まだまだ大きなビジネス機会があるということでしょう。知恵とリスクテイクの問題だと思います。地銀にとって、審査ノウハウやリスク・シミュレーション技法は、すぐに修得できるでしょう。むしろ、外資のビジネスマインドを盗んで欲しいものです。外資銀行員の多くは、元々邦銀の行員でした。地域特性と顧客のサイコグラフィック属性に応じたノウハウとデータを蓄えるべきです。

民営郵貯の住宅ローン参入を巡って議論が続いています。ゆうちょ銀行が参入する時に、今あるオートスコアリング程度の審査基準では、入りこむ余地と利益はないでしょう。地方によって、住宅に担保価値がないことがあります。無担保・無催促の住宅ローンはありえません。以前は、住公に廻していれば済みました。これからは外資系にというわけにもいきません。モルスタやGECFのビジネスモデルは、ゆうちょ銀行がやりたかったものかもしれません。地銀は単純に郵貯反対を唱えるより、銀行本来の審査ノウハウを再開発すべきです。それができれば、メガやゆうちょ銀との競争と協調を考えることができます。システム的にも開発が難しいものではありません。イントラネットなどで対応すれば費用もさしたることはない筈です。ルールベースやWebサービスなどの技術をマスターすることが重要となりますが。データ蓄積とノウハウが成功要因です。