証券取引所の改革(欧米大手投資銀が共同でPTS創設)



日経新聞平成18年11月16日の記事です。欧米の大手投資銀行7社が、来年後半を目指して欧州株のPTSを共同で設立する計画を発表しました。メンバーは、GS、シティ、MS、クレディスイス、ドイチェ、UBS、メリルの7社です。そうそうたるメンバーで、欧州の株取引の50%を扱う規模になるそうです。目的は、統合によって取引所の支配力が強まりすぎる危険と、元々高いとされる売買コストを抑えることだそうです。

PTSは、個人取引よりもロットの大きい法人取引の方が採算を取り易いのですが、ネックは価格情報などの情報サービスです。取引参加者の多い方が、より正確に市場の動きが掴めますので、PTSのウィークポイントです。東証の次期システムでも、情報サービスの強化拡充を謳うのは、この理由からです。ところが、今回の7社を含む9社が、既に9月に株価情報配信サービスを共同で行うことを決定しているのだそうです。この新PTSが一挙に既存取引所の扱い量を奪うことはないでしょうが、少なくとも競合を意識した価格とサービスを展開せざるをえません。

日本でも、イートレード、楽天、SBIが共同でPTSを設立する予定ですし、カブコムのPTSにBNPパリバ、GS、三菱UFJの3社が参加予定です。特にカブコムPTSのメンバーを見れば、法人取引が増えることは確実でしょう。金融庁も、こうした動きを前向きに受け止めているようです。その背景には、東証の改革速度が遅すぎるということもありますが、一局集中の弊害を避けるために競争原理を導入したいということがあるようです。昔の金融行政には10%ルールというのが暗黙裡にありました。新規参入者が既存市場から奪うシェアが10%までなら様子を見る。それを超えるようなら、規制のあり方を考えるということです。新風を入れながら、市場の健全性を脅かされない程度の数字なのでしょう。

10月末に東証はNYSEとの提携交渉を認めました。しかし、その後でロンドン、ドイツの取引所とも提携を検討していると公表しました。海外3取引所と並行して提携交渉する力が東証にあるのか?という声が専らです。主導権を取りたいのだろうとか、どことも提携したくないから時間稼ぎしているのだろうという見方もあります。そうしている内に、世の中は凄まじいスピードで動いています。加わって騒ぐのが正解かどうかはわかりませんが、これまでの東証はさしたる改革もなく、これからの姿も描ききれていません。上場が目的となっているようです。東証だけを責めるわけにはいかないでしょう。メンバーである証券各社や証券業協会が、東証の改革を阻害している面もあります。業界団体は、いまだに護送船団で、当局以上に規制色が強い組織です。大手3社とメガ系ホールセール証券が共同でPTSを作るくらいのことをしても良いと思うのですが。

一時、商品取引会社などが証券業参入に積極的でした。最近では、逆に証券会社がFOREXビジネスに参入しています。その中間には外国証券があります。ネット業者に、アジア各国の証券取引所を連携してPTS(正確にはECN:Electronic Communication Network )を構築して、クロスボーダーの証券業務を展開できないかというアイデアもあります。IT業者の中には数億円もあればシステム構築が可能だとする会社もあります。そんなに簡単な話でないのは確かですが、ITがこうした事業への参入コストを引き下げているのも事実です。日本では、取引所システムのノウハウを持つエンジニアが流動化していないことが既存取引所を助けている面があります。米国などでは、取引所のシステムを担当していたSEがITベンダーにグループで転職するなど頻繁にありますので、業務とIT双方を熟知する要員を確保するのは可能です。日本のSEの流動性はまだまだ低く、それがITの有効活用を阻害していると言えるでしょう。経産省が考えるような、純テクだけのスキル育成政策では、組みこみソフトはいざ知らず、企業の業務系システムを革新することは不可能です。それが重なると、業界そのものが陳腐化します。

日本でも、もっと多くの取引所ができれば、ITベンダー側としても採算可能性が高まり、要員のレベルアップも可能なのですが、今のままですと取引所も海外パッケージに席巻されるか、海外のASPを使うことになりそうです。