郵貯銀行のシステム選定(旧大和銀を検討)


日経コンピュータ7月10日号の記事です。日本郵政は、来年10月発足予定の郵便貯金銀行用のシステムとして、旧大和銀行の勘定系システム「NEWTON」を採用する方向で調整しているそうです。

今年の3月には、旧UFJか旧富士のシステムを検討しているとの報道がありました。筆者は、当コラムで、「この報道は、検討を中断させたいグループによるリークでしょう。」という論調でコメントしました。この後、我々の仲間うちで、どのような選択肢があるかが良い酒の肴となりました。(真剣に検討されている担当者には失礼ですが)

ベンダー・パッケージか大手銀行のシステムか、新規開発かの三つですが、選択のポイントとしては、

@    メガバンク級の郵貯銀行に相応しいイメージと処理能力を持つ。

A    業務処理機能としては特殊性よりも、標準的処理手順であり、できるだけ新しい業務機能を備えている。

B    極力モジュール化されており、アプリの切り離しや新規開発追加が容易である。

C    OSやミドルウェアは、ベンダー・サポートの継続性が保証されている。

D    ドキュメント(含む事務規程や操作マニュアル)が整備、充実している。

E    導入・運用のための経験豊富な要員を量的にも確保できる。

F    注目される中の稼動であり、安定稼動の実績が必要。

などです。

発足当初は、預金為替業務と投信窓販などだけですから、新規開発が最も合理的だが、1年強という短期間で開発できるベンダーは存在しないということで新規開発は無理との意見が大半でした。筆者は、この方法がベストと思うのですが。

ベンダー・パッケージは、どれも中規模以下の銀行用であり@の要件を満たさない。スケーラビリティを強調する海外系パッケージもあるが、業務処理が単純化されすぎて、コンプラ・チェックや会計処理との連動に問題がある。修正を加えていては、時間・費用が膨大となり、むしろ新規開発の方が無難と全員一致。

大手銀システムとしては、旧11都銀のシステムが考えられる。DKB、富士、三菱、三井、住友、三和、東海、協和・埼玉、大和、太陽神戸、北海道拓銀です。

三井はさくら合併時に使用停止となり、太陽神戸は住友との合併時に使用停止となり、その後のメンテがなされていないので対象外。東海は4年前まで現役だったが、メンテされていない等の理由で対象外。恐らくこれらのシステムは、ドキュメントも要員も分散してしまっているでしょう。

DKB、三菱、住友、協和・埼玉は現役システムであり、業界が敵視する郵貯に提供することは政治的に難しいので対象外。本当に敵視しているのは一部の銀行と、その方が報道見出しをつけやすいマスコミが煽っているだけなのですが。

三和がベストだが、2008年末まで現役であり、担当要員もシステム統合真っ最中のため導入支援も無理。

残りは富士、大和、拓銀です。富士のドキュメントはかなり分散してしまっていると思われるが、要員はまだみずほ情報総研に大分残っている。ただし、業務機能が都銀の中で最も先進的であり、機能面でみずほを上回ってしまう。これには、みずほが耐えられないだろう。また、現在次期シス検討中であり、今秋から開発開始予定であり、要員不足となることが確実である。

ダークホースが大和と拓銀です。どちらも一般的には使用停止となっていると思われていますが、りそな信託や北洋、中央三井信託などで現役です。ドキュメントは揃っていますし、要員はIBM関連会社のD&IやISOLにいます。

大和は信託業務を持っておりアプリ的には複雑、拓銀はシンプルな設計でありながらも、業務機能は富士に次いで進んでいる。理屈では、拓銀かな?というのが我々の結論なのですが、破綻行というイメージから日本郵政は嫌がるだろう。結局は大和しかないか?しかし、端末はどうするんだ。もう造っていないだろう。JCCPの技術者はいるのか?金融にはいないかも知れないが、製造業界には結構いるぞ。

などといった話が延々と続きます。

日本郵政は、銀行システム経験者の採用を進めています。昨日で社長がようやく決まりました。5年後には上場したいとの計画も報道されました。しかし、肝心の業務範囲は未定です。上場しても、日本郵政の持ち株比率をどこまで下げれば、民間と同じ業務が出きるようになるかも不明です。つまり、アプリ・ドメインが決まらない状態でのシステム化です。プロジェクト・リスクとしては、極めて大きなものがあります。船頭が多く、外野もうるさいのでガバナンスが効きません。ベンダーにはコントロールの範囲を越えます。とはいえ、どのベンダーも受注したい案件でしょう。相当の政治力とアーキテクチャを含めたプロジェクト管理能力が要求されます。その自信があるかどうか、日本郵政側がそれを信用するかどうかで、ベンダーが決まるでしょう。