銀行の共同子会社


金融庁は共同子会社認可に関する告示案を作成し、平成18年6月28日からパブコメ募集を始めました。http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/ginkou/20060628-1.html

金融専門紙のニッキン7月7日号によれば、早ければ8月から認可する可能性があるとしています。共同子会社解禁の動きに関しては、当コラムでも昨年4月に触れましたが、銀行にとって、グループ戦略展開や業務コスト節減に大きな影響を与える可能性があります。今年の銀行法改正における目玉の一つです。(目玉は4つあり、銀行代理業の新設、取締役の資質誓約、共同子会社、アウトソーサーに対する検査権限です。)

銀行は他業禁止です。一定の保護を受ける見かえり、利益相反防止、優越的地位乱用防止、産業支配防止などが、理由です。ですから、認可業務を遂行するのに不可欠な付随機能であるが、一般企業も行なっている業務を別会社化(従属業務)して第三者に提供する場合は、種々の制約が課されています。役職員の兼務規制や出資規制、商標規制などですが、最も強力なのが収入依存度規制です。これまでの子会社は、一つの銀行の子会社であり、かつ、収入の50%以上は親銀行からという条件です。つまり、グループ以外への販売は、50%未満に制約されています。本体からの収入が少なければ、外販も少なくする必要があります。銀行の規模が勝負という分野です。その結果、子会社における市場開拓意欲やコスト削減意欲をドライブすることは難しくなります。また、利益を上げることは、親会社に過多な費用負担をさせているとして、収支トントンが良い経営となります。すると、親銀行から得られる収入(これは年初予算で判っています。)で、1年間をすごせば良いというビジネス・モデルが固定化します。銀行を引退する役員に対し、長閑なセカンドライフを提供することにはできますが。意欲的な経営者が革新的なことをしようとしても、術はありません。

わざわざ別会社化するより、専門業者にアウトソースした方が安くて、サービスも良いと考える銀行もあります。現金輸送やATM保守管理などが代表的業務です。都銀では、東京などで社内メール集配送を共同委託するケースがありますが、多くは競合他行と別の会社を使います。現金輸送では、同じ地域を日通、セコム、綜警の車が走りまわるわけです。ATM保守管理も同様です。多くの銀行は、営業上の理由もあって、複数ベンダーのATMを設置しています。保守会社はATMメーカー直系ですから、アウトソースするとしても複数になります。地銀の場合は、広い地域に店舗が拡散していますから、一店舗当りの委託手数料は高額となり、無視できない負担となっています。

今回の改正によって、銀行は5%以上の出資と収入依存度90%以上であれば、複数の金融グループの共同事業が可能となります。単純計算すれば、最大20社による共同子会社です。規模のメリットを出すには充分な数でしょう。しかし、共同事業に参加するメンバーを想定すると、上述のように近隣諸行の合弁は難しいかもしれません。打開するには、中核となる会社が、地域競合の非当事者である必要がありそうです。それが、メガバンクか大手ベンダーかは判りませんが。

筆者の懸念は、むしろ事業性にあります。参加各行の一部経費を部分的に節減するだけが目的の会社が立採算可能なのか?1行の子会社の時ですら難しいのに、複数銀行の合弁となると責任の所在もガバナンスも曖昧になります。そういった共同子会社に出向・転籍する銀行員の気持を思えば、一段と複雑になります。一方、自分は銀行に就職したのだから、せめて支店長になるまでは・・・と思っているような保守的な人ですと、その業務を本業とする人達に勝てるはずがありません。

どうすれば良いか?全く新しい事業を起こす。それが、銀行だけでなく、地域経済や多くの顧客に役立つ。やがては銀行本体の財務基盤を支えるようになる。などの将来のビジョンと、それを現実化するためのアクション・プランが必要です。合弁で行なうのですから、決して簡単ではありません。合弁会社が成功する事例は希少です。しかし、製販分離という新しい金融制度において、銀行固有業務の周辺に様々なビジネス・チャンスが生まれてきます。現金輸送やATM管理を、現在行なっている作業の範囲で考えたのでは、新たな展開はなさそうです。銀行にとって、グループ戦略と並んで提携戦略やブランド戦略がますます重要になってきます。それを支えるのは、第1が人材戦略であり、第2がITということでしょう。共同子会社のビジョン、事業目標に必要なコンピテンシーを揃えるという視点で、共同子会社の参加者を選ぶことが必要です。