電子マネー共通端末(セブン&アイが開発を計画)


日経新聞平成18年5月19日号の記事です。セブン&アイは、独自のプリペイ・カードを来年春から発行予定ですが、それに使用する店頭端末で他社の電子マネーも扱えるように、JR東などとの提携交渉を開始したそうです。

同社は電子マネー・カードnanacoの初年度発行枚数1千万枚を計画するなど強気ですが、一方でスイカ、エディもグループ店舗1万2千店で扱えるようにしたいということです。更に、クイックペイ、スマートプラス、iDというポストペイの非接触型クレジット・カードにも対応する意向です。既に、JCBとは提携合意ができているそうです。各社からカード仕様の開示を受けて、松下電産が読取装置を開発することになっています。スイカのようにオンラインで利用履歴管理している場合、ホスト連携も必要となりますが、それについての報道はありません。

セブン&アイの狙いは顧客利便を増して集客するだけでなく、ファーストフードやビデオレンタルなどの店も取りこんで、カード管理業務だけでなく、ポイント・サービスもビジネス化したいようです。ATMサービスと同様に、全国の小売店などに電子マネー・サービスを提供して、新たな収益源とする考えなのでしょう。30兆円とも60兆円とも言われる電子マネー市場で、チャージや精算を代行すれば0.1%前後の手数料が得られるそうです。

20年ほど前、米国の小売業といえばシアーズでした。現在ではウォルマートが雄とされていますが、当時のシアーズの勢いは大変なものでした。ITを活用して金融にも参入すると言い、主な競争相手はシティ・バンクとIBMだとしていました。日本の銀行による視察団の受入れを要請したことがあります。競争相手に手の内は見せられないとケンモホロロに断られた記憶があります。カードに参入しましたが、結局は失敗してカード事業を売却しました。最近では、ウォルマートが銀行設立を申請して、FRBが判断できずに議会に裁定を投げるなど議論を呼んでいます。

筆者は、セブン&アイがシアーズのように、金融ビジネスの失敗が契機となって、No.1の地位を失うと言いたいわけではありません。むしろ、金融関連のITインフラとリアル拠点とマーケティング力を活かしたビジネス・モデルを作っていると感心しています。1%以下の売上利益率を前提としたビジネスに慣れた小売業だからこそ、装置産業化と労働集約を混合してしまっている既存銀行にはないビジネスの発想ができるのでしょう。

銀行界のITインフラ共同化は、業態別に共有して個別行の投資額を抑えることと、他業態の侵食を防ぐのが目的でした。今では知る人も少ないでしょうが、通信回線を共同利用したり他人に使用させることはNTTしかできないという法的制約があったことも理由です。はっきり言えば、仲間同士で固まる互助会のようなもので、顧客利便は二番目というのが実態でした。CDやATMネットワークの共同化、FBのマルチバンク・サービスなどがそうです。地銀同士のマルチバンクFBにニーズのある企業や信金同士の共同ATMを使う個人など限られています。そこにセブンイレブンのように多数の店舗網を持つ企業が出現し、IT技術革新によってコスト的な参入障壁も激減しました。銀行法も改正されて新規参入が容易となり、銀行法や出資法を一般企業が気にする必要も少しですが減りました。多数の顧客を持ち、その利便をビジネスの根幹とし、経営の決断の早い企業が、銀行のスピードやサービスに勝るのは簡単です。銀行は単独でも遅いのに、業態別にそろりと試行して、次いでおもむろに業態間共同に向うのですから。最大公約の機能を最少公倍の時間です。保険業界もそうですし、カード業界も似たようなものです。

電子マネーだけでなく、アグリゲーション、セキュリティ・サービス、代理店サービスなどでもマルチバンク機能が要求されます。金融界は、これまでのような標準化、共同化に関する思考パターンから脱却しなければなりません。強制できない限りは、協会単位での推進は現実的でありません。恐らくメガが主導して、それに賛同する他金融機関が任意で参加するという形になります。

しかし、メガバンクといえども、単独で全てを調査研究して投資することはできません。ITベンダーや他産業の参加が必要となります。金融におけるIT化では、マルチバンク機能をいかに展開するかが、銀行だけでなくITベンダーにも重要な戦略要素となりつつあります。裏返すと、どこに差別化を求めるかが、一段と重要にもなります。