セグメント・マーケティング(新規ネット証券顧客)


日経金融新聞平成18年3月7日と8日号の記事です。同紙は、2日に渡ってネット証券調査の結果を報道しています。ネット専業証券5社(松井、イートレード、マネックス、カブドットコム、楽天)における口座数、売買額を年代・性別に集計したものです。5社の口座数合計は、1年で50%ほど増えて300万になったようです。

昨年の個人取引総額の57%(153兆円)を占める5社ですが、年代別には、この1年で50代(21.8%)、60代(18.4%)の口座が増加しているそうです。イメージと異なるのは、ディトレードの多い20代の取引が、昨年5月の15.1%から12月の10.9%にシェア低下したということです。50代以上の取引増が相対的に低下させたということでしょう。

8日の記事では、新規口座について報告しています。昨年12月の新規開設は16万4千です。凄い数字だと思います。中でも女性の比率が25.6%と1年で4.4%増やしているようです。女性就業率46.2%を考えると、このままだと全就業女性がネット証券取引を行うという理屈になります。(あくまで数字の遊びですが。)外資系銀行の話を聞いても、最近はリスク商品に興味を示す女性が増えており、外貨建てや証券モノでないと話を聞いてくれないということです。商品取引会社でも、若い女性顧客が金取引などで増えていると聞きます。投機的な人もいますが、多くは長期的投資を前提としており、昔のように結婚資金だけ貯めて他は遊興費に使うという時代ではないようです。自己研鑚と資産形成に力を入れているセグメントと認識すべきなのでしょう。

銀行界で現在の注目セグメントは団塊世代と若い女性層です。団塊世代の退職金狙いと働く女性の住宅ローン狙いということです。都銀だけでなく地銀も同様の営業戦略を打ち出しつつあります。どのような商品構成でこの層を抑えられるのか、抑えたとしても採算に必要な規模となるのか?人口20万で持ち家比率が80%を超えるような地方都市に、女性専用住宅ローン・センターを開いても、担当者は暇つぶしに困るだけだと思うのですが。どうも短絡的というか画一的に捉えている銀行もあるように思います。

団塊世代向けや若い女性向けを謳った専門誌の寿命が極端に短いことに学ぶべきです。雑誌のように簡単に廃刊できれば良いですが、金融機関はそうはいきません。作るよりは、廃止の方が数段難しい。加えて、もっと包括的な取引関係を作らないと、対象顧客のニーズ変化に対応できないか、永遠に不採算ということになりそうです。取引ライフの大半が不採算の顧客と包括的関係を維持することが正しいかという問題です。ネット証券は全国の顧客が対象ですので、属性によってセグメント化しても商品機能と価格だけで差別化できる市場規模を確保できます。その点、銀行取引は余りに地域特性があり、商品や価格だけでの差別化が難しい。特に地域金融機関は、包括的戦略を展開せざるをえません。

包括的戦略の欠点は、総合的で複雑だということです。総合とは、語感は良いが、なにものでもないことが多い。それを逃れる手段として、中核的機能をもつパッケージ商品があります。しかし、顧客の金融リテラシーが高いと、パッケージをカストマイズせざるをえません。カストマイズやリパッケージを前提とした金融商品を見たことがありません。聞きますとシステム化が難しいからということです。

ITの世界では、プログラム製品、特に顧客業務のパッケージ商品化が難しい。標準製品では受け入れてもらえません。筆者の知る限り、ITベンダーは40年もの間、同じ失敗を繰り返しています。「ここを変えてくれれば買うよ。」という顧客の誘いに乗ってカストマイズしても、買って貰えないことが多い。売れても、それはパッケージではなくなってしまう。手作りか、それ以上にコストがかかるのに、価格は既製品ということで、とても安い。それを複数の顧客で繰り返すのですから、売るほど赤字が溜まります。一件しか売れなくても維持コストだけは累積していきます。「これなら、いっそ、一本も売れない方が良かった。」と思う企画マンなら合格ラインですが、多くは、同じことを繰り返します。(我々は、これを下手のパチンコと呼びます。出ないと言って、台を変えてばかりということです。)金融商品も同じです。オンライン・プログラムの内、売れなかった商品用が何十%を占めているでしょう。

最近のITベンダーは、すぐにオンデマンドを提案します。オンデマンドの定義すらせずに、連呼することがあります。ただ、このコンセプトは金融商品でも使えるので、良く研究すべきでしょう。米国発が多いのですが、ITベンダーはジャーゴン作りの天才です。最近では、SOX法やSOA、ユビキタスなども流行らせようとしています。関連ジャーナリズムも有力な顧客層であるITベンダーの為に、応援記事を連載します。これを見ると、企業側IT部門も、何かしておかないと責任を問われると思うのでしょう。SOX法対応のセミナーだと聞いて参加したが、電子帳票製品の紹介だったというような話は、もはや笑えないほど日常的になりました。ただし、ジャーゴンの全てが悪いとは言えません。時代的必要性や技術的理論的裏付けはあるのです。ベンダーが箱売りに使ってしまうので、イメージが悪いだけです。情報産業でもある金融機関は、インフォメーション・エンジニアリングを勉強するか、その方面の専門家を活用すべきです。特に商品開発部門では。前提として、マーケテイングが必要なのは言うまでもありません。