銀行代理店(法人向け融資の認可条件)


金融庁は、新代理店制度の内閣布令案のパブコメを開始しました。これに先だち2月15日に自民党の財務金融部会・金融調査会の合同部会で討議されましたが、決着がつかず16日深夜までの調整を経て、17日の合同部会でかろうじて承認されました。この間の推移を金融経済新聞平成18年2月27日号が報道しています。

議論が紛糾したのは、法人向け融資の認可についてです。当初案では禁止とされていましたが、昨年半ばに、規格化された貸付商品であれば個人向けローンと同じではないかということで、条件付で法人向けも認められることになっていました。これに信金業界が強く反発したようです。最後は、信金の会員以外への貸し付け上限額700万円を参考に、1千万円を上限として調整されたようです。それまでは5千万上限とされていましたので、メガや地銀などの法人向け代理店戦略に影響を与えるかも知れません。もっとも、新規融資だけ代理店経由にして追加分は銀行が直接行えばよいので問題ないとも言えますが。

規格化された貸付商品とは、次のように定義されています。「借入希望者に関する財務情報の機械的処理のみにより、貸付の可否および貸付条件が設定されることが予め決められている貸付商品」です。要するにオートスコアリングだけで審査・実行することなのでしょう。普通は怖くて出来ません。会計士など信頼できる代理店に、事前の信用判断をしてもらう必要があります。

もう一つの議論は、媒介に関してです。これまで媒介とは、勧誘はするが契約行為は委託元が行うものと理解されていました。取次は、勧誘をしないで顧客の要望に応じて販売元に紹介するだけです。媒介と取次では法律的に大きな差がありますが、実態はパンフレットを渡すだけなら良いだろうとか垣根が明確でありません。住宅販売会社で、銀行ローンを紹介してもらうのは取次と考えられています。ですから規制外でした。

今回は、媒介についても定義されています。「契約締結の前段階として、他人の間に立って、他人を当事者とする契約の成立に尽力する行為」であり、具体的には。当事者の特定に関与する。両者に直接働きかけ、両者がその働きかけを認識している。両者の間で法律行為が直接成立しうる状況に置く。の三要件を満たす場合とされています。結果として、不動産業者の住宅ローン紹介や税理士が事業性ローンを紹介する行為は、媒介に該当する可能性が出てきました。つまり、銀行代理業者として金融庁の認可が必要になるというのです。

こうなると新代理店制度は、規制緩和ではあるが金融庁の管轄範囲が広がるということになるようです。まさか、初年度500件と見こんでいる代理業申請件数を達成するのが目的ではないでしょう。最終的な結果責任は銀行がとるのだから、どちらでも良いではないかと思いますが。これで500件を軽く越えるか、殆ど申請がないということになるでしょう。

信金業界の気持も判らないではないのですが、規制を使って自分のビジネスを守ろうとすれば、やがては自分を縛るだけのことになります。代理店を通じた大手銀行のスコアリング融資と若干の金利差だけを理由として顧客を奪われるとすれば、ビジネス価値がその程度ということです。この方が大問題で、改革しない限り自滅の道となってしまいます。折角の会員制度と地域密着、顧客密着という強みを活かしていないことを意味します。そのニーズがないというなら、協同組織の金融機関は時代的役割を終えたということで、普銀転換を図る方が良いでしょう。果たしてそうなのか。筆者は、まだまだ信金の役割があると思うのですが。競争相手の得意分野に自らのめっているように見えます。

金融庁は、金融改革プログラムという大きなスケッチを描いて、規制制度を修正しています。当然、利害の反するグループが出てきます。今回だけでなく、保険窓販でもそうでした。反対者は、具体的な事例をもって弊害を強調します。政治家は、これに乗って存在を示そうとします。とりあえずは中間をとって、様子を見ながら適宜見なおすというのが妥協点となります。大きな構想は、こうして崩れていきます。企業改革と全く同じだと痛感しますが、その点、官僚は粘り強くて、あきらめずに引き継いでいきます。

ITも同様ですが、白地に大きな絵を書くのは夢のある楽しい仕事です。実現可能性のある実行計画を立てるのは大変ですが、まだ、夢が残っています。最も大変なのは実行の際の変革管理です。この段階こそ、コンサルなど外部専門家を活用すべきところです。経験に基づく中立的な利害調整が必要だからです。しかし、多くの企画マンや外部専門家は、絵だけ書いて消えてしまいます。金融庁はどうでしょう。大きな絵をどこまで実現させるでしょうか?あと2年で結果が見えます。