銀行代理店(金融庁が政省令案を作成)


日経新聞平成18年2月14日夕刊の記事です。金融庁は4月施行予定の改正銀行代理店制度に関する内閣府令案を作成したということです。翌15日開催の自民党財金部会に提出予定の資料を入手したのでしょう。部会承認後、パブコメ募集となります。昨年末に案を作成し、パブコメ等を経て2月一杯で確定する予定でしたが、1月中旬となり更に2月10日頃と遅延していました。理由は、様々な代理店形態や業務が考えられるものの、具体的に詰めている銀行や事業会社がないので、制度をどうしたら良いのか見極めきれなかったのだと思います。もともと金融庁は、最初から細かい具体的なことまで決められるわけがなく、実状に合わせて制度を手直しするというスタンスでした。それは、全く正しい考えですが、いかんせん、参入希望者が少ないということが頭の痛い問題のようです。申請するのは郵政の局会社だけというのでは立場をなくします。この改正が郵貯民営化の為だったことになってしまいます。一時、参入を噂された旅行会社なども冷めてしまったと聞きます。当面は、業態間代理で金融界の内輪の話となりそうです。

参入にあたっての資本条件は純資産で法人代理店500万円以上、個人で300万円以上と昨年から言われていた通りです。個人ローンはほぼ全面解禁です。法人向け融資は、定型ローンか預金国債担保融資にとどめるということです。特段新しい情報はなく、金融財政事情1月23日号の方が詳しい内容が掲載されています。また、記事ではセブン銀行の参入計画を紹介していますが、聞くところでは、セブンが参入するのは大分先のようです。ここに、準備や業務遂行上の負担に比べて、収益が見こめないという実態が見えると思います。

先週、第二地銀協が「銀行代理業制度の活用策」という45ページに渡る報告書をまとめました。単純な代理委託ではなく、当制度を前提としたビジネスモデルを構築した上でないと代理店の前向きな活用は難しいとしています。参考例として6つのモデルを例示しているそうです。しかし、第二地銀関係者の話では、活用分野が見つけられなかったのだが、そう結論付けると金融庁の機嫌を損ねる恐れありとして、ビジネスモデル次第と論点を外したそうです。金融庁としては何とか実績を作りたいようで、知人の銀行員や事業会社などにヒアリングと称したお知恵拝借活動を続けているそうです。単純な代理店モデルでは誰にもメリットがなく、少しアレンジすると複雑で大げさなモデルとなってしまいます。どちらも経営の承認を得ることができません。賢い銀行は、ビジネスモデル特許を狙いながら一見単純で、実は長期的な進化シナリオに基づく展開を考えます。経営層には難解な説明をせずに単純モデルだけで承認を得て、あとは実績ベースというストーリーです。

大手銀行や地銀の方々と話しても、否定的な見解が圧倒的です。既存業務を代理店化しても商売が広がるわけではない、地銀にはメガのような新商品開発力はない、規模のメリットもない・・・ないないずくしで、代理店を使っても自分の足を食うだけという考えです。筆者は、「だから、代理店が重要なのでしょう。規模のメリットや開発力の不足を代理店で補完したら良い。何もしなければ、それまでです。100%確実なビジネスなんてないでしょう。」と言うのですが、銀行員の皆さんに聞く耳はありません。この徹底したネガティブ思考は、凄い産業文化だと改めて感心します。こうなると、速くて賢くてブランドのある企業が代理店となって、銀行を振り廻すようなストーリーが必要なようです。委託元銀行は、普通銀行であれば規模は関係ありません。免許だけあれば良いでしょう。業務処理システムは、代理業者が自前のものを作ります。複数の委託元銀行には、このシステムに合わせてもらいます。気がつくと、免許のない代理業者が実質的に銀行を支配し、特色ある商品や顧客基盤などコンピテンシーのない銀行は、見捨てられます。代理業者は、銀行の代理でなく、顧客の代理に徹するのです。こう書くと銀行の方は、「どこか具体的なケースがあるのか?」「成功事例はあるのか?」と来るでしょう。銀行が代理店戦略を成功させるには、商品開発力でも規模でもなく、市場情報収集力、独創性、リスク許容力、決断力、実行力を創ることから始めなくてはならないようです。

ITベンダーは、窓口端末を設置すれば良いなどと単純なことを言ってはいけません。顧客銀行のビジネス・ソリューションを提供しないと顧客が消えます。逆の視点で、代理業によって銀行ビジネス参入を図る代理業者に、銀行システムをASPやBPOで提供するビジネスもあるでしょう。顧客銀行からは恨まれますが、銀行IT市場のシェア割をリセットすることが出来るかもしれません。

(注)代理業者は法人・個人の単位で、金融庁から許可を得ます。保有する拠点のうち、銀行代理業務を提供するのが代理店となります。当稿では極力使いわけましたが、判り易くするために、一部混同して代理店と称しています。