モバイル・バンキング(大手銀行やネット証券)


日経金融平成17年12月26日の記事です。ケータイ金融が普及しているという内容です。

ネット証券では、株の注文だけでなく口座開設を可能としたり、市況情報をリアルタイムで提供しています。松井証券の携帯口座数は1540に達したそうです。(正直に言えば、余り多いという印象ではありませんが)携帯電話の画面やキーの小さいという難点があるものの、時間勝負のサービスが評価されているということでしょう。

UFJの携帯による個人ローン・サービスやBTM,SMBの携帯バンキングも紹介されています。カード偽造犯罪対策でATMの口座凍結や利用金額変更などのサービスも除々に使われ出したようです。

mバンキングの先進は、やはりネット専業銀行でしょう。イーバンクやJNBでは単に決済だけでなく、totoや競馬競輪競艇などと提携して、投票券の購入精算など様々なアイディア・サービスを提供しています。その上、手数料を割引きます。ネットショッピングやネット配信などとの提携も拡大一途です。

携帯電話を金融サービスに適用する場合は、いくつかの問題点があります。

第1は、操作性です。しかし、ユーザーが慣れてくるに従って、この問題は軽減しています。昨今では、電車等での親指族に中高年が増えました。QRコードをうまく使えば、入力負担は更に減るでしょう。やがては、音声認識なども可能となります。モニターも随分と改善されています。研究開発が進んでいるペーパー・ディスプレーが実用化すれば、画面の問題も解決します。携帯を電話と考えないで、モバイルPCやテレビとの一体メディアと捉える時代が近いでしょう。何という名称になるかが楽しみです。ノキアやサムソンの日本参入がその動きを加速させる筈です。

第2は、利用者層です。若年層が中心なので、小口取引が中心と思われてきました。ところが、NTTが公衆電話を撤去し続けたこともありますが、高齢者にも普及が始まっています。最終的には成年総人口の80%くらいにまで普及するでしょう。(どんなサービスでも、どうしても20%前後の非利用者が出ます。その対応が公益企業にとって大きな負担になるのですが)実際、家庭に固定電話のない世帯が増えているそうです。電話は家やオフィスの共用通信手段ではなく、個人の通信手段となりつつあります。

第3は、通話料金です。一回につき30円を払って、更に銀行に200円の手数料を払いながら、2千円のチケットを購入するかといった問題です。恐らく通話料金は、コンテンツに含まれるようになるでしょう。または、定額料金サービスとなります。銀行や証券会社の中には、優良顧客の定額通話料を全額負担するようなところも出てくるでしょう。現在の定額料金水準は月額1万円ですので、仮に8千万人とすれば、年間9兆6千億円の市場です。実際には、その半分以下に値下がりするでしょうから、キャリアは儲かりません。当然、コンテンツ・ビジネスに向わざるをえなくなります。銀行業にも入ってくるでしょう。技術革新と並んで価格戦略の影響が極めて重要ですので、応用する側はウォッチが大切です。

第4は、セキュリティです。技術専門家や海外からのニュースでは、携帯のセキュリティは穴だらけと聞いてきました。筆者もFOMAを使っていますが、指紋認証(簡単なものでしょうが)で多少はセキュリティ・レベルが上がるかと思う程度でした。先日、ドコモの方々と話をする機会があり、専らセキュリティに関して聞きました。想像をはるかに超えてセキュリティが充実しています。購入時の本人確認だけでなく、料金引落の銀行口座も厳しく本人確認されています。何かあれば、即座に利用を止められます。加えて暗証番号を数段階に渡って入力しないと利用できないサービスなど。必要な場合は、使用している場所を特定することもできます。問題は、暗号化されていない無線部分での盗聴等ということになりますが、これも順次手当てされていくことでしょう。オンライン・アプリ(ドコモのiアプリ等)と埋めこみチップにセキュリティ対策を組み合せれば、5重6重のチェックをかいくぐる必要があります。また、データを搾取しようとすれば、極めて高額な機器が必要となります。大手企業のような資本力と技術力がなくては、犯罪者が立ち入るポイントがありません。あとは、ネット詐欺のような利用者の錯誤を狙った犯罪行為への対応策を積み上げていくことになります。

携帯電話、PC、テレビ、カメラ、ビデオ、オーディオ、ICカード等々が融合したメディアは、様々な新商品・サービスを創造していくでしょう。金融機関が考えるべきことは、顧客側の利便につきます。顧客リーズに従っていては、創造はありえません。テクノロジー・ドリブンで顧客ニーズを掘り起こし、創造するマーケティングが必要です。その態勢をいかに構築するか。

もう一点は、ネット取引が、クリックアンドチェンジという極めて流動性の高い世界だということです。顧客ロイヤリティを強化する仕組みをどうするか。ATMやネット取引で、顧客接点は希薄化する一方です。その流れは、代理店によって更に進むでしょう。ネット上での価格やサービスによる差別化を図るとともに、対面チャネルの再構築が必要となります。何をすれば良いかは、顧客にも判りません。試行錯誤の積み重ねしか解決策はありませんが、常に満点狙いの金融業文化が阻害します。これからのIT戦略は、ビジネス・マネジメントとマーケティングといかに適合させるかが勝負となります。