日経金融 13/7/12

金融グループのIT会社
UFJグループが関連のIT会社を統合して3000人規模のIT事業会社を作るという記事である。
記者は、社員の数の多さとカバーする金融業務の広さに競争力があるという論調で書いている。
記事対象のユーフイット社のことを筆者は殆ど知らないが、これまで数多くの金融関連
IT会社を見てきたので、一般論として経営上の課題をあげてみたい。この、課題解決なくして、我国金融機関のITパワーアップはないと考えるからである。

1.    独立事業会社としてのビジネス・システムが未整備である。

親会社から安定した収入が確保でき、その範囲内で決められた業務を開発・維持(特に維持費用が大きい)していれば良いので、提案力、営業力、生産性、社員モラール等に大きな問題を抱えている。経営者がITビジネスを理解していないケースがあり、この場合の企業コンピタンスの欠如は厳しいものがある。

2.    先進的ITスキルが不足している。

先進技術の研究はするが、実システムに搭載するのに長期間を要し、結果として実用化に至らないことが多い。また、実績重視の技術採用であり、急速に変革する技術革新についていけてない。

3.    高コスト体質からの脱却が困難である。

親会社からの出向・転籍者の多くが、間接業務を担当し、結果として間接コストを上げている。また、金融機関本体に準じた、給与水準・設備施設・福利厚生制度等の費用も膨大となり、一般IT会社の人月コストの2倍以上というケースが少なくない。

4.    最新業務分野を理解する要員が不足している。

30年以上も基幹業務至上主義と国内金融機関同士の横並び的競争を続けてきており、先進的業務分野は、ユーザー部門が独自に開発・運営することが多かった為、新規業務分野の一級の知識を持つ人材は極めて少ない。また、そのような人材を育成・支援する仕掛けはない。

5.    既存の基幹システムの制約が大きい。

ミッション・クリテイカルな業務を社内ユーザーを対象として、100%正しく、出来る限りの例外処理対応を取り込み、障害を起こさず、秒当り数百件を処理し、2千万前後の顧客管理を行い、外部との接続は特殊な業界標準を使うので、新規業務対応が非常に難しくなっている。対応する場合でも、一般事業会社の常識では想像出来ない程の、時間と費用を要する。

主だった課題だけで、以上のようなことがあげられる。一般IT企業からすれば、この状態で良く続けて来たものだと思うのだろうが、その下請けに入れば、これほど魅力的な顧客はない。これらの課題の解決なくして、社員規模を拡大することの恐ろしさは充分に認識しておく必要がある。

念の為に申し沿えると、グループ内ユーザー企業からすれば、それでもグループ内IT会社に委託する安心感と確実性があったのである。ただ、昨今の環境は、グループ内といえども、ユーザー会社の目を急速に厳しいものにしている。