電子マネー(郵貯がチャージ・サービス)


郵政公社は、民営化される郵便貯金銀行のATM2万6500台の内、約1万3千台を改造して、エディやスイカなど電子マネーのチャージ・サービスを計画しているそうです。チャージ金額の0.3〜0.5%とされる手数料を電子マネー発行会社から受け取るビジネスを考えているということです。ニッキン平成17年11月18日号の記事です。

エディの取扱い金額は、現在500億円弱と言われていますが、採算ラインの7500億円に到達するのは難しくないと思われています。主な電子マネー発行体はビットワレットとJR東日本ですが、それにNTTドコモがおサイフケータイで参入予定です。JCBもクイックマネーの普及を急いでおり、数年後には2兆円市場になると思われます。そのチャージの半分を第三者が提供するとして手数料は30〜50億円ですので、郵貯銀行がシェア50%を握れれば15〜25億円となります。ATM改造費を1台10万円として13億円ですから、元を取ることは可能でしょう。かなり楽観的な計算ですが。また、2007年10月に分社民営化された後の2009年から開始するということですので、それまで現在の電子マネー・ビジネスモデルが続いているか、急速な技術革新と会わせて考えると、予断を許しません。更に、貯金銀行がその気であっても、その代理店となる筈の郵便局会社(一般事業会社)が応じてくれるのか?ATMの所有者は誰になるのかも確定していません。

ただ、別の視点から見ると、郵政公社は重要なポイントを狙っているとも考えられます。キャッシュ・カードと電子マネーを一体化することで、個人のメイン・カードというポジションを得ようとすることです。以前に言いましたように、流れとしてはキャッシュ・カード、クレジット、電子マネー(カード、ネット、プリペイ、ポストペイ)が一体化しつつあります。安全性や利便性などから1枚だけになることはありませんが、個人の持ち歩くカードは現在の数枚から、1枚プラス携帯電話とになるでしょう。その受け皿となるかならないかは、リテール戦略の成否を握ります。また、郵貯が強い地方において、地域金融の雄である地方銀行が、メガ・バンクや郵貯のような全国展開の巨大ライバルに対して優位性を確保するための至上命題でもあります。決済は銀行の固有業務だなどと宗教論争をやっている暇はありません。顧客と技術のスピードに負けていては、とても生き残れません。

筆者が電子マネーの実用性に懐疑的だったことは以前に言いました。モンデックスなどの試みは失敗すると断言したものです。それがフェリカによって変わりました。今ではViewスイカが最も使用頻度の高いカードですし、おサイフケータイを使うために携帯電話を買い替えるようになってしまいました。確かに便利です。ただ、セキュリティに確信が持てないので、預金口座やクレジットとは分断しています。最近、NTTドコモやフェリカ関係の方々から、セキュリティ対策や今後のサービス展開計画などを聞く機会がありました。五重六重にセキュリティ対策が施されています。それでも技術的には破られる可能性はあります。しかし、破るためには相当な資本が必要です。つまり、金と技術が不可欠なので、通常の犯罪者集団では採算が合わないことになります。完全な装置産業です。偽札や偽カードとは根本で異なる点です。

更に、一見オフラインに見えるカードも、実はオンラインで残数管理されています。購入者登録がしてあるカードや携帯(この場合の本人確認は極めて厳しい)ですと、所有者の利用履歴すら把握できます。即座に使用を止めることもできるでしょう。その意味では、現金を財布に入れて持ち歩くよりも安全です。問題は匿名性がなくなることです。カード発行会社の個人情報管理には、厳重な対応が要求されます。この点の制度化は進んでおりません。規制を受ける前に、発行会社が手を打つべきでしょう。

電子マネーには、カードや端末機への投資以外にも、残数管理やキャッシュ管理、運営参加者間の手数料管理など複雑なノウハウと大規模な投資が必要です。それを回収するビジネス・モデルと電子マネーとリアル・ビジネスの相乗効果を追求することが必要です。一度、覇権を握れば簡単には他に破られない基盤を確保できます。この分野を銀行でなく、他業態の企業がリードしていることは、銀行が情けないと言うべきか、他業態だから出来ることと考えるべきか。メガ・バンクの電子マネーとの提携発表が続いていますが、果たしてどんなポジショニングが出来るのか興味深いテーマです。