銀行代理店(自民党の合同部会)



平成17年9月29日に自民党が了承した銀行法改正案が急速に注目を浴びています。地銀以下の各業態では協会の役員会などで議題となっているそうです。影響を読み切れないこともあるのか、メガバンクによる地方進出の手段となることを怖れる声が多いと聞いています。国会や行政当局に強い金融経済新聞が10月10日号で、自民党部会での議論を紹介しています。

金融庁としては、欧州の代理店制度をわが国にも採用するという理由付けをしていますが、地方銀行協会が、長い間、要望してきたということも規制緩和の大きな理由です。要望をはるかに超える緩和内容なので、要求した地銀自体が戸惑っているという構図です。本音と建前を使い分けるという産業文化が、金融庁によって揺さぶられていると見ることもできます。

郵貯窓口ネットワーク会社がメガの代理店となれば、メガの商品開発力をバックとした郵貯との競合銀行が大きな打撃を受ける可能性があると心配する向きがあります。また、メガと信金・信組が提携することで、中小企業融資分野の競争原理が根本から変わる可能性や、メガが地場小売チェーンを代理店化したり、ハウジング・メーカーと組むことで個人ローンを根こそぎ持っていくと心配する地銀もあります。

筆者は、その程度で市場を取られるとすれば、もともと競争力というか存在価値がないことを意味しているのでは?と嫌味な台詞を吐く一方で、地域シェア40%以上を確保していれば提携先を選び放題なので、むしろ飛躍の機会だと言います。まさに、地域経済・社会でのレゾンデートルを強化する格好の機会であり、無為に過ごして攻められるだけであれば、それまでの存在とあきらめるしかありません。優秀な地域銀行マンであれば、独立してメガなどの代理店となっても、充分にやっていける筈です。他業態からの代理店に負ける程度では仕方ありません。

地域金融機関の経営計画を見ると、地域貢献を通じた収益力強化とリスク管理力強化が謳われています。具体的施策となると、どこも大同小異です。手数料収益は地域金融機関とは馴染まないと考えていますし、余資を有価証券などで運用する力のある銀行は希です。融資分野の新規開拓・強化と手数料収益を得るためのビジネス・モデルが必要なのですが。ところが、営業店の業績評価項目を見ると、あいかわらず預金増加と新規口座獲得です。よくてクレジット・カードです。企業も個人も、もう新しい口座もカードも要りません。銀行としても預金は要らない筈です。断りたいくらいだと思います。マネーフローが根本から変わっているのに、ビジネス・モデルを修正する気がないのは、自殺行為と言うか茹でガエルとなります。

郵貯は、さまざまな手段工夫を凝らして、収益源を確保しようとするでしょう。信用金庫もますます大同団結して、資産規模1兆円規模の金庫が続出するでしょう。メガも3大体制です。13行時代のように、地域金融機関が複数都銀を天秤にかけることはできなくなります。各メガとの敵味方関係を明確にせざるをえません。所属する協会を頼っても無駄でしょう。自立するには、圧倒的に強い地盤を持つしかありません。それが、シェア40%以上ということです。(できれば50%)

注力するセグメントを決めて、それに合わせたビジネス・モデルと必要な経営要素・資源を設計することが第一です。余計な調査や資料作りをしなければ、1ヶ月もあればできるでしょう。その際に、競争相手は誰で、提携先が誰にするかが商品力、デリバリー力の決め手となります。自分が代理店となる場合と他社を代理店とする場合のメリット・デメリットと実現方法を具体化しなくてはなりません。ビジネス・チャンスに結びつくほどのケースは少ないとの考えもあるようですが、それは視点と継続的実行力と変化対応力次第だと思います。思いつきや安易な代理店であれば、止めておくべきです。

共同出資による代理店という構想もあるようです。面白いのですが、果たしてどのような効果を期待できるのでしょうか。大規模小売店だけでなく、運送会社、警備会社、不動産業者、建設業者、学校、病院、税理士などが代理店候補として上げられています。銀行の都合だけで、代理店になってくれる企業はありません。許可制ですから、何かあれば即座に認可取消し命令が出るでしょう。代理店側のマイナス・インパクトは甚大なものになります。その危険性は銀行が補完しなくてはなりません。

金融庁は、初年度の参入代理店社数を500社前後と想定して、許認可審査と検査を担当する専門官を本庁と財務局とで、あわせて25名配置するそうです。一人20社ですから、これまでのような事前規制は不可能です。事後規制による結果責任の追究ということになります。コンプライアンス体制、堅確な事務遂行能力、適切な販売支援と研修体制整備などが不可欠です。(順番を間違えないことです。)それを今から半年程度で確立できる銀行が多いとは思えません。ITベンダーの方も、業務要件すら理解できていないのが実状ではないでしょうか?拙速は危険に過ぎますが、後手に廻ると取り返しがつかなくなります。全体シナリオから外れない範囲で試行錯誤を積み上げるしかありません。従来の100点経営から80点経営へと変革することが必要なのでしょう。