システム統合プロジェクト・リスク(東京三菱・UFJ)


マスコミ各社の間で、東京三菱・UFJ(以下MUFG)の合併に向けたシステム統合に関する取材合戦が行われています。

朝日新聞、週刊ダイヤモンド、産経新聞などが、金融庁による準備不足指摘を大きく報道しながら、みずほ銀行統合時の混乱再現を連想させるような記事を書いています。一方で、日経コンピュータは、「現時点ではほぼ計画通りに作業が進んでいるが、金融庁からのテスト・リハーサル不足の指摘を受けて計画見直しを行った。」という記事もあります。

平成17年7月16日付け日経では、予定通りに進捗という銀行側見解を紹介しつつも、大規模障害発生による利用者不便や国際的レピュテーショナル・リスクを恐れる金融庁が統合認可を出さない可能性もあると報道しています。そして、両行内で、持株会社等の合併は予定通りとするが銀行の合併は3ヶ月延期するという案も出ているとしています。

マスコミ各社は、銀行や金融庁を取材しても何が本当なのか戸惑っており、問題ないと報道して大障害が起これば困るし、大きな問題もないのに徒に不安を煽るのも良心が咎めるといった姿勢です。そもそも、銀行オンライン・システムを全く知らないだけでなく、大規模プロジェクトの管理方法も知らない立場の記者が、公正・正確な取材ができるわけがないのですが。筆者の所にも「MUFGのシステム統合は大丈夫だろうか?」という取材が増えています。筆者は、「危ないという情報は特にない。プロジェクトだから当然リスクはあるが、両行ともに経験済みのことであり、何が必要で、どこにリスクがあるかは判っている筈。無茶はしませんよ。マスコミ諸兄は、トラブルが起きた方が有り難いのでしょうが。危ない危ないと言っておけば、何かあっても、我々はずっと指摘してきたとアリバイになりますよね。何も起こらなければ、我々の指摘で銀行側が計画を修正したからと言いたいのでしょ?」と嫌みを言います。そもそも、記者の質問から判断すれば、彼等は、RC接続(今回はFP接続)と片寄せと新システム開発の区別もしていません。筆者の「BTMとUFJのATMは既に手数料無料の相互接続が出来ているではないか。それが、10月1日からどう変わるのか?」「総振などでも合併から半年は旧銀行コードを使えるように全銀はできているし、ましてやその日は土曜日で、4月1日という年度替えとはデータ量も全然違うのですよ。」という指摘に、その意味の判らない記者もいます。要は危ないという記事を書きたいだけに思える時があります。

朝日・ダイヤモンド・産経などの記事内容は、ほぼ同じです。ニュースソースは一ヶ所なのでしょう。それが誰かは容易に想像できます。少なくとも銀行の当事者に、まともに取材している内容には思えません。銀行側関係者は、余計な憶測を呼ぶようなことは一切発言していません。むしろ、ディ2作業に意識を向ける余裕を感じます。また、これほどの大規模プロジェクトですから、数多くのベンダー社員が動員されています。彼等は、部分的作業を委託されているだけですが、進捗状態は雰囲気で判ります。そのベンダー達からも、困惑や不安を示す話は出ていません。プロジェクトにリスクはつきものですから、100%を保証する人はいませんが、静かに作業が進められていることは確かです。現在のわが国で、トップクラスの技術者集団が運営しているプロジェクトでもあり、外部の素人がいい加減な口出しをする話でありません。

統合プロジェクトでは、ソフトやハードだけでなく、運営体制の変更や移行データの搬送、顧客とのデータや帳票のやり取りなどに数多くのリスクがあります。それを全店一斉に移行するのですからトラブルが起きないはずはありません。UFJや三井住友の統合時にも多少のトラブルが発生しました。実害というほどのことはなかったでしょう。当時、マスコミの取材に応じて被害の大きさを訴えた利用者達に現在の感想を聞いてみたいものです。ところが、大きく取り上げられたことで社内処分が行われました。それによる人材喪失はとても痛いものでした。要は程度の問題の筈ですが、金融庁やマスコミはトラブル・ゼロを求めます。支援するわけでも責任を取る訳でもない非当事者が、勝手に成功条件のハードルを上げながら、経営のガバナンスを求めることに違和感を持つのは筆者だけでしょうか?

両行の経営者・プロジェクトチームは、考えられる限りの状況を想定して、それに対応する施策を考えているでしょう。徒に不安を煽ったり、作業を邪魔するようなことはせずに、利用者は自分でできるサポート(当日は取引を控えるとか、テスト・データを提供するとかもありますが、少なくとも銀行側案内を良く読んで、取引手順の変更に素直に対応するなど)を行うことです。大障害が起きて喜ぶのは、ごく一部の人間だけなのですから。