中小企業融資(みずほ銀行が機械設備担保融資)


銀行の中小企業向け融資が見なおされています。資金運用に悩む金融機関の側からすれば、数年前からこの貸出市場は有望分野とされていますが、ノウハウや採算性を確保する仕組みができていないというのが実状です。大企業、中堅企業、中小企業、零細・事業性個人といった法人融資顧客層は、都銀・地銀から商工ローンにいたる各業態が暗黙裏にかつ歴史的にすみわけしてきました。それを政府系金融機関などの公的融資が政策目的で資金供与を行なうという構図が崩れつつあります。現在は、さまざまな試行錯誤が行なわれているという段階でしょう。

平成17年6月20日付け日経に、地方における中小企業が、地縁を活かして無担保私募債や商工会議所による会員紹介制度などの新しい調達手段を取り入れているという記事がありました。私募債などは昔から長期融資の代替手段として認識されていましたが、マーケットを構築するまでに至っていませんでした。制度的に規制緩和され、今日では50人未満の購入者で調達額一億円未満であれば、簡単に発行できます。まさに、直接金融化の象徴みたいなものです。信用情報に関する非対称性を補完するためには、地縁や人縁などが前提となります。

同日付けの金融経済新聞には、新銀行東京における信用金庫との協調融資が、もたついているという記事がありました。新銀行は、大々的に先行PRしているが、受入れ態勢ができていない信金側が、申し込み者の怒りを買うケースが出ているということです。信金側の受入れ態勢が整備できていない原因は、手続き的なことよりも融資条件にあるようです。中小企業のニーズに応じた融資というのが新銀行の謳い文句ですが、実際にはリスクを考えて、様々な条件がついています。落着いて考えれば、何も新銀行に廻して高い保証料を払うより、自分でプロパー融資した方が、自分にも顧客にも有利なことが多いと気付いたようです。新銀行には銀行出身の中途採用や信金などからの出向者がいますが、だからといってパートナーである信用金庫の都合や顧客ニーズを踏まえた融資のビジネス・モデルが出来ることとは別です。都の威光(権力)と政策(宣伝文句)に已む無く付合っているが、実態を知らない新銀行幹部に振りまわされているという構図でしょうか?パートナーシップの基本を理解するお役人は稀有でしょう。金融機関も、今後の重要な戦略的ツールであるパートナリングに関する認識は皆無ですが。

6月21日付けの日経に、みずほ銀行がリース会社と組んで、機械設備を担保とした運転資金融資制度を開発したという記事がありました。今秋に創設される予定の動産登記制度を活用する仕組みです。グループのリース会社が経験を活かして機械設備を評価の上で銀行に対して債務保証をするというモデルです。登記に裏付けられた担保ですので権利関係は明確で、時価評価さえ正確にできれば銀行としても融資条件を成立させることが容易です。担保保証料と貸出金利を合わせても、従来の無担保融資よりは大幅に低金利になるそうです。

地方銀行や都市銀行が中小企業向け運転資金融資のノウハウが無いと嘆きます。私は、「商工ローンの真似をしても無理です。御行が個人向けフリーローンで消費者金融に勝てないのと同じで、ノウハウも文化も違いすぎます。折角リースという良い道具があるのですから、それと組みあわせることから始めたらいかがです?それでなければ、商工ローン会社を買うことです。」と答えるのですが、銀行員でリース業務の実態を知る人が殆どいません。リース会社によっては、大変なノウハウと情報を蓄積しているところがありますが、銀行系リース会社の多くは、客待ち営業でリース物件の管理すらまともに出来ていないところが多いのです。みずほグループの東京リースなどは、銀行系としては特殊なケースでしょう。

冒頭に言いましたように、中小企業向け貸出業務は、銀行にとって残された数少ない有望市場です。他行の成功事例を単純に真似しても成功しないでしょう。初期審査、途上審査、担保管理、回収実務、債権処理といった一連の業務プロセスで、リスク管理と収益性を確保しながら、顧客メリットのある仕組みを考え出すことが必要です。恐らく、信用金庫単独やお役人銀行にはできないモデルになるでしょう。パートナーシップ管理も重要です。大手ITベンダーには代理店支援管理専門部隊がありますが、銀行にはパートナー営業部のようなものは存在しません。全てグループ内関係会社との上下関係で天動説的協業を展開しようとします。まずは失敗します。

ITに関していえば、第一は担保物権の評価管理システムが不可欠です。当然、登記制度との連動も必要となります。担保物権のセカンダリーマーケットも必要になります。それは、貿易金融に繋がることが多いでしょう。機械設備メーカーの保守サービスとの連携も必要です。全体のバリューチェーンをスケッチして、必要なプロセスと情報を定義し、それをEDIやECに載せることになります。その際に、Webサービスやナレッジマネジメントが有効なツールになるでしょう。ICタグやイメージ処理もインフラ技術として使うことになります。ただし、最初から大きく展開しようとしても銀行経営者が理解できないかもしれません。大きな絵を書いて、段階的に進化させるシナリオが必要となります。