ブランド戦略(IYバンクがセブン銀行に社名変更)とアーキテクチャ


平成17年6月4日付け日経に、IYバンク銀行が10月11日からセブン銀行に社名変更するという記事がありました。小さな扱いですが、いかにも異業種から参入した銀行で、社名を変更することにさしたる違和感がないようです。既成銀行では安定性と継続性を重視しますので、ようやく定着してきた銀行名を簡単に変えることはしないでしょう。看板や伝票を変え、顧客に通知するだけでも大変なコストと、その過程で様々なトラブルが起こりますし。

新規設立企業にとっては、そのライフサイクルに応じて社名を変えることは極めて重要なブランド戦略です。IYグループにおいては、銀行といえども定石の企業戦略を適用するのが当り前ということでしょう。筆者も正しい考え方だと思います。

IYバンクによれば、社名変更をする理由は、9月1日付けで親会社が持ち株会社化し、その社名をセブン&アイ・ホールディングスとなるので、これを機会により判りやすく、かつスピード感あるイメージを打ち出したいということです。筆者にはウルトラ・セブンのイメージが強いのですが、専門家が高額な対価で考えたのでしょうし、やがては馴染むのでしょう。また、IYバンクの顧客は、一般預金者というよりは既存銀行ですから、どちらでも良いと言えるかも知れません。

これからの銀行は、頻繁に合併したり分割したりするでしょう。それだけでなく、提携や合弁、さらにはコンソーシァム方式での共同事業で組織形態が複雑多岐になります。都度、商品や提携グループに名前をつけることになります。やがては、銀行単独、共同事業、他社へのOEM提供などなどで、商品、ビジネスラインが混在してきます。価格戦略も混乱するでしょう。

一方で、自社独自の企業イメージと機能・コンピテンシーを持たなければ、その存在感がなくなってしまいます。最近の個人向け金融商品は、特化型化しています。販売提携の場合に、提携先である一般事業会社の本業に合わせた商品設計と商品名をつけることが増えています。特に、損保商品にその傾向が見られます。来年には導入が予定される銀行代理店制度では、この傾向がますます強まるでしょう。代理店が利子の替わりに本業商品を優遇提供することもあるでしょう。地域限定、期間限定、客層限定といった販売方法も出てくるでしょう。

こうなると、金融機関の商品戦略は、従来の金額・期間・利回り・リスク・流動性だけで管理できなくなります。まさに、大手小売業や先進的製造業が行なう商品戦略・管理と顧客管理が必要となります。つまり、金融機関にも、ブランド戦略(マーケティングの真髄)とSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)とABC(アクティビティ・ベイスト・コスティング)とCRM(最近はダイナミックCRMという数理を活用したリアルタイム個客管理が唱えられています)が、金融のフロントを支えることになります。銀行によっては、「ウチは、以前から実行している。」と言うでしょう。そういう銀行で、本当に出来ていた例を見たことがありません。判っていないか、やりたくないかのどちらかです。後者が多いのが実態ですが。

新しいフロント・システムは、コンプラ・チェックや本人確認・取引意思確認などのミドルライン・オペレーションとの多様な連携が必要です。口座管理や顧客と授受する現物の管理などバックヤードとの整合性も重要です。

1980年頃に考案された第三次オンラインのアーキテクチャは主としてテクニカル・アーキクチャに該当します。アプリケーション・アーキテクチャは、その10年以上前の第二次オンライン殆どそのままです。これからの3年ほどで、新しいアプリケーション・アーキテクチャが考案されるでしょう。それが、全金融機関同様になるか、タイプ別になるかは、金融機関の戦略がどのていど明確化されるかによります。それに従って、新しいテクノロジーの活用を含めたテクニカル・アーキテクチャの適用が見えてくるでしょう。

人によっては、今時の技術者に新しいアーキテクチャを考え出せる人間はいないと言います。しかし、20数年前に第三次オンラインのコンセプトを作った数名のエンジニアも、当時は中堅のトップガン技術者でしたが、先輩技術者からは心もとなく思われていたものです。その人達は、今日も健在で後進の育成をしていますが、現代の技術者には無理だとは考えていません。ビジネス要件が昔に比べて難しくはなったものの、整理学もIEも数段発達したので問題ないと考えています。技術の選択肢も数段増えていますし。加えて、製造業や小売業、卸売業の先進システムから学んでいけば、おのずと次世代の金融システム・アーキテクチャは見えてくるはずだと筆者も楽観視しています。