金融検査評定制度(金融庁が評定項目・基準案を公表)


金融庁は平成17年5月27日に評定制度案を公表し、パブリックコメントの募集を開始しました。6月15日まで外部からの意見を受付け、それを反映した形で7月からの新検査年度で適用される予定です。 http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/singi/f-20050527-5.html

金融経済新聞の5月23日号に、評定制度における、これまでの主たる論点と金融庁案の変化の推移などが紹介されており、なかなか興味深いものがあります。金融界では、なぜ今になって新検査指針を策定するのかと、金融庁の真意を疑う声があります。また、銀行の負担になることを企んでいるのではないかという疑問です。金融検査の透明性と公平性を強化しつつ、金融機関の自主的改善努力を促すことが目的と素直に考えてよいでしょう。確かに、今まで以上に細かいチェックがもれなく入るでしょうが、検査官によって異なるチェック項目や評価基準が減ることは確かです。

筆者が聞き及ぶ限りで、新検査態勢における注意点を二点ほどご紹介しておきます。

@    検査内容と評価方法は一段と定型化(すなわち機械的に)されます。

従来のように、検査官の個人的判断が入る余地は減ります。逆にいえば、検査官の成績評価の良い基準ともなります。検査でB評定したものの、数ヶ月もしない内に不祥事でも発生しようものなら、検査官自身の評価に結びつくでしょう。一段とミニパト婦警化が進む可能性はあります。それに対して検査局長宛に直接・間接的にクレームをあげるための仕組みも用意されますが、余程腹をすえない限りは異義申し立てをする銀行はないでしょう。

評定段階には、普通というランクがありません。Bは十分であり、Cは不十分という評価です。人間の心理として、当然にCが多くなるでしょう。それを9つのリスク分野別に評価して、全体を合わせた総合評定をすれば、改善命令ばかり出すことになりかねません。不備やミスのない組織は存在しえませんから。今回、総合評定を見送ったのは現実的判断と言えます。

金融機関としては、業界共通のTQC活動くらいのつもりで、押しつけられたものではなく、自分達の経営品質を向上させるツールとして捉えるくらいの気持が必要です。

A    ITガバナンスに関する透明性と戦略性の強化が必要

金融庁は先日、地銀協経由で地銀のIT担当者にIT利用に関する文書を配布したそうです。その中に、銀行はITベンダーの言いなりになっているのではないかという一文があり、何のことかと議論を呼んでいます。もともと、日本の銀行は膨大なIT投資をしながら、戦略的といえるものではないというのが金融庁の意見です。戦略的、適切な投資規模、ベンダーの言いなりという表現の本当の意味は誰にも判りません。言っている本人も判らないでしょう。コンサル会社やIT企業から金融庁に転職した人達の生兵法という見方や、寡占化した市場に入りこもうとしている新興ベンダーの言いなりに金融庁自身がなっているという見方もあります。その点は、マスコミも継続的にウォッチしています。とはいえ、絶対的権限を持つ行政当局に対しては、具体的被害にあった場合の行政訴訟しか対抗手段がありません。あと1年半ほどの辛抱です。

IT関連は、最後のオペレーショナル・リスク項目におけるシステム・リスクとして着眼点が列記されています。大きな案件における合理的なベンダー選定と中立的な外部機関の評価や機関決定にいたる経緯を議事録として残すことで透明性を確保すべきという考えです。中立的な評価ができる外部機関が存在するか、甚だ疑問ですが。確かに一部銀行で、どう考えても不可解としか言いようのない決定がなされることは昔からあります。それに対する取締役会のガバナンスをチェックすることは必要です。しかし、民間企業の取締役会の中味まで行政当局がチェックすることにも疑問が残ります。問題は、決定者の結果責任を問う仕組みがないことでしょう。動かすことが優先されて、その成果を刈り取ったり、評価する仕組みのない業務はITだけかもしれません。そこに不透明な決定や取引が発生する余地があるようです。まずは、システム監査や内部監査の問題なのですが。