携帯電話決済(ドコモのおサイフケータイ)


日経新聞平成17年5月27日付けの記事です。ドコモの中村社長が26日に、おサイフケータイを使ったクレジット決済のインフラを競合他社にも開放することで業界標準としたいと語ったそうです。ドコモから正式な発表はありませんから、日経記者の取材に答えたものでしょう。

具体的には、三井住友カードと共同で1年以内に専用読取装置を加盟店に設置し、与信管理センターと接続するシステムを構築する予定だが、それをKDDIやボーダーフォンと共同利用したいということです。業界標準を確保することと、インフラ投資を分担してもらおうとする考えのようです。

同時に中村社長は、提携を決めている三井住友カード、JCB以外のカード会社とも提携を推進するだけでなく、自社でもクレジット・カード事業に参入して金利収入を追うと言明したそうです。そのコア商品としておサイフケータイを位置付けています。携帯電話事業は、利用者数増加が頭打ちとなり、価格競争の結果として通話料の増加も期待できなくなっています。それは、どこの国でも同じで、打開策としてコンテンツ・ビジネスへの参入が始まっています。近くでは韓国が先行しています。

筆者は、ドコモが小口決済のクレジット事業に参入することは賛成ですが、それを既存のクレジット・カード会社と共同で実施することの是非は疑問に思っています。中村社長は「金利収入を追う。」としていますが、日本のカード・ホルダーのように一括払い中心では金利はとれません。リボで使うのは1万円以上といった金額の時でしょう。そうなると、途端に提携先であるカード会社とのカニバリズムが発生します。カード会社が携帯電話会社に期待するのは、あくまで小口決済だけだと思います。次の問題は、数百円といった小口決済に顧客が通話料自己負担で支払いをするでしょうか?プリペイドにならざるをえません。決済手数料は、誰が負担するのでしょうか?日本では、クレジット決済手数料は加盟店が負担しています。それも3%から10%といった極めて高い手数料です。薄利多売の小口取引で仮に3%でも手数料を取られたら、加盟店はなりゆきません。要するに、携帯決済に必要なコストを誰が負担するのかを解決するビジネス・モデルが必要ですが、それはこの記事からは見えません。

筆者も、おサイフケータイやケータイ・バンキングに興味があるというだけでFOMAに替えました。しかし、使う場所がありません。読取装置が普及していないことにあるでしょうが、それだけでしょうか?読取装置や決済システム構築にどれだけのコストが必要かは見当もつきませんが、チキンアンドエッグのビジネスを乗り越えるのに、ロシアン・ルーレットにならなければ良いがと思います。ドコモは先週、eコマース・サービスの内、クレジット決済とマネーチェックを9月に終了すると発表しました。折角FOMAを買っても期待していたコンテンツが終了して、次世代機種を買わされることになるのか心配になります。もっとも、同社はリスクにチャンレンジすることは、海外投資でも経験済みですから、それなりに考えているのでしょう。

筆者なら、クレジットに関しては、既存カード会社とはバッティングしない小口決済で極めて安いか無料の加盟店手数料を武器に市場を押さえ、そこから上位取引層に上がっていくシナリオを考えます。そして、コイン・ベースの超小口決済には国か地公体と提携して硬貨機能を持たせるようなことを考えますが。

金融機関の側からは、ドコモの置かれた現状と将来環境を精査すれば、優位な立場で事業機会を見出せるはずです。放置すれば、単なるコモディティ産業として収益の上がらない事業となる携帯電話に、技術革新を利用した新しい金融サービスを立案できれば、三方(顧客・携帯電話会社・金融機関)にメリットのあるビジネスを描けるかもしれません。問題は、通信も金融も業種横断のインフラ・サービスであり、商流・物流のようなリアル・ビジネスではないことです。あくまでも顧客が持つ本来のニーズを側面からサポートする立場ですので、リアル・ビジネスとの組み合わせが前提となります。それを抽象的機能だけで展開しようとすると、空論となる危険性が高いことに注意すべきでしょう。