証券リテール戦略(大和証券)


金融経済新聞平成17年5月23日号が大和証券グループの新事業戦略を紹介しています。大和証券は、法人部門を三井住友銀行との合弁である大和SMFGに任せていますので、戦略の中心を個人取引に注力しており、良く練った営業戦略を作成することが知られています。

商品分野ではエクイティ(株式)を主力するとして、そのための戦略には柱が三つあります。

第一は、オンライン取引を強化してネット専業並みの料金やサービス内容とする。

第二は、PB用のSMAを拡販する。

第三は、地方マーケット拡充の為に地銀などとの証券仲介業を強化する。

大和証券のオンライン取引は、率直なところ顧客の評価が高くありません。例えばGomezのネットサービス顧客満足調査では、(昨年6月と少し古いのですが)12位の5.80点でした。1位のイートレード証券8.17点に比べると相当に見劣りします。システムの安定性や提供情報の豊富さなどは評価が高いのですが、費用が25位4.10点と極めて低評価であることが原因です。そこで、今事業計画では大巾に手数料を値下げして、信用取引などの機能を充実させる予定です。オンライン取引の顧客は、機能と価格次第でクリック・アンド・チェンジしますので、サービス改善は顧客数と取引量増加に直結するでしょう。問題は収益性です。それを心配して大手証券はオンライン取引の価格競争から一歩身を引いてきました。大和はその路線を変更するようです。数値目標としてオンライン取引収益を2007年に月間25〜40億円としています。信用取引サービス残高は今年度末に2000億円としています。収益目標の達成時期を2007年と先送りしているのは、これからシステム手当てをするということなのでしょう。プロダクトアウト的な操作設計ではなく、顧客とのインタラクティブな設計手法を採用すべきでしょう。大和証券のITカルチャは、安く・早く・省資源です。いわゆる事務合理化のための電算化が長い伝統です。それでは、フロント系、ましてや顧客操作系のシステム構築には大きなハンディとなります。

SMA(いわゆるラップアカウント)は、昨年末に先陣を切って参入したサービスです。新光証券が追随したものの他社は積極的でありません。余り売れていないのかと思っていましたら6ケ月で240件200億円の契約しかないそうです。記事では順調に増加していると言いますが、証券会社の営業スピードとしては遅すぎます。今後は商品ラインの拡充と専任コンサルタントの質向上を図るとしています。この二点が思わしくない理由とされているのでしょう。富裕層は最近、不動産投資に目を向けていますが、BRICs株やFOREX、外貨建てMMFなどにも強い投資意欲を持っているようです。今年度末に1000億円、2007年度末に5000億円の残高を目標としています。

証券仲介に関しては、現在30行の地銀と提携しています。他に20行と交渉中だということです。大手証券3社の中でも大手地銀を中心として好調な提携先確保が注目されています。投信窓販の時には野村証券一人勝ちという感じでしたが、今回は営業支援体制や販売手数料体系などを工夫した上に、顧客管理を地銀に全面委任する方法を取ったのが地銀の安心感を呼んだようです。首都圏の経済規模は全国の35%です。大阪・愛知を合わせると15%ですが、残りの50%に占めるシェアによっては、野村を越えることも可能となります。保険窓販における外資系保険の健闘振りを見れば、地域で圧倒的基盤を持つ地銀との提携の重要性が理解できます。

新事業計画で打ち出した数値を全体評価していませんが、少なくとも野村を越えようとする意欲が見てとれます。目標額は顧客数や価格などをセンシティブ分析した結果のようで単なる仮置き数字ではありません。大切なことはビジネス・システム全体で必要十分条件を着実に実現することになります。金融庁が地銀などに求める個性的な選択と集中を行なった経営計画の良い見本に思えます。