ATM提携―明治生命・東京三菱銀行


日経新聞(平成14116日号)の記事です。明治生命は東京三菱銀行のATMを使って、契約者に対して貸付金の引き出しや利用可能限度額の照会サービスを開始(3月から)するとのことです。

この提携は、前回コメントした日生とコンビニのATM提携とは目的が異なっています。日生は現金の入出金拠点としてコンビニATMを使うのに対し、明生は契約者貸付けに絞っている(今回は)ことです。個人ローンの強化戦略だと思われます。現在、明生は契約者向けローンとしてフリー、住宅、マイカーなど6種類のローン商品を提供しています。(同社サイトより)契約者貸付けは払込み済み保険料を担保として、その90%を限度に融資するものです。銀行総合口座の当座貸越と同じ考え方ですので、貸倒れの心配は殆どありません。運用難に困っている保険会社としては、大変うまみのあるビジネスです。

契約者にとっては、払い込んだ保険金が長期に固定されてしまい自分の意志では利用できない状況を避けられます。個人の金融資産活性化の面からも非常に良いことでしょう。個人の金融資産が1400兆円といってもその多くが、制度金融や保険で固定化されているのですから。
消費者金融会社にとっては低価格の新規参入者ですので、若干の脅威を感じるかもしれません。しかし、消費者金融会社の顧客は年収400万円未満が大半ですので、市場セグメントが違います。最近、新規参入している都市銀行の無担保ローン市場でバッテイングが起きるでしょう。

これまで生命保険会社は、直接的に個人ローン(特にフリーローン)には進出していませんでした。消費者金融会社に融資することで間接的に参画していただけと言えます。事実、契約者貸付けの制度があることを認識している契約者は稀でしょう。競争していませんから、貸付け条件は保険会社によって全く異なります。市場原理による価格の収斂がないのです。各社のローン金利を比較してみれば一目瞭然です。2%程度は違います。各社が契貸を強化することによって金利は低い方に収斂していくでしょう。結果として基幹商品である保険そのものを合わせた価格競争となります。保険会社としては、このような派生的影響を踏まえて契貸ビジネスを考えているとは思いますが。

懸念の一つは、担保があるとはいえ、与信と回収の技術はあるのかということです。恐らく皆無でしょう。より大きな懸念は、初期与信の審査プロセスです。明生の契約者向け個人ローン手続き案内を見ると、数種類の書類提示と10日前後の審査期間が必要だとのことです。このような業務レベルで個人向け融資が成功するとは思えません。顧客の経験と期待水準は数段レベルが高いのですから。明生は3月までに、何らかの対応を行なうのでしょう。仮に専業並の水準にしようと思えば、ACMや初期与信審査システム、途上与信チェック・システムなどの投資が必要となります。契貸の現行金利水準では、採算を取るのが難しいでしょう。専業などの先行企業と提携して、自社は担保管理機能に特化する事態になる可能性があります。水平分業化が進む金融ビジネスでは避けられない方向でしょう。既に多くの地銀がこのようなビジネスモデルを採用しています。

ビジネスモデル特許と同じですが、単発の強みは即座に代替されてしまいます。複数の強みの組み合わせが、競争力と利益の源泉です。単独で必要な強みを確保できなければ、他社との提携になります。提携は失敗の可能性を高めます。提携各社の強みをバリューチェーンか業務プロセスで固定してしまう必要があります。その時にバーゲニングパワーを持つ企業が最も大きな恩恵を受けるのが自然の摂理でしょう。一年後に、日経新聞がこの記事内容の結果を報道してくれることを期待しています。