ストア・バンキング(ヨーカ堂に有人店舗)


ヨーカ堂は4月18日に、ショッピングセンター内に銀行有人店舗を設置すると発表したそうです。日経新聞17年4月18日号、日経金融4月19日号が報じています。

「お金の便利コーナー」は、IYバンクの有人店舗とし、銀行5行、証券7社、保険会社13社、カード会社(JCB)、旅行会社(JTB)の代理業務を行なうそうです。一般事業会社が銀行の代理店となることは、まだ認められませんので、IYバンクが口座開設や資料請求の取次ぎをするようです。証券や保険の代理業務は、現在でも登録等を行ない、販売資格を持つ要員を配置すれば可能ですから、ヨーカ堂の社員が行なっても、IYバンクが行なっても構いません。

日経新聞は、ヤフーのあおぞら銀行、ライブドアの西京銀行、楽天の東日本銀行などブリック&モルタル・チャネルへの参入を引合いに出しながら、「金融と流通の融合」が進みつつあるとしています。また、欧米でストア・バンキングが普及していることに触れて、日本でも同じ動きになる可能性を示唆しています。

日経金融は、金融庁が解禁を目指している一般事業会社(この表現も面白い表現です。銀行、鉄道、電力など公共性の理由で、個別業法で規制されている事業以外を指しています。)による銀行代理店制度の先取りで、試行を通じてノウハウの蓄積や顧客ニーズの把握を行なえる効果があるとしています。

イトーヨーカ堂を含むGMSは、近年、成長性と収益性に陰りが出ています。各コ−ナーを商品特化することで、成長を続けるキラー店舗の長所を取りこもうとしてはいますが、大規模ショッピング・センターというビジネ・モデルから脱却することは自己否定ともなります。そこで、品揃えを拡大して集客効果を狙うのでしょう。金融関連のサービス提供による手数料収入も狙いの一つであることは間違いありません。

こうした、新しい金融チャネルが出現して損をする顧客は誰もいませんから、多いに試行して欲しいものです。しかしながら、事業として見るには冷静な視点も必要でしょう。

◇    スーパーでの買い物の際に行なう金融取引には、どのようなものがあるでしょう。自分や家族・親戚を当てはめて考えれば判り易いでしょう。単純入出金や変更届けであれば、ATM等の方が便利です。ただし、消費者アンケートでは、クリーニングや役所の出張所の方が、ニーズのあることが明らかです。

◇    商品説明を受けることもあるでしょう。しかし、上述のように27社もの金融関連企業の商品を説明しきれる人間が窓口にいるでしょうか?多くの場合は、後刻、当該金融機関から資料郵送か電話勧誘が行なわれることになります。

◇    窓口で応対する担当者は、個人情報や金融商品情報を扱います。その際に金融機関並みの情報保護や金融商品販売法関連のコンプラ遵守ができるでしょうか?コンプライアンスは、金融機関の最大の売り文句の一つです。しかし、金融機関で勤務したことのない人が、守秘義務や重要書類管理などで想像を超越した行為をすることが多いことも事実です。

◇    今回の場合、IYバンクで日常生活用資金以外を預託したり、融資を申し込む人がどのくらいになるかも興味があります。通常、人々は危険を分散します。金融機能には継続性・安定性が強く求められます。一方で、ダイエーを含めて多くの小売業者が様変わりしていることを人々は良く知っています。

◇    金融コーナーで扱った金融商品から、どの程度の収益がヨーカ堂(或いはIYバンク)に廻るのでしょうか?銀行の総資産に対する営業経費の比率は、0.6%前後です。それ以上を支払うのであれば、金融機関は自らで行なうでしょうし、ましてや、金融コーナーで提供する機能は必要業務処理の数分の一です。つまり、扱い金額の0.1とか0.2%が支払われるだけでしょう。小売業のマージンよりもはるかに低い率です。店舗効率からして成立しうるのか?

当然、顧客利便を通じた集客力アップで補完することになるのですが。

以上のように、ストア・バンキングには多くの検討課題があります。それにチャレンジするヨーカ堂や各金融機関は誉められて良いでしょう。やってみなくては判らないことばかりですから、余裕のある企業が先行して実験してくれるのはあり難いことです。回転軸にはまれば、日本のリテールバンキングの様相が一転するかもしれません。

筆者個人としては、ストア・バンキングは金融機関にとって、さしたる事業効果はなく(だからこそ、小売業者や鉄道業、ネット業者などに代理委託してしまうという考え方もできます。)、一般消費者を最終ユーザーとしながらも、企業の提供する商流や物流に金融機能を組みこむことで、バリューチェーンを変革することが重要だろうと考えています。