新規参入銀行(新銀行東京)


新銀行東京が平成17年4月1日に営業開始するので、日経新聞が3月30日、31日号で新銀行(といってもBNPパリバ信託を買収したのですから新規設立ではありませんが)に関する特集記事を掲載しています。

新銀行の謳い文句は、資金調達に苦しむ都内中小企業を支援するための無担保・無保証融資です。利便性向上のためにICカードを活用する戦略も注目されています。三越やJAL,JRスイカなどとカード提携し、郵貯やIYバンクと手数料なしのATM相互利用が予定されています。

一時、盛んに聞こえてきたシステム構築に関するトラブルは、最近聞こえなくなりました。順調なのかどうかはわかりません。一時期、コストも考えず銀行業務も知らずといった人達が、思いつくままの機能をシステム化しようとしました。余りの素人考えに多くのコンサルが退散したようです。恐らく、しっかりしたリーダーが出てきて、システム化の対象をふるいわけ、稼動の優先順位をつけたのではないかと想像しています。ATM(普通預金)を動かすだけなら既存のソフトで済みますし、無担保無保証融資は、オンラインでなくとも手作業で出来るでしょう。システムに関しては、開業にさしたる問題はなかろうと思います。

金融関連の人達と世間話をしていて、新規参入銀行の話は殆ど出なくなりました。皆さん、脅威を感じないばかりか、興味もなくしたようです。ただ、撤退する場合に誰が引き取るべきかは話題になります。振興銀行は、日銀か金融庁が引き取るべきだとか、新東京は某リース会社だとか勝手なことを言っています。

筆者は、東京都が中小企業融資を行なうのに新銀行を作ることの意味が理解出来ないでいました。商工ローンで良いではないか、または、公的融資で何故いけないのか?と思っているのです。ましてや、ICカードの提携網を広げてATMを都営地下鉄に設置するとなると、お客は誰?と思ってしまいます。日経記事によれば、出資依頼を受けた企業が「人は出すが金は出さない」と言うそうです。金を出さないような先に行かされる人達が気の毒です。なぜ、人が足らないのか?

以前、都庁に事務手続きで行った時のことを思い出しました。余りに絵に描いた役所なので、最初は怒り、次は絶句し、最後は笑ってしまったものです。横のカウンターで応対している中小企業主と都庁職員のやり取りを見聞きしていると、話のすれ違いや書類記入の間違いには想像を絶するものがあり、「こういう人達と毎日折衝していれば、役人としては、我が身の安全唯一になるのは仕方ないな」と思いました。スピード狂の筆者としては、時計の針が月針と週針しかない人種とつきあうと本業に差し支えるので、以来、役所の絡むことには一切タッチしないことにしましたが。

このコラムをご覧になる金融関連やIT企業の皆さんからは想像できない世界が、中小というよりは零細企業です。人柄が良くて本業には強いのですが、法制度、会計、営業、事務となるとまるで無知無関心の人が多いのです。(筆者が脱サラして、彼らと付合いを始めた時に発見したことです。)それを相手に、商工ローンはおろか銀行業務など役人が出来るわけがありません。ですから、役所は何かと公的資格や商工会議所のような組織を作って代行させてきたのでしょう。ところが、その代行業者が役所と同じ仕事振りなのです。そこで、外部から人材を集めて、民間的な銀行を作りたかったのかもしれません。意図は判るのですが、新銀行の管理職は、役人か役人タイプの人達が大半でしょう。出向の皆さんが、悪性の役人ウィルスに感染せず、無事に母体企業に帰還するようにと思うばかりです。

新銀行の戦略はポートフォリオ融資です。それを支えるのがスコアリングモデルです。多くの銀行が、個人向けのフリーローンや住宅ローン、中小企業向け融資に使用しています。しかし、成功事例は少ないようです。要は、試行錯誤(失敗と成功の積み重ね)しかないのですが、失敗を許されない銀行風土では、モデルのレベルアップが出来ないからでしょう。東京では、メガバンクや東京都民、新生銀行などが、中小向け融資を強化しています。その貸出レートは、新銀行より低利です。メガバンクから借りた方が、取引先への信用も高いでしょう。新銀行は、数々の高いハードルを越える必要があります。それでいて、議会や納税者のみでなく、多くの提携先と調整しながら事業を開発しなくてはなりません。ビジネスモデルとしては、余りに難しすぎる思います。

ここ数年の新規参入銀行のITに関連して言えば、ATMなどの機器納入業者は別として、システム開発を請け負ったIT企業で採算の取れたところはないのではと思っています。多くのITベンダーは、要件に基づいた根拠ある費用見積りをしていません。また、それを可能とするメソドロジーもデータもありません。建設業や製造業のような標準化や共通部品化が出来ていないのが理由です。金融業における最大の参入障壁かもしれません。