総合金融サービス(シティが生保・年金を売却)


シティ・グループが、生保・年金部門を売却すると1月31日に発表したそうです。平成17年2月1日付け日経新聞が報道しています。

日本では、ワンストップバンキングやクロスセルが、金融戦略の柱として考えられ、行政もそれを追認・推進しようとしている矢先のことなので、波紋を呼んでいます。多くの専門家は、富裕層など一部を除けば、総合金融化路線に疑問を抱いていますが、その声は大きくなるでしょう。しかし、日本の風土では一度動き出すと、デッドロックまで進むことになるのかも知れません。

7年前にトラベラーズがシティを買収する旨発表した時、筆者はトラベラーズを知らなかったので(恥かしながら海外の保険ビジネスには疎いのです。)何故、有名でもない生保が大銀行を買えるのか?総合金融で成功した事例などないのに、と思ったものです。シティの名は残ったもののワイル、リード共同CEOは仲違いをして、リード氏が去りました。ワイル氏の経営力、政治力も原因なのでしょうが、米国における銀行業は、日本におけるそれ程には社会的地位もパワーもないことを痛感したものです。今回は、シティ側が大きく巻き返した形となりました。リード氏を引き上げた、中興の祖ウォルター・リストン元CEOが先日亡くなりました。時代の変化と揺り戻しを感じるニュースであります。

シティは国際業務、リテールバンキング、投資銀行業務に的を絞るとしています。理由は成長性と収益性を高めるためだそうです。米国では生保・年金は魅力的市場ではないということになります。また、邦銀に比べれば数段高い収益性を持つシティですら、市場・株主の満足を得ることができないということです。永遠に鞭を入れられ続ける競争馬かと思ってしまいます。いずれ市場原理は見なおされることになるでしょう。

とはいえ、日本では、折り良く護送船団方式がなくなり、横並びも薄れつつあります。プロの経営者と守旧型経営者の差が、銀行の将来を決める時代となりつつあります。

シティの戦略変更で、最も注意すべき点は、垂直型統合モデルは止めるが、総合金融化路線は捨てないということです。つまり、良い商品は他から仕入れてでも揃えるということです。多様化・高度化する商品を全て単独で開発するには、シティといえども時間・費用・人材が不足ということでしょう。このことは、あらゆる先進的産業で共通です。商品・業務のコアとノンコアを見定めて、垂直型と水平型を最適化(変化しますが)したビジネス・システムを構築し、修正し続けるしかありません。

日本でも、投信や変額年金などの銀行窓販によって、金融商品のOEM販売に馴染みが出てきました。ただ、商品提供については外資系が席巻している理由は何なのでしょう?商品設計が良いとか、既存チャネルや系列関係を持たないので販売提携が容易で手数料条件が良いということはあるでしょう。しかし、それだけならば遠からず日系生保が追いつきます。ブランド戦略、販売支援、ITサービス等々にも工夫がなされており、継続的改善が重ねられていることに留意すべきでしょう。単なる環境でも偶然でもないようです。

銀行の利鞘状況に改善の兆候は見られません。一時的に昔のような資金需要や高利鞘の時期が発生することはあるでしょう。これは消滅する寸前の一瞬の輝きと言い、よくある現象です。この時に、変革を止めるか(もっとひどいケースは、ただこの時期を待つだけです。そこで蓄えた利益を使って次のステージに一挙に移行するか?経営の決断とビジネス・システム再構築をしておけるかが、運命を決めるでしょう。ビジネス・システム変革で、時間が必要で難しいのが、組織文化、行職員の技能、人事制度などです。サービス産業化に向けた施策を重ねるしかありません。

良く言われる解決策は、経営者を替えるしかないということです。しかし、どうもそうではないようです。変革を最も阻害するのはアッパー・ミドルといわれる取締役や部長級だというのが、筆者の長年からの結論です。彼等は、変革を要求しながら、変革を邪魔します。筆者自身がそうでした。