銀行代理店(金融庁が一般企業へ解禁を検討)


日経新聞16年12月4日号の記事によれば、金融庁は銀行法を改正して、一般事業会社に銀行代理業を解禁する方向で検討しているそうです。次期通常国会で銀行法を改正する予定とのことです。

銀行代理店制度は昔からあるのですが、厳しい規制の中でほとんど活用されずにきました。複数店舗をもてないとか、設置場所には認可が必要だとか、特定業務だけとか、一代だけだとかいった規制です。使い憎い制度である上に、採算のとれるビジネスモデルは無理でした。近年は序々に緩和されてきましたが、それでも銀行の100%出資、専業などの規制があります。

マスコミなどが煽ったこともありますが、銀行店舗はコストが高いという社会的イメージがあります。それは、銀行による産業支配を防止する目的で認可業務以外を禁止している(他業禁止原則)ことが大きく影響しています。一等地に大きなスペースを抱えて、9時から3時までしか開店せず土日は休業ですから、稼動効率の悪いのは当り前です。しかし、それは銀行が望んだことではありません。信用秩序維持(即ち中小金融機関の保護を通じた預金者保護)という名目の規制が原因です。人件費も同様です。公益産業ということで義務付けられる作業が、どれほど膨大なコストを必要としているか外部の人々は知りません。

新規業務解禁といっても、金融村の中で保険や証券の乗り入れ(銀行のみが拡大)だけですから、新しい市場や商品を生み出すわけではありません。弱肉強食だけが発生します。

以前のように貸金需要が無尽蔵で、預貸利鞘もある程度保証されている状況であれば、店舗コストを吸収できるのですが。今日の経営環境では店舗コスト負担は、多くの店舗で単なる赤字垂れ流しです。金融ビッグバンという政策のもと、金融機関が扱える商品・業務や価格付けは序々に規制緩和されてきました。店舗規制もそうですが、激変緩和処置という理由(言訳?)で、極めてゆっくりと進められています。大規模金融機関であれば、スローな方が良いかもしれませんが、小規模金融機関には長い変化期間中の新旧双方のコスト負担に耐えかねます。リストラも同じですが、変革期間が長いほど苦痛は大きくなります。外科治療はスピード第一です。

行政においては、他業禁止原則を緩和する気は更々ありません。民間金融機関の規制緩和要望も極めて遠慮したものばかりです。そこに郵政民営化で、物流も観光業も介護サービスも、更にはコンビにまで行なう総合金融機関が市場に出てきます。民間金融機関や大和運輸が怒るのは当り前です。自分達が払った税金で買った国有財産をそのまま持った巨大な競争相手が出現するのですから。銀行などまだ勝ち方がありますが、コンビニなどは出店余地がなくなって現在のビジネスモデルは崩壊するでしょう。しかし、何故か文句を言いません、中には早々と提携する会社すらあります。金融村の住人である筆者の目から見れば、郵便局が全部コンビニになって、銀行などの代理店になってくれればベストに思えます。金融界は、そのように誘導すべきでしょう。

大都市圏の銀行であれば、徹底したリストラで店を統廃合し、正規行員を減らし、OHRを60%未満にできるでしょう。しかし、大多数の地域金融機関にとっては、採用できない施策です。できれば行員を独立・分社化して社内競争原理を導入することで地域住民でもある行員や地域経済と共生していきたいでしょう。その意味では代理店制度は重要な戦略案件です。郵政のネットワーク窓口会社構想が出た時に、「あー、先を越された」と思ったと同時に、「民間金融機関の代理店制度規制緩和で他業禁止原則に穴があく」とも思いました。ところが、この記事によれば、既存の一般企業に解禁するということですから、銀行員の出る幕にはなりません。むしろ、存在意義を薄れさすことになるでしょう。地域金融機関はますます、辛い状況になります。何故なら大都市中心のメガバンクや、新規参入者の方が数段容易に利用できる制度だからです。

地方の金融マンは、自分が地域エリートで、ローカルキング企業の社員だというプライドを根っこから捨てるべきでしょう。銀行は、ますます、従業員を守る余地を失いつつあります。銀行に対するロイヤリティとそこにぶら下がることとは意味が違います。銀行の外に出て、自らの生活を守りながら、地域経済と銀行に貢献することも、地域最上級の頭脳保有者に求められる道でしょう。

IT戦略ですが、筆者は昔から代理店戦略をIT戦略の柱の一つにすべきだと唱えてきました。本気で耳を傾けてくれる銀行もITベンダーも今だに現われません。銀行商品には在庫管理や時差価格などの概念はありません。今日では、スーパーのシステムの方が銀行より数段高度な機能を持っています。銀行は、ATM入出金や振込みの時間当り処理能力を競っているレベルです。マーケティングという規制産業が最も不得手とする機能をITに組みこむ必要が出てきます。