郵政民営化システム対応


金融経済新聞16年11月15日号の記事です。民営化情報システム会議での討議内容を掲載しています。極力、現行システムを利用し、コンビニ業務など新規業務を先送りすることで、分社する際に必要なシステム修正を半減させるということです。とはいえ、公社は「2007年4月分社を実行するために最低限必要な妥協策を例示したに過ぎず、分社化が問題なく可能だとしたものではない」と文書で反論しています。余程、分社化が嫌なのでしょう。

システム会議の委員の間では、将来の新規ビジネスのために公的資金でシステム対応することには否定的な考えがあるようです。一方、公社としては参考資料を出せば、事務局が都合の良い部分だけを取り出して、規制事実化しようとしていると疑心暗鬼になっているようにも見えます。

当件については前にも述べましたが、新論理モデルから新物理を設計して、現物理とのフィットギャップを通じて、修正必要箇所を列挙するお作法が実務的ではないのです。経営が定めた方針(代表取締役である首相が決めて、役員会である閣議が承認)を実行するための手段を提示し、制度的・技術的問題があれば、それを整理し対策を講じることが実務レベルの役割です。その為に特例法を要求したり、長期的には無駄なIT投資も出てくるでしょう。その諾否は経営が判断することで、実務レベルで判断を加えることが混乱を増幅することになります。マスコミまでが賛成派と反対派に分かれて記事の論調を操作しています。日経、朝日、ニッキン、金融経済その他を見比べると論調の差が歴然です。加えて、ITベンダーも既得権護持派と新規参入希望派に分かれています。こうした議論を拡大すること自体が、分社・民営化反対グループの意図なのかもしれません。もっとも、素早い新進ベンダーなどは、すでに人脈を使って郵貯ビジネスを確保しているそうですが。

9月に公社がマスコミ等外部に提示した「分社化の実務的なフィージビリティについて」という資料があります。3事業一体のまま民営化すれば1千万ステップ以上、分社化すれば4200万ステップ以上、両者同時実施なら5200万ステップ以上という開発作業量を見積もっています。その根拠として、非公式としながらも、3ベンダーの見積を明示しています。NTTコムウェアが財務経理のみで民営化に1.5年、分社化に3年、NTTデータは、それぞれ2年と3.5〜4.5年です。IBMは2年と5年です。特にIBMの名前と数字は効果的なようです。資料では名前を伏せてありますが、説明の際に社名を言ってしまっています。見積の前提を付記せずに社名を使われるベンダーもつらい立場ですが、このペーパーが政治家や行政幹部を一人歩きしています。

3回目のシステム会議では、見積りの前提条件を一部出したようですが、こうなると重箱のモグラ叩きです。最後はジャンケンでもしない限り決着がつかないでしょう。合併メガバンクのシステム統合と同じシチュエーションです。

窓口ネット会社の端末等を現行のままにする、本社システムは店舗管理と受託業務管理だけとするなどと妥協して当初総裁が提示した5200万ステップから2648万ステップにまで開発作業を減少できる可能性があると報告されたそうです。こうした条件闘争になりますと、先送りできる項目はフンダンに出てきます。最後は1千万ステップ以下になります。公社実務者は責任を持てないと言いながら、受け入れざるをえません。そして分社時にはトラブルが続出して、「決めたのは誰だ」「やったのは誰だ」ということになります。

その気のない人たちに、無理強いしても失敗するのは自明です。NTTや国鉄の時のように、やる気のある人達で実行することが成功のポイントでしょう。ベンダーは注文が出れば対応します。議論を続けるだけ時間がなくなり、混乱が広がります。根底は技術論というよりは体制論ですから、ベンダー各社は、迂闊に一方に肩入れしない方が良いでしょう。最後は人事権の問題です。