銀行のIT投資額(4メガ・グループ)

ニッキン16年11月12日号が、4メガバンク・グループの2005年度システム関連経費の予想値を報道していました。経費の内容は、ハード・ソフトの償却費、保守・運用費とのことです。経費の定義をした上での取材ですので、マスコミが実施する従来の取材よりは数字の信頼性は数段高いと評価できます。

みずほFGの2005年度予想(予算が正式決定されるのは2月ですので、この数字はあくまで担当部門の希望値と考えることが妥当ですが)は、1600〜1700億円、MTFGとUFJ連合で3000億円、SMFGが1000億円弱ということです。3グループを合わせると、2004年が5500億円強、2005年が5600億円±100億というところでしょうか。

2001年度が7千億円前後、2002年度が6千億弱、2003年度が5700億円でしたから、合併特需が終わったということです。IT投資力確保を目的の一つにした大合併でしたが、結果は逆で、それも中味は単なる勘定系片寄せという付加価値を生まないことに投資したという見方もできます。

今年6月の日銀短観における銀行の設備投資額(土地を除く)は、2004年度に対前年で9.1%増と報告されていますので、ニッキンの調査とはかなり異なる結果です。大きくはハード、ソフト関連の支出額と償却費の違いでしょう。細かく言えば、グループ内IT会社への支払や内部IT要員の人件費の扱い、ネットワーク関連などが差の原因と思います。今年12月の短観で、来年度予想値が出ますので、銀行ITに関わる人々にとっては、興味深い調査となるでしょう。

今年は、UFJを始めとして新札対応やICカード対応を契機としたATM関連投資が大きかったようです。みずほFGも、12月18、19日の旧富士銀支店移行を最後に勘定系オンラインの統合が完了します。大きなトラブルもなく、順調に作業は進んでいるようです。すでに来年度以降に開始する戦略的案件の検討や体制整備も始まっているということです。

MTFGとUFJのシステム統合は、随分と余裕感のある検討が進められていると聞いています。両行ともに統合経験はありますし、来年10月の合併時に無理(無駄?)してシステムを一本化する必要のないことが理由でしょう。RC接続だけでしたら、半年と最大で500億円の投資で済みます。今回はその半分で済むかも知れません。

注目されるのが、SMBCです。IT部門を日本総研に外出しして以来、目新しい動きが見えません。ネットバンキングの更新程度でしょうか?ひたすら経費削減のためにジッとしているように見えます。もっともムキになって実施しなくてはならないような、戦略的案件のないことも事実です。ニッキンに紹介されているモルスタ・アナリストの言うシティグループの5千億円投資(銀行部門はその半分)に近づいてきたという評論は無意味です。投資ですからROIの問題です。また、数千店と10万近い行員を抱えているシティとの単純比較にも無理があります。もっとも数年前までは、筆者も同じ論法を使っておりましたが。

メガバンクにとっては、市場系や海外系システム再構築の時期となっています。国内ネットワークも一昨年までに広域LANなどで高速化回線化は終了しています。ただ、昨今のVPNや光通信の高性能化と低料金化は、ネットワークの再々構築を促すことになるかもしれません。その際には双方向動画通信などが目玉サービスとなることでしょう。頭の痛いのがPCです。セキュリティ強化や個人情報保護の対策が急務ですが、多くのPCはNTです。数万台のPCを入れ替えるための、データ移行やソフト導入、操作研修などが大変な労力と時間を必要とします。資金の問題だけではありません。

マスコミやITベンダーは、銀行基幹業務の動向に目をむけていますが、筆者はむしろノンバンク業務や周辺業務に関わる体制再編とIT再構築に注目しています。国内リテール戦略を考える際に、キーとなる案件だからです。技術的問題、資金の問題もさることながら、政治力をもった銀行員と業務知識をもったノンバンク関連会社員との調整は順調でないようです。組織文化の衝突は銀行合併の比ではないかもしれません。

2006年までには、デフレ脱却と銀行不良資産の整理が終わるであろうと期待されています。事実、多くの銀行に前向き経営の動きが出てきました。来春から始まるとされている地域金融機関重点強化プログラムも2006年には完了予定です。つまり後ろ向きな経営課題は全て終わることが予定されています。2007年からは、団塊の世代が60歳となり退職金市場・年金市場の急拡大も時間の問題となりました。国家財政改革、三位一体改革などを受けてわが国の資金循環はパラダイムシフトを起こすことが必然です。つまり、2006年までに重い宿題を片付けて、新しい時代に向けた布石を打っておくことが必須条件となります。新の経営力が問われることになります。IT関連の人々には、単なるITソリューションではなく、ビジネス・ソリューションを提供することが要求されます。実体は逆行しているように見えますが。