オープン系基幹システム(IYバンクが日立からユニシスへ)


16年11月2日にIYバンクは、次期システムとしてユニシスによるWinベース「バンクスター」の採用を発表しました。同日付けの日経BP社サイトITProを始めとして、5日付けニッキンなどにも記事が掲載されていました。

ユニシスのWinベース基幹システムへの置換えは、今年1月に日経コンピュータが報道しましたが、IYバンクは公式には認めずにいました。ユニシス提案を評価してきたのでしょう。それはそうです。まがりなりにも銀行オンラインですから、失敗しようものなら多方面から嘲笑の的になってしまいます。とはいえ、普通銀行のオンラインと異なり、ATM管理中心の単純なシステムですから、できないことはないと考える専門家が多かったことも事実です。IYの経営ニーズとしてITコスト削減が至上命題ですから、Winベースの方が管理対象ATMやトランザクションの増加に容易に対応し易いこともあるのでしょう。一方、残る課題として、本当に維持運用コストを下げられるのか?オープン系の弱点としての運用コストの増大は大丈夫なのか?Winベースの宿命としてのシステムライフは保証されるのか?などの問題を詰めてきたのでしょう。ベンダー側の保証条件にIYが納得できたので、今回の公表になったと考えて良いでしょう。もっとも、筆者であれば、簡単にベンダーの営業コミットメントを信用しませんが。トップや担当役員が替われば営業政策は変わりますし、経営主体が変われば反故同然ですので。

今中間期のIYの決算は、対前年21倍の43億円になったそうです。(分母の大小を無視する新聞の見出しには何時も意図を疑います。まして、それをそのまま、受け売りする銀行員の多いことにも苛立つことがあります。)期末には累損を解消できる見込みとのことです。一方で、特に中小金融機関の間では、IYに支払う手数料の高さ(信金の相場で一件100円)が問題になりつつあります。IYとしても累損を一掃できた時点で手数料引き下げ交渉に応じる意向と聞いています。そうなると、固定費の大半であるITコスト削減が必須条件となります。今後は収入増のペースが落ちるのは当り前ですから。昨年度のIT経費はおよそ111億円(ATM経費等を含む)と推定されています。ところが、日立だけでなく、富士通など大手ITベンダーは、最近収益性の重要性に気づいたのか、以前のような大幅値引きはしなくなりました。それ自体は極めて健全なことで、やがてNECやユニシスも同じ道を歩むのでしょうが。現時点でユニシス社の低価格攻勢は止まっていません。新システムの導入費用は約30億円と日経BPは推測しています。そしてホスト運用費用の20〜30%を新システムで削減するとIYは考えているということです。

新システムは、WinベースのDCサーバーES7000で、DBMSはSQL、ミドルソフトとしてMIDMOST(現在開発中)、勘定系パッケージとしてバンクスター、対外系パッケージとしてイータイガイを使い、現行システムのリースが満了する2006年に移行する予定です。プロジェクト管理はNRIが継続して担当し、開発はユニシスが行うという体制です。

先行してMIDMOST採用を決定している百五銀行は喜んでいるでしょう。ユニシスは一段とMIDMOST開発に力を入れるでしょうし、仮に問題が発生してもIYバンクが防波堤になってくれます。百五銀行もプロジェクト管理をNRIに頼めば、ますます安心できるかもしれません。NRIは、野村証券のシステムで最も早く金融基幹系システムにおけるオープン系を経験しています。もっとも、ATM管理や商品縦割りの業務体系を持った証券システムと、科目間連動を中心とする銀行基幹系とでは、トランザクション管理やメッセージ管理などの仕組みは大きく異なります。場合によっては、OSの変更が必要になるでしょう。それは米国MSの開発部隊に依存せざるを得ません。そうなると、オープン系とはほど遠いアーキテクチャとなりますが。

先頃、クライアントの経営者から相談を受けました。ある部門がWinベースのPCサーバで部門業務を処理しているのですが、Winのサポート切れで、運用の継続ができないそうです。数千万円の新システム(Win2003版)に変えなくては、業務継続の責任がもてないというのが部門の要求だそうです。その部門の話を聞きますと、当該ベンダー役員が、責任がもてないという内容の書名入り文書を出しています。当該部門としては、現在の業務処理方法そのものに何の支障もなく、ただHDの使用率が高くレスポンスが遅いだけだということです。ITベンダーの役員氏に会って話を聞きますと、「販売する時のシステム寿命に関する約束は、書類もなく、担当者も替わってしまっており、どういうことだったか判らない。ただ、MS社がサポートしてくれないので、ハードの入手が不可能だ。」の一点張りです。筆者は、「公式ルートで古いWin対応の新PCを入手するから、それで対応できないか?」と聞きましたら、できないとの回答です。「MS社のサポート切れのせいにして、新システムを売り込もうとするのは、余りに節操がないのではないか?わかったので、新システムを導入することにする、但し、お宅は使わない。」と言いましたら、次の土日でHDの入れ替えをしてくれました。MS社もとんでもないところで、汚名を着せられているものです。

マスコミ諸氏にお願いです。Windowsをオープン系と言うのは止めて頂けませんか?ハードでは確かにオープンかもしれませんが、OSに関してはオープンではないのですから。そう言い出したら、世界レベルでみれば、汎用機のオープン系はIBMということになります。堂々とWindowsと言えば良いでしょう。その方がMS社の為にもなります。その点で日経BPもニッキンも正確に使い分けています。ジャーゴンで勝手にイメージを作って、なし崩しに定義を変えて澄まし顔している大半のマスコミの罪は重いし、それを悪用するベンダーがいることを知らないユーザー企業があるのです。