銀行次期システム(スルガ銀IBMのNEFSSを採用)


10月の連休を使って千葉興銀がNTTデータでの新システム移行を完了させました。予定を半年遅らせましたが、無事に稼動したことは何よりです。ネットバンキングや24時間365日対応、新商品対応の容易化などを実現しながら、年間IT費用を3億円ほど下げられるそうです。

日経新聞10月19日号に、スルガ銀が次期システム「新経営システム」にIBMのNEFSSを採用決定したという記事がありました。稼動予定は2007年、費用は予定額の半分100億円だそうです。基幹系、勘定系、業務系などといった表現でなく、情報系と一体化させて新経営システムと称するところに、スルガのIT戦略ビジョンが見えるようです。

この記事の出所がどこかは知りませんが、少なくとも公開発表ではないようです。内容もIBMにとって有り難い記事かどうか疑問です。稼動時期が2007年10月以降ですから、開発に3年かかるというのは長すぎ、ソリューション開発が終わってないことを意味しています。それでは他ベンダーと同じで、未完成品だということです。費用が100億円というのも、三次オンの導入費用(ハード・ソフト購入費と開発費)よりも高いという印象を受けます。5年とか6年のトータル・コストだというなら随分と安いと言えますが、記事からは明確でありません。スルガ銀は、IBMの地銀ユーザーの中で数少ない次期シス未定地銀でした。それが決定するのは嬉しい反面、NEFSSという戦略商品の第一号ユーザーとしては、影響力のあるメガバンクか他社ユーザーの上位地銀が欲しかったことでしょう。カードを切るタイミングとしてはベストとは言えません。更に、IBMは地銀クラス以上の銀行に全面オープン化を奨める計画はないでしょう。事実、スルガで使用するのはオープンメインフレームのzシリーズです。その意味でも、NECを追撃などと言われたくない筈です。

19日付記事ですから、取材は18日以前です。IBMがマスコミに接触する時には、必ず広報部門がアレンジして担当部門が取材に応じます。開示内容は、法務や社内倫理規定の許容範囲に限られます。同社は20日付けサイトでスルガ銀からの受注事実を公表しました。日経記事と比較すると面白いかもしれません。できるだけ正確な情報を開示しようとしたのでしょう。

NEFSSのアーキテクチャは、部品化した金融商品を顧客毎にアレンジして、マルチチャネル経由でデリバリーするものです。その際に値付けも顧客毎にできることになっています。論理的には理解できるし評価できるのですが、それを実装するのにトランザクション管理やファイル制御の仕組み、商品プログラム間の連動処理の技術的仕組みがどうなっているのか公開されていません。する筈もないのですが。IBMが言うようにWebSphereとDB2だけで実装できるとは思えません。

また、事務処理は全て商品別なのか、商品間でアグリゲートするのか、バック事務だけは横串で共通化するのかなども筆者は知りません。記事にあるように、顧客単位に部品化された商品群をオープン系基盤上で自在に組み合わせるから安くなるという理屈は鵜呑みにできません。

過去三世代の銀行システムでは、まず上位都銀がIBMと開発に着手し、IBMの開発部隊が他行に手が廻らない間に、他のベンダーが次の規模を持つ銀行グループを確保します。先発グループに目処をつけたIBMが、他ベンダーの手が塞がっている間に、その次のグループを獲得するというパターンでした。先進グループから最終グループまで10年以上かかりますので、商品ライフとしては、ベンダーに都合の良い構造でした。それが昨今では、順番秩序がなくなり、制度案件など不可避な案件ですと、メガから信組まで一斉に動きます。とても一社が単独で市場ドミナントとなれる時代ではありません。それも当該案件の商品ライフは2、3年です。採算をとるのも極めて難しくなりました。ベンダーのアプリ・パッケージ戦略は根本から見直す必要があります。このことは10年前から判っていることです。それにも関わらず、百億円単位の投資をして業務パッケージを開発し、後続グループにカストマイゼーション導入するという旧式製品戦略を取るベンダーが後を絶ちません。

ある程度の規模となったITベンダーにとって、金融関連市場は大変魅力的なようです。経営トップから、「国内IT市場の10%を占め、一件当たりの取引額が巨大で、企業イメージの上がる銀行勘定系に参入する。」という指示を受けたベンダー企画部門からよく相談を受けます。私は「儲からないし、手間かかるし、危ないからおやめなさい。」と回答しますが、先方は困った顔をしています。トップを説得する自信がないのでしょう。そこで私は、「それでは参入するとして、銀行関連各業務に精通したエンジニアが100名、銀行オンラインの制御システムに精通した技術者が20名、日本トップクラスのPM3名とそれを補佐できるPM6名以上。銀行組織・文化・業務に精通した営業を5名、銀行頭取と銀行経営について5時間以上連続して議論できる経営者を用意して下さい。そうすれば年に30億円位の売上はできる可能性があります。」企画マンが特に喜ぶのが最後の条件です。社長をあきらめさせる決定打になるようです。

次期システム用ソリューションは、超長期な寿命が大前提です。家屋と同じです。日本の住宅は5年もすると資産価値がなくなってしまいますが、欧米のように古いほど価値のあがる仕組みが必要です。その基盤に何を使うかは寿命を大きく左右します。また、開発ベンダーの経営安定性や当該事業に対する継続性もユーザー銀行にとっては、生死を左右するほど重要な要素です。このあたりを理解している銀行経営者が少ないことは事実です。筆者はよく地銀頭取に質問します。「御行のベンダーが破綻するか、金融から撤退した時の対策は考えていますか?」しばし絶句の後で「あの会社が消えるより、ウチが消える方が先でしょう。」という回答を聞いた時は「こういう銀行は客にするものではないな。」というのが筆者の感想です。絶対に良いシステムは作れませんし、ベンダーも利益を確保できませんから。