証券仲介業務(トヨタが参入)



日経新聞16年8月27日号の記事です。名古屋トヨペットが投信や債券などをトヨタファイナンシャル証券に取り次ぐ業務を10月から開始するそうです。名古屋トヨペットは、70店舗全店での取り扱いを予定しており、既に10人の販売員が証券外務員資格を取得しているということです。

トヨタは、全国に約5千の系列販売店を持っていますが、その多くが証券仲介業務に積極的だそうです。

自動車販売店で投信などを買う人がいるのか?と思います。しかし、トヨタとしては、価格が400〜500万(標準装備)する新レクサスのユーザーをターゲットにするということです。また、レクサス・クラブによって、多くのユーザーが組織化されています。車好きの人は、単にクルマを買うだけでなく、しばしば保守や世間話にディーラー店舗を訪れるようです。クロスセリングに良い機会なのでしょう。

CRMというジャーゴンが出てくる大分前に、大阪のトヨタ系大手ディーラーの営業支援システムが脚光を浴びたことがあります。

車検情報などによって、他社ユーザーの住所・氏名・保有車情報を取得します。当時は、20万台分の情報が2千万円前後で販売されるケースもありましたので、入手は簡単だったでしょう。外販活動をしながら、ターゲットとする顧客の家族構成や主たる利用者、家のデザイン、洗濯物などをチエックします。つまり、見込み客の嗜好を把握するのです。例えば、幼稚園の子供がいて、専ら奥さんが車を使っている家の場合は、子供を幼稚園に送り出して一安心している平日10時頃に訪問します。本格的なアプローチは、車検時期の3ヶ月前です。それまでに調べておいた奥さんの嗜好に沿ったデザインとカラーの車を勧めるのです。当然、現行車種の価格とその家の消費傾向を参考にした価格帯の車です。単純な飛び込みセールスに比べると10倍前後の成約率と聞いた時は、唖然とした記憶があります。

投信販売額における銀行窓版の比率が50%に迫っているそうです。一方で、手数料や信託報酬の高さを顧客に充分な説明なしに販売している銀行員の呟きも聞こえてきます。証券会社従業員は、一時期の15万人から半分になってしまいました。それでも証券会社は利益を上げています。特に、ネット専業は大幅増益です。証券会社にとってチャネル戦略は、大変な意味があるのを理解できます。大和、いちよし、新日本のようにラップ口座を開始することで富裕層取引を強化する動きも見えます。つまり、客層と商品によって、対面、代理店、ネットというチャネルミックス(或いは特化型)が当面の戦略となるでしょう。

証券会社の支店現地調査を何度か実施しました。朝7時から夜8時頃まで、10人位で動線分析や各種作業の時間分析、そしてほぼ全員からヒアリングを行います。ある大手証券会社のターミナル駅店舗で実施した時の話です。一階店舗には一日で30人位の来客しかありません。三分の一は、中に入ってからグルッと一巡りして出ていきます。三分の一は、窓口で取引していきます。残り三分の一は、株式新聞と競馬新聞持参で3時間以上はボード前のソファーに座っています。中には、カウンターに来て、顔なじみの女性販売員と大声で世間話をしています。この光景を見る都度、病院の待合室だと思ったのです。

一方、経費削減で7つある窓口に朱肉は一個しかありません。販売員は、必要な都度に朱肉を求めて、カウンター添いに動き回ります。支店長に、「余りに非論理的ではないか。たかが、100円程度の朱肉をケチッて、一秒2円の人件費を無駄にしている。一階ロビーもボードも廃止したらどうか。大切な客は三階辺りに専用の豪華フロアーでも作った方が良いでしょう。その家賃削減だけでも月に数百万になります。」と詰め寄ったものです。支店長の回答はどこでも共通でした。「朱肉は経費削減運動の象徴的なものであり、人件費については、動線があろうとなかろうと固定費だから変わりない。店の配置は同感ではある。しかし、これも会社としてのイメージなのだ。」

私には、口座が持っていても証券会社の支店は入り憎い雰囲気です。ロビーの雰囲気は、金持ち風か競馬狂風のおじさんに占拠されており、少額取引ではバカにされそうです。できれば、顔をあわせないで取引したい。それでいて支店長は、「都銀の支店が羨ましい。毎日2千人もの客が来てくれる。」と言います。「儲からない客ばかりですよ!」と口に出かかるのを抑えたものです。結局は、営業マンが、訪問や電話で販売するチャネルが主体です。一階ロビーは、消費者金融の屋上看板みたいな位置づけなのでしょう。経営トップにそう言いましたら、大変面白い比喩だと誉められただけなので、絶句したことも記憶しています。

証券ビジネスの製販分離というアンバンドリングは急速に進んでいます。特に販売に対する新規参入は大変な勢いです。それだけでは成立しえないコストモデルも代理販売という兼業化によって、限界コストを分散しています。保険でも同じような動きが強まっています。つまり、水平産業化の流れです。一方で、メガバンクや証券、保険のトップ企業は一段と垂直統合を進めようとしています。どちらが正しいとか言う話ではなく、要は企業目標と経営戦略の問題です。結果責任は自分で負えば良いだけのことですから、外野がとやくかく言っても無意味です。

心配なのは、金融業界の主要プレイヤーである、地銀、第二地銀、信金、信組に戦略的な動きがみられないことです。縮小均衡か、突然変異のハイテク・バンクでは生き残れるとは思えないのです。といって、コンサル風に、環境分析から企業目標、経営戦略…・・を検討しろ(ましてや、コンサルに不条理な料金を払ってなど)という気はありません。しばしば、銀行トップに言うのですが、「戦略は普段から考えているのでしょう?お宅の役員も皆さんそうでしょう。なら、2泊3日で温泉いきましょう。そこで、徹夜してでも議論すれば見えるし、決まりますよ。」それでも見えないし、決まらない金融機関は、運を天に任すしかありません。

IT業界では、オープン系(?)という共通基盤を活かして、パッケージ製品同士の提携が進んでいます。つまり売れ筋のよい製品に、機能単独では良いものがあるが売れない…という製品機能を取り込むのです。いわゆる製品バンドリング(アプライアンス)です。通常、提携戦略と言うと、「契約して、記者会見して、新聞記事になって、ハイ目的完了」ということが大半です。提携する場合には、販売プロセスか製品にロックインしなければ、何の実効性もありません。それが、最近のソフト・パッケージでは、簡単に互いの製品機能を提供しあって成功しています。やがて、金融商品も同じ道を歩むでしょう。つまり、チャネル戦略だけでなく、商品設計や約款作成に提携を想定した仕組み・条項を組み込んでおく必要があるようです。