システム統合(みずほ銀行の店群移行開始)


みずほ銀行は、7月17、18、19日の三連休を使って旧富士銀行のオンラインから旧DKBオンラインへの移行を始めました。第一群として、東陽町・深川東・浅草橋・恵比寿・恵比寿ガーデンの5店舗を移行させました。今後は、8月9日、9月21日、10月18日、11月8日、22日、12月6日、20日の7回を実施する予定です。合計282店舗の大移行作業です。

日経新聞16年7月20日号夕刊では、「そろり着手」という見出しで、2年前のトラブルに触れながら、極めて困難な作業が進められるというトーンの記事を掲載していました。同日の日経BP社サイト「ITPro」では、「ついにこの日がやってきた」という見出しです。

昨年秋に、店群移行の方針を発表して以来、みずほ銀行は念入りなリハーサルを繰り返してきました。更に、本番移行でも、第一・第二回は数店舗を対象として、何らかのトラブルが発生しても関連部門総動員で対応できる態勢を用意しています。店群移行の手法は、大規模システムの移行において常道とされる方法ですので、決して臆病になっているというわけではありません。また、これまでにも多くの店舗統廃合を行なっていますので、移行に伴う手順や態勢には熟練しているはずです。銀行関連ITのベテランからすれば、今回の移行作業にリスクは殆ど見だせません。むしろ、関連する本部行員が、長期に渡って週末の移行作業に携りますので、その健康・体調が気になる程度のことです。

日経新聞と日経BPの見出しの違いは、こうした背景や銀行システムに関する記者の知識の違いから来ています。筆者も多くの銀行関係者やマスコミ関係者から、今度の移行は大丈夫ですか?という質問を受けましたが、「今度は、システムの構造的トラブルを起こしようがありませんよ。」という答をするしかありませんでした。質問者は怪訝な顔をしますが、説明するには前回のトラブルの原因と銀行オンラインの構造や運用方法を説明する必要がありますので、面倒になってしまいます。筆者の知る限り、こうした前提知識を持ったマスコミ記者は4名しかいません。以前は、多くの記者たちに理解してもらおうと説明に努めた時期もありましたが、大衆受けしそうな記事のストーリーを先に作って、それに必要な情報しか拾おうとしないので、啓蒙活動は止めました。むしろ特定のITベンダーや銀行に肩入れする記事を得意とする記者をウォッチする方が、記事の正確性に結びつくのではと思っています。

みずほ銀行は、紆余曲折を経てシステム統合を今年一杯で完了させます。その費用は、これまでの公表数字を足しますと4千億円になります。当初から今回の方法をとっていれば、1千億円程度で済んだかも知れません。統合により年間経費を1千億円削減できるそうですが、4年後には次期システムを稼動させておく必要があるでしょう。また、経営統合発表以降の5年間、新規サービスを殆ど開発できずにきました。来年からは、猛スピードで新施策を連発することでしょう。コーポレート銀行のシステム更改も望まれているので、IT部門にとっては前向きな仕事が山積みということになります。

東京三菱とUFJが経営統合することで、今後3年間は新サービス開発や営業活動の不整合が発生するだろうという観測があります。その間にみずほグループや三井住友が、新合併行の基盤を侵食できるということです。ITに精通した経営トップを揃える東京三菱がどのようなスキームを決めるのか楽しみです。当然、これまでのシステム統合方式の長短を考慮したスキームを考えることでしょう。マスコミ諸氏は、大手コンピュータ・メーカーの陣取り合戦の予想を楽しんでいますが、筆者はナショナルフラッグを掲げる銀行がどこになるかの岐路になると考えていますので、むしろ将来ビジョンとIT戦略の整合性に注視したいと思っています。東京三菱、UFJともに、大手銀行の中で最もITケイパビリティの高い銀行です。東京三菱の経営トップによるITガバナンスも問題ありません。

国内市場では、今後3年の間に郵政民営化や金融所得一体課税など経営に大きな影響を与える変化が目白押しです。地方銀行を始めとした地域金融機関としては、経営戦略の選択肢を整理して着実に変化を管理していく必要があります。その際のグループ戦略、提携戦略展開をサポートできるITケイパビリティを如何に確保するかが大命題でしょう。三大都市圏中心のメガバンクと地方を地盤とする地銀とでは自ずと戦略は異なります。メガバンクの再々編成に関連するニュースを楽しんでいる余裕はありません。