プライベートバンキング(世界ランキング)


日経金融16年6月4日号にPB預かり資産ランクが紹介されていました。英国のスコーピオ・パートナーシップという調査会社が調べた結果だそうです。調査対象は、100万ドル以上の投資資産保有者向けに資産運用業務を展開する世界120社ということです。

調査によると昨年末の預かり資産総額は4兆6千億ドルで、前年比14.4%増です。一位はUBSで約1兆ドル、二位はメリルで9千億ドル、三位はクレディ・スイスで4千億ドルです。その後はドイチェの2千億ドル弱以下、HSBC、シティ、JP、ドレスナー、モルスタ、ABN(約1千億ドル)という順位です。

PB関連資産の定義が明確ではありませんが、欧米金融機関は事業部制ないしは分社化をしていますので、恐らくPB担当部門の総預かり資産を集計しているのでしょう。それにしても大変な市場規模です。顧客要求は厳しいでしょうが、安定したビジネス基盤であることは確かです。年間で預かり資産1%の手数料を受け取れば、5兆円マーケットです。日本は世界GDPの約10%で、米国に次いで貧富格差の大きな国ですから、PB市場規模は世界の10%以上あることは確実です。つまり5千億円以上です。2万人以上の専門家が充分に食べられる規模ですし、急速に拡大するアジアPB市場への展開もできることになります。PBは典型的なグローカル(グローバルでかつローカル)ビジネスです。

日本では、MTFGがグループとしてPBを推進しており、ファミリーオフィス型の戦略を展開しています。三井住友グループは、企業オーナーやスポーツ・芸能関係に注力しているようです。1億円の預かり資産顧客を10万人もっているだけでも10兆円となります。最近では地方銀行も静かに強化しつつありますが、地域密着型とせざるをえず、顧客基盤が限定されるウラミがあります。

昨年末で廃刊になりましたが、PBサービス専門の季刊誌(非売品)がありました。大変豪華な製本で、今回ランク入りした欧米金融機関、贅沢ツァー会社、高級ホテル・チェーンなどが小さな広告を出していました。恐らく、この広告収入が収入源だったのでしょう。内容は、資産運用テクニックや欧米(特にスイス)PBの紹介です。興味深かったのが、スイスの小規模PBです。湖畔や山の中腹など風光明媚な場所に広い庭を持った邸宅風のオフィスです。オーク調に統一された壁やドアにアンティックなテーブル・椅子で、宿泊施設すらあります。つまり泊まり込みでPBバンカーと一緒に過ごしながら相談するのです。まさしく個人的信頼がベースなのでしょう。

チューリッヒのメインストリートに高級ブティックやデパートと並んでUBSやクレディのPB部門オフィスがあります。4、5階建てのクラシックな建物で、エントランスロビーはありません。周辺は頑丈な鉄製フェンスで囲われており、厳重な警備施設がありますが、人影は見えません。中に入ったことはありませんが、写真で見る限りでは、やはり宮殿風の内装です。リテールバンキングと違って、拠点の数に意味がないのでしょう。むしろブロードバンドを使ったハイテク武装を重視しているそうです。こんな古い建物に光通信を引くのは大変だろうとも思ったのですが、それは10年ほど前の制約で、今日では無線をうまく使っているそうです。

BB化と携帯電話(カメラ、テレビ、指紋認証、ICタグ、音声認識等との融合技術)によるモバイル・チャネルは、決済を中心としたリテール・サービスのみでなく、対面を原則とする相談ビジネスにも大きなチャネル戦略の転換を促すことでしょう。

インターネットの掲示板方式だと顧客からのインバウンドだけがチャネルキックの方法ですが、携帯をうまく使えばアウトバウンド・チャネル化が可能です。一段とワンツーワン(余り好きな言葉ではないのですが)化が可能です。すると一般的・定常的なコンテンツでは顧客満足は得られません。顧客が好きなタレントを選んで、そのタレントが商品説明をしたり、マスコミなどでも著名なエコノミストや投資アドバイザーが相談に応じてランク争いをするようなことになるでしょう。また、自然言語照会、バーチャル・エージェント、ルールベースなどのBI技術の活用も進むでしょう。DB技術も分散連携やマルチメディア対応のものが普及するでしょう。

金融のチャネル戦略立案担当者は、金融関連のコンテンツ専門知識、マーケティング、ITの三つの分野に精通する必要があります。そうした人材育成を内部で行うのか、流通業や広告業などで専門知識を身につけた人材をハンティングするのか、人材戦略が問われることにもなるでしょう。最大の懸念は、経営者がこうした時代の変化を先取り或いは追随できるか、新しい戦略を受け入れる組織文化があるかということになります。