証券仲介業務(地銀が積極姿勢)


日経新聞16年5月30日号の記事です。日経が地銀・第二地銀113行に行ったアンケートに対して107行の回答があり、うち25行が積極的に参入を検討中ということだそうです。また、77行が検討中であり、検討予定はないとするのは5行だけでした。


地銀にとっては、

@    品揃えの拡充

A    手数料収入

B    ペイオフ解禁後の顧客資金受け皿

が主たる目的ということです。

一部にワンストップ・チャネル化というメリットを狙う銀行もあるようです。東京など大都会と違って地方都市の地銀店舗におけるワンストップ化は顧客メリットがあると考えられます。多業態が密集する大都市中心部では、一流機能を揃えたワンストップ化でなければ一流の顧客は見向きもしないでしょうが、交通利便に制約のある地方の場合は、渉外による訪問営業と合わせて、それなりの効果が期待できると思われます。

預貸率が50%台の昨今では、預金という仕入れ活動に付加価値は期待できません。さりとて他業態に無条件で顧客が流出してしまうことも将来基盤を失うことになります。預金というコストのかかる商品でなく、手数料収入を得ながら資金パイプを維持し続けることができれば、何ともありがたい話です。結果として、預貸率を数%でも上げられれば融資額増大に準じた資産構成改善ともなります。

手数料収入はどの位期待できるのでしょうか?まず対象は、個人ないしは地元中小・零細企業ということになるでしょう。法人・個人の約定件数における比率を半々として、個人取引もネットと対面が半々とすれば、全仲介取引の四分の一が対象となります。個人取引の大半がネット取引化されていますが、地銀がこの分野に直接入ることは考えられません。IT投資採算はとれません。先行するネット専業証券に勝てるとは思えないからです。要は、これまで証券会社がカバーできなかった地域・客層で新たに証券取引を行なう新規開拓市場がどのくらいになるかということになります。

東証の出来高が15億株として、その25%の層を対象と考えれば、地銀が確保できるマーケットは、良くても当面5%程度でしょう。売り買いの往復がありますから、仮に1.5億株の注文媒介ができれば、単純平均株価400円として仲介手数料率が0.5%、それを会員証券と地銀が折半するとして1日当り1.5億円が地銀全体の新規収入となります。年間商い日数を200日とすれば300億円で、100行が参入するとしたら、1行当り・・・・・という計算をすることになります。単純平均してしまうと大したビジネスに見えませんが、取扱い上位と下位との格差を考えれば、上位では30億円前後を期待できるとも思えます。それを、さしたる追加費用なしに既存チャネルを利用できるとすれば、ウマミのある新規事業です。

ITベンダーから、この分野のITソリューションを開発したいが、果たしてポテンシャルはあるだろうか?などという質問を受けます。私は「お止めなさい。」と言います。株式売買の仲介そのものは単純なメッセージ交換です。提携証券会社が提供するWebベースの注文端末があれば済んでしまうでしょう。要は顧客情報と顧客別取引情報を誰がどこに保有するかということになります。複数の証券会社と提携する銀行にとっては、ハブ機能が必要になるかもしれません。顧客に対しては、アグリゲーション・サービスと面談(渉外担当者にはIT武装が必要ですが)やネットによる資産運用相談機能も必要になるでしょう。とは言え、これらを新規に個別開発する地銀があるとは思えません。恐らく証券会社のASPや既存ソフトをWebサービス化したものが使われるでしょう。今回は、数年前の投信窓販のように、拙劣なIT対応を避ける銀行が増えると考えるのが妥当でしょう。