日経金融 13/11/30

投信販売の共同システム(米国)とオープン・フィナンシャル・プロバイダー

日経金融(平成13年11月30日号)によれば、米国大手投信4社が自社外の証券営業に対して、投信販売の共同システム“Advisorcentral.Com”を立ち上げたとのこと。日本でも近い将来、このような販売チャネルが普及するものと思います。

自社投信の販売が中心だった我が国では、大手の証券会社がグループ内に投信会社を設立して、投信販売子会社や証券本体を通じて投資家に販売してきたという経緯があります。他社経由で販売するとしても友好的或いは系列化の証券会社であり、製販一体のビジネス構造が長く続いてきました。近年、投信の窓販が解禁されましたが、それでも販売者である銀行は、特定の投信しか販売していません。つまり、商品の一次的選択権は販売者にあり、投資家は欲しい商品を購入するチャネルを制約されます。製販側の論理で販売ルートが構築されてきたのです。機能差の無い商品を同じ価格で、それも免許事業者(国の保証を意味していました)経由で購入する時代であれば、何の問題もなかったと言えます。しかしグローバル化が進み、銀証保の垣根が無くなる時代では、機能も価格も極めて多様化します。商品に合わせてチャネルを選択するというのは、顧客利便とは程遠い状態です。

米国では、金融商品の販売資格を持った独立FPが顧客側の立場で商品を推奨し、代理販売することが多いのですが、日本では個人の代理店が実質的に解禁されていません。顧客は、どうしても縦割り構造の金融系列と数多くの取引関係を作らなくてはなりません。

顧客の金融関連取引のプロセスをCRM的に単純化しますと、

1. ニーズ・ウオンツの認識

2.関連情報収集

3. 商品比較評価

4. 決定・注文・契約

5. 取引処理

6. 評価  に分別できます。

1と2は、各種メデイア経由或いは各金融機関からのアプローチが中心ですが、今後はネット経由での中立的な金融情報提供サービスが増えるでしょう。2と3を合わせてFPとかFAと言われる専門家がアドバイスを行います。特定金融機関に所属し、その商品販売を目的とするFPはメイン・プレーヤーにはなりえないでしょう。特定商品に拘束されないFPが主役となるでしょう。もっとも彼らの収益源をどのように確保するかという大きな課題はありますが。グローバル化や証券化が更に進んで、より高度な情報と専門知識が必要になれば、充分に成立するビジネスです。4の契約手続きは、商品提供会社かその販売代理者が行います。FPでも構いません。旅行代理店のような立場です。5は、商品提供会社か業務受託者が行います。これからは、業務知識とIT双方に精通した専門家集団による業務処理アウトソーサーが活躍するでしょう。日本には、まだ存在していません。業務を知らないITベンダーがASPと称して参入しても業務レベルが低すぎるのです。やがて大手金融機関が業務処理部門とIT部門を独立させて参入することでしょう。これまでは、IT部門だけを独立させていたのでコスト効率が悪く、一般ITサービス会社とのコスト競争に太刀打ちできなかったのです。6は、また、FPの機能になるでしょう。申し上げたいことは、これまでの商品別の金融ビジネスが、顧客視点でのプロセス別に再編成される可能性が大きいということです。

その場合、リテールビジネスで最も有利な立場にあるのが地銀や郵便貯金でしょう。顧客基盤の集積度と顧客接点の充実度が抜群だからです。仮に地銀が、必要な全ての金融商品の販売代理権を持ち、地域でトップ水準の人材にIT武装させてFPと販売業務に特化すれば、オープン・フイナンシャル・プロバイダーとして、金融取引プロセスの付加価値の高い部分を寡占化できるでしょう。リスクの大きい商品開発やコストのかかる業務処理は外部の専門会社の中から選べば良いのです。オープン・フイナンシャル・プロバイダー(OFP)が出現した場合、商品提供会社は、当記事のように販売代理者に共同システムを提供せざるをえなくなります。一方、OFPはCRM(顧客DBとチャネル)を充実させるとともに、商品情報の入手、アドバイス、契約手続きの連動処理を自社に都合良く設計する必要があるでしょう。処理を外部システムに依存するのは良いのですが、顧客情報を奪われてはOFPとして成立しません。経営・営業戦略、業務設計、IT化を全て連動させて考える必要があります。