オープン系基幹システム(ユニシスと百五銀行)


昨年の12月にユニシスが百五銀行の次期システムをウィンドウズで構築すると発表し、当コラムでもコメントいたしました。その後頻繁に、金融関連ITに携る人達との話題になります。楽観的に見る人は少なく、次のような意見が多いと言えます。

       百五銀行の現行システムは93年に稼動しており、ハードの保守部品がなくなるのだろう。単純な入れ替えを提案したら、他ベンダーの共同に負ける可能性が高いと判断して、思い切った提案をする必要がベンダーにあったのではないか。でなくては、この時期に大きなリスクを賭けてまで次期システムを決める理由が判らない。

       今からウィンで開発を始め、2007年に稼動させ、ライフを10年とすれば、2017年までウィンドウズが基盤となるが、その頃にウィンが主流とも思えない。ミドルウェアを全て新規開発する必要があるが、それも無駄になってしまう。その費用とリスクは誰が負担するのか?

金融経済新聞3月22日号に、ユニシスへの取材記事が掲載されていました。具体的な背景をユニシスが説明しているので、当プロジェクトの理解に役立ちます。簡単に骨子を照会します。

◇DCS(データセンターサーバー)を採用の予定で、現在パフォーマンスやセキュリティなどを検証中。三井住友のBANCSシステムに使って、3年間無停止の実績がある。

◇アプリはユニシスと百五銀行、基盤はユニシスとマイクロソフトで共同開発する。

◇百五銀行、紀陽銀行との共同で開発した基幹系システム「トライトン」のユーザー7行とでコンソーシアムを作っており、そこでグランドデザインをまとめてきた。これをモデルとして、個別行のニーズを反映しながら、共同化・アウトソーシングを可能とする基盤とする。

◇自前で構築できるような常識化した部分はアウトソーシングし、高度な金融業務知識を必要とする部分は自行開発という切り分けが必要。

◇百五銀行とのプロジェクトでは、トライトンの機能・技術をDCSに刷り込むことで、汎用機とオープン系を融合させることに目的がある。

◇今4月に要件定義を開始、年末に完了の予定。2006年には、コンソーシアム参加行や他行を対象とした共同アウトソーシング会社を設立する。

以上の会見内容に関しては、幾つかの疑問・懸念があるものの今回は触れません。ITベンダーにとってのオープン化と共同化・アウトソーシング化の意味を一般論として少し述べてみます。

第一に、顧客の強いITコスト圧縮要求が契機であるが、結果として減収減益となる。そのリカバリー策があるのかが課題となります。

ユニシスの連結ベース売上額は、3088億円(金融の比率は31.4%)で、ここ5年横ばいです。連結社員数は8587人ですから、一人当り売上げは約3600万円です。27%のハード売上を含んでいる割合には少ない金額です。結果として、営業利益率は2.9%と極めて低い利益率です。(といっても国産系他社も同様ですが。)米国企業としては、この程度の利益率であれば、ビジネスを止めて、株などへの投資した方が手間もリスクも少ないと考えるでしょう。金融向け売上げが約970億円ですが、昔のように大きなユーザーはありません。つまり年で100億円単位のビジネスはないでしょう。中小ビジネスを積み上げて970億円を毎年売り上げるのは大変なことです。アニュイティ・ビジネスと言われるアウトソーシング化は売上げの固定化にはなります。但し、売上げ減以上のコスト減を実現できない場合は、利益も減らします。それも極めて長期間に渡って。年金が長期ローンになってしまうのです。 

第二に、他社との競争戦略があります。安くしてIT要員を減らしたいという顧客ニーズ(単なる縮小戦略で発展性は皆無ですが)に対応しなければ、他社に負ける可能性があります。自社が先行してサービス水準でも優位に立てば、他社顧客獲得によって売上増を期待できるかもしれません。そこで、オープン系等のミドルソフトに先行投資することになります。ユニシスは、NECが八千代で投資した程(200億円以上と推定されています)にはならないと計算しているようですが、それにしても、S−BITS参加7行だけでは、採算が取れないでしょう。万一、その中から一行でも抜ければ、更に苦しいことになります。他ベンダー・ユーザー行へのアプローチも行っているようですが、具体的検討に入っている銀行はないように聞いています。金融法人への営業活動は複雑なのです。単品に賭けての競争戦略は、単純に過ぎるようです。同社は、証券システムやリスク管理などのニッチで、金融関連事業を維持してきましたが、その足を引っ張らなければと思います。

第三に、要員の問題です。IBMは実績ある製品をウリにして、アプリを顧客に実装させてきました。結果的に顧客銀行のITケイパビリティが高くなりました。国産ベンダーは、顧客サービスと称して、顧客の要望を全面的に受け入れました。顧客のITケイパビリティは上がりません。ユニシスは、昔から基幹ソフトに弱いベンダーでした。ユーザーとベンダー技術者が一体となって、ミドルウェアもアプリも作り込みました。両者ともに極めて実装力を持つことになりました。顧客銀行とベンダーのケイパビリティは、正の相関にあります。ユニシス、特に旧ユニバック系SEは大変優秀(大分、独立してしまったようですが。)ですが、7行一斉の開発には量・質が不足します。共同化すれば、担当SEの人数が個別対応ケースの総和より少なくて済む筈です。そして、技術者の配置転換や削減を促進できることになります。

長期的に見た場合のベンダーとしてのコンピテンシーを何に求めるのか?その前提としての注力事業分野は何で、そのCSFは何なのかを見定める必要があります。流行で顧客経営者の受けが良いという理由から、オープン系・共同化・アウトソーシングを推進すると、結局は、自らの存立基盤を失うことになります。ITビジネスは、狩猟型では難しく、長期的視点が必要です。アウトソーシングは養殖型とも考えられますが、私には、農耕型の方が日本企業とのビジネスには向いているように思えます。









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